ソニーは本当にダメなのか?(日経BP)
posted at 18:06:13 on 2006-11-01 kaz | Category: オンモード
日経BP社の技術経営メールにて私のコラム 「ソニーは本当にダメなのか?」 が本日配信された。
このコラムは、日経ベンチャー経営者倶楽部メールでも取り上げられており、日経ベンチャーのHPにも掲載されている。
面白いことに、今朝の日経BP社のトップページの巻頭大見出しにこのコラムが取り上げられていた。(この見出しは既に入れ替わっている)
以下、再掲する。
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■■ソニーは本当にダメなのか?■■
イノベーションを求める声が高まっている中、日本の代表的なイノベーターであった
ソニーの低空飛行が続いている。経営陣を変え、なんとか復調してきたところに、
電池トラブルが発生、パソコン・メーカーがソニーを訴えるという報道もされている。
10月24日にソニーは、原因を説明する会見を開き、ノート・パソコン用のリチウム
イオン電池セルを使用した電池パックを交換するプログラムを全世界で始めるとした。
一方で、これまでソニーを利益面で支えてきたゲーム事業が不調と言われている。
これは、製品の世代交代と携帯型の販売不振が重なったためだが、とにかく今の
ソニーにいい点がないかのようだ。
マスメディアは誉めるときは一斉に誉め、けなすときは一斉にけなす。今はソニーを
叩く時期なのだろう。そこで、あえてソニーらしい点はないかと探してみた。
まだビジネスとして成功していないようだが、「ロケーションフリー」はソニー
らしい製品ではないだろうか。ロケーションフリーはソニーの登録商標になって
いるが、放送コンテンツをインターネット経由で転送し、視聴する仕組みのことで
ある。ソニーは6年前の2000年に、無線LANを用いたワイヤレステレビ「エアボード」
を発売した。その後これを進化させ、家庭内に設置したベースサーバーに受信・蓄積
した放送コンテンツを外出先で視聴できるロケーションフリー製品を2004年に発表し、
その後も機能を強化して製品群を作り上げている。
最近のようにディジタル技術が進みインターネットが普及すると、
様々なコンテンツの作成と配信が多様な手段で行われるようになってくる。
このため、以前は棲み分けができていた放送と通信の垣根が消えつつある。
これに伴い、いろいろなビジネスチャンスが生まれ、軋轢も生じている。
ソニーはこの変化をチャンスととらえ、ロケーションフリー製品を生み出した。
少し前、竹中大臣が主宰していた通信・放送の在り方に関する懇談会は、
テレビ番組のインターネット配信に関して出演者の事前許諾を不要とする法改正を
提案した。しかし、文化庁の審議会はこの措置を、放送と同じ時間帯にインターネットで
流す番組に限定する方針を明らかにしている。すべての番組に適用されるように
なるまでには、まだまだ時間がかかりそうだ。
ロケーションフリーは、テレビのインターネット放送がなかなか進展しないことを
逆手に取ったビジネスと言える。転送しているだけだが、利用者にとっては
「見たいテレビ番組を見たい時に見たい場所で見られる」ことになるからだ。
ソニーはこれらの技術を応用した様々な機器を継続して生み出している。
この分野では他社の後追いではない。自社のHDD内蔵DVDレコーダーと
プレイステーションポータブル、ロケーションフリー用ベースサーバーと
ソニーエリクソンの携帯電話などの組み合わせでも、ロケーションフリー
機能を実現している。さらに他社に対して技術供与も開始している。
加賀電子はこれを受けて、アップルのマッキントッシュでも視聴可能な
ソフトウェアを開発すると発表している。
ソニーの技術に頼らず、独自にソニーを追うベンチャー企業も登場している。
米国カリフォルニア州のベンチャー企業スリングメディアは7月から、テレビ番組を
インターネットに転送し視聴する専用機器を販売した。ノバックという日本の
ベンチャーは、スカイプを使用して出先でテレビを視聴するためのチューナーを
発売している。
ここで特記したいのは、ソニーのような大企業が何年も前からロケーション
フリーのような新しいアイデアに基づき、技術と