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三洋電機が生き残るための三つの方法(日経BP)

posted at 23:34:15 on 2006-12-13 kaz | Category: オンモード

日経BP社の技術経営メールにて私のコラム 「三洋電機が生き残るための三つの方法」 が本日配信された。

このコラムは、日経ベンチャー経営者倶楽部のHPにも「技術経営戦略考 「勝手に考える三洋電機再生計画」として掲載されている。

以下、再掲する。

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■■三洋電機が生き残るための三つの方法■■
 このところ三洋電機に関する報道が新聞を賑わしている。12月7日、NTTドコモが
三菱電機製の携帯電話端末に使う電池パックを回収すると発表したが、不具合の原因
は三洋電機の子会社が供給したリチウムイオン電池であったという。

 これに先立つ2カ月の間にも、目に留まった新聞記事だけで次のようなものが
あった。

11/25・三洋電機 2200人削減 今期最終赤字500億円
11/23 ・三洋、主力の携帯売却へ 中計、1年で見直し
10/26 ・三洋 冷蔵庫の生産委託 ハイアールにタイ工場譲渡
10/21 ・三洋 収益回復なお不透明 携帯デジカメ競争激化
10/21 ・三洋 国内営業を分社 子会社と統合 コスト圧縮

 どうして三洋電機だけがここまでダメになったのだろうか?

 作れば売れた右肩上がりの時代に、他の家電メーカーと同等の性能だが、より売価
の安いものを作るOEM企業として三洋電機は成功した。もっと言えば「松下(電器
産業)はこうしている」という言い方が社内で説得力を持つ体質があった。こうした
成功体験から時代が変わっても抜けきれなかった。

 今や、安いだけの製品は中国を筆頭に海外から怒涛のように入ってくる。電機製品
のコモディティー化が進行している中で、以前のビジネスモデルに固執せざるを得な
かったところに問題の根がある。90年代後半に全世界のシェアの3分の2を占めた
デジタルカメラ事業もOEMを中心とする戦略を変えないままだったので、台湾などの
OEM企業にコスト競争で破れてしまった。

 携帯電話事業は、三洋が大きなパイプを持っていた米国携帯電話会社のスプリント
がネクステルと合併しスプリント・ネクステルとなったことが災いした。モトローラ
とのパイプがあるネクステル側が主導権を握ってしまったのだ。これは青天の霹靂
という側面があったが、事業が好調のときに次の事業を、それも他社の真似ではなく
オリジナルな事業を育てるという企業文化が無かったことが大きい。

 技術力の問題ではない。技術力は充分だったと思う。ブランドを大切に育てること
をせず、中核となる製品や事業のアイデアやコンセプトを創造できなかったことが
大きい。創業家をはじめとする会社トップとその周辺が絶対的な権力を持ち、周りを
イエスマンで固めてしまう構造が改められない限り、新事業に繋がるアイデアや
コンセプトが自由に生まれ討議される風土は育たない。だが、今や、尖がった企業
しか生きていけない世の中なのである。

 現在、三洋電機は外資系の銀行等の支援を受けて再建の途上にある。携帯電話事業
を売却するかどうか揺れているようだが、これまでの総合メーカーの看板は下ろさ
ざるを得ないだろう。といって、不採算部門を整理していくリストラ手法、外科的な
治療だけでは限界がある。次代を担う中核部門を育てないまま事業を縮小していけば、
存続すら危うくなりかねない。

 事業を絞り込む際には、三洋電機が持つ優れた蓄積、尖がった技術を活かすべきだ。
有力候補の一つは、電池事業である。「三洋電機ではなく三洋電池」というのは冗談
ではなく、可能性のある生き残り策と言える。20年以上前に、今はタイコ社に買収
されたレイケム社のポリスイッチを用いた過剰電流遮断回路を全金属リチウム電池
に内蔵するなど、三洋電機は真面目な工夫を重ねてきた。こうした技術面の蓄積は、
リチウムイオン電池にも引き継がれている。今回の電池回収問題は痛手だが、技術
まで無くなったわけではない。

 ただし、電池など優れた技術を持つ事業に絞り込んだだけではダメだ。その技術を
事業価値の創造に結び付けないといけない。尖がった製品、独自の事業につながる
アイデアやコンセプトを生み出すためには、ものが言える自由な風土を時間をかけて
育てるしかない。

 どうすればこの風土を育て定着することができるのだろうか。三洋電機復活のために
三つの提言を述べてみたい。リストラや事業再編といった短期的、外科的な提言ではない。
次代に向けて、新しい事業コンセプト、製品やサービスコンセプトを自ら生み出し、
OEM中心で他社並みを至上命題としてブランド構築を二の次としてきた昔の成功
パターンから抜け出す内科的な改革の提言である。

1.アイデアを生み出しコンセプトを自ら創造する。
2.このコンセプトを基に具体的な事業戦略を立てる。
3.戦略を実行するための自立的かつ自律的な仕組みを持った実務部隊を作る。

 特に、アイデアとコンセプト作りが要となる。上からの強制ではなく、一番仕事に
精通して業務を回している最前線のミドル層から自発的に要員を確保する。矛盾して
いるようだが、トップダウンで要員を指名したり、自ら参画しようという者を掘り起
こしていく必要がある。そうして、自発的に自ら事業アイデアを出し、コンセプトを
作り上げる風土の礎とするのだ。

 アイデア出しにあたっては、経験者のファシリテーションの下で思考を自由に発散
させ、これらを基にコンセプトを作り上げていく。市場データやマーケティングリサ
ーチに頼らず、いままでの経験からにじみ出てくるアイデアを拾い上げる方向で時間
をかけて討議することが肝要である。

 アイデアが形だけにとどまったり、花火で終わるような事態は絶対に避けなければ
ならない。社内の反対勢力を排除し、自らが今後の三洋電機を築いていくという成功
体験を植えつけるのである。これには、トップの強力なイニシアティブが必要となる。
生半可な覚悟では、社内の反対勢力を勢いづかせてしまうし、失敗体験を植えつける
ことになる。

 次に事業戦略作りだが、アイデア出しの核となった者を中心に残し、広く社内から
メンバーを募るとよい。ここで必要となるのは、部署ごとの利害を超えた全体最適の
戦略を築き上げる具体的な仕組みだ。これ抜きでは絵に描いた餅になってしまう。

 3番目の実務部隊をおくにあたっては、過去に成功した自律かつ自立的に動ける
仕組みを取り入れる方法がよいかも知れない。例えば、京セラのアメーバ経営などである。

 三つの施策を進める際に、一番肝心なのは社員に自ら参画し成功したという実体験
を持たせることである。これがじわじわと内科的に組織の風土、モチベーションを
改善していく。下を向いていた社員が顔を上げ、胸を張って笑顔で歩く気風を生み出
していく。

 人間の場合、病気の治療には、病気になるに要した時間の倍以上の時間がかかると
言われている。企業の場合も、外科的治療と併せて息の長い内科的手法を用いることが、
長い目で見ると一番近道なのである。

生島 大嗣 (いくしま かずし)
アイキットソリューションズ代表
http://www.i-kit.jp/

大手電機メーカーで映像機器などの研究開発、情報システムに関する企画や
開発に取り組み、様々な経験を積んだ後、独立。
既存企業、ベンチャーのビジネスモデルと技術の評価、技術戦略と経営に関する
コンサルティング、講演などに携わる。
現在は、イノベーション戦略プロデューサーとして活動中。

執筆しているコラムのバックナンバー
http://www.i-kit.jp/biz/category/blog/9
生島ブログ「日々雑感」
http://www.i-kit.jp/biz/category/blog/7
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アイキット ソリューションズ
生島大嗣

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Comments

きよ店長 wrote:

毎回毎回、無料で、こんなに濃い内容を出していいのかと思う程面白く、深い内容ですね、、、。

最近僕が思うのは、
どんな大きな企業であれ、
失敗の責任は、たった一人、
最高経営責任者(社長)にあると思っています。

マクドナルドの新しい社長や
日本電産の社長や
ワタミの社長、、、等々、

味、サービス、クリンネス
経費節減
計画性その実行力

のように、どこかに柱を持って
それを
「俺は腹をくくった。明日死んでもいいくらい
 君たちと同じ船に乗って死ぬ気で漕ぐ
 」

が実際にできる人かどうかなんだとおもいます。
抵抗勢力も人間です。

社長がココまで腹をくくってるなら
社長が100%といわず、
200%の時間と労力を情熱を使うなら
俺も社長の半分ぐらい、100ぐらいは協力しよう。
周りがドンドン協力してきてる、、、
100ぐらいせんと、俺が干される、、、。

そうなるかどうかだと思います。
でもその上で、

>1.アイデアを生み出しコンセプトを自ら創造する。
>2.このコンセプトを基に具体的な事業戦略を立てる。
>3.戦略を実行するための自立的かつ自律的な仕組みを持った実務部隊を作る。

やはり、このような、

治療のポイントは抑えないと、

「末期ガンの人に中国茶を今から毎日飲んで、、。」

みたいなことになりかねないと思います。
僕は、生島さんの方法は、絶対に

あってると思います。

下手な経営者のプロが、

引き抜かれてきたより、絶対、

効率の良い、正攻法だとおもいます。
まずはこの内容が、

次期、井植一族以外の社長の

眼にとまることをいのります、、、。

2006-12-14 12:57:05

生島 大嗣 wrote:

きよ店長さん

お褒め頂きありがとうございます。

> 失敗の責任は、たった一人、
> 最高経営責任者(社長)にあると思っています。
>
確かに最終責任はその通りだと思います。
ただ、組織としてうまく機能しなかったのは、トップを含め各部門、各人にも原因と責任はあるでしょう。

数年前にリーダーシップ論が言われましたが、最近の米国のトレンドはフォロワーシップ論です。トレンドを追うわけではありませんが、その面も否めません。要はバランスですね。
友人のカメラマンが言っていましたけど、できる会社の社長さんは気遣いも大変なものだそうです。京セラの稲盛さんや和民の社長にもそれを感じたと言っていましたよ。

> 社長がココまで腹をくくってるなら
> 社長が100%といわず、
> 200%の時間と労力を情熱を使うなら
> 俺も社長の半分ぐらい、100ぐらいは協力しよう。
> 周りがドンドン協力してきてる、、、
> 100ぐらいせんと、俺が干される、、、。

トップと下のものがどのように一体化して、当事者意識で問題を共有できるかですね。

> まずはこの内容が、
>
> 次期、井植一族以外の社長の
>
> 眼にとまることをいのります、、、。
>
実際にはそんなことはないでしょうが、何か反応があると面白いですね。

記事を読んだ三洋の社員から、「複雑です」との意見を貰いましたけど。

2006-12-14 23:26:29

現役三洋社員 wrote:

現三洋社員です。
楽しくコメントを拝見しました。
貴殿のおっしゃる通りだと思います、が、それ以前に従業員のモチベーションに問題があると思います。
給与カット、派遣社員削減、リーダーシップのなさなど。
モチベーションが下がる要因は社内にたくさんあるのに、逆にモチベーションが上がる要因が1つもありません。
貴殿ご指摘の3つの施策は、どれも的を得ており、いざ実行すれば効果がそれなりに得られると思います。
ただ、それを実行する”モチベーションの高い社員”が必要だと思います。

これからもちょくちょくお邪魔させて頂きます。
では

2007-02-04 14:21:15

生島大嗣 wrote:

現役三洋社員さん

コメントありがとうございます。
仰るようにモチベーションの問題は大きいと思います。組織を構成する人それぞれに価値観も違い、極論すれば仕事で動く人、お金で動く人など様々です。

三洋電機は、社内の雰囲気はフレンドリーな会社だと思います。これがよく働けば自由闊達、悪く働けば甘い組織になると思います。全社的に見ると、現在は残念ながら悪い方に流れていると言わざるを得ないですね。

ですから、異なる価値観の社員の核となる要素として3つの提案をしたのです。この核が求心力になりモチベーションが上がればと願っています。

嬉しいことに、今あるプロジェクトが始まっていると聞いています。それもトップダウンではなく、現場から自発的に動いているようです。とあるベンチャー企業が核となり触発しているようです。

三洋電機を退社して6年経ちますが、不思議なことにこの会社が在籍時より好きになっています。よいところもたくさんあります。

今回の記事は、ちょっと辛口の応援という意味を込めて書きました。

今後とも、よろしくお願いします。

2007-02-04 17:18:46

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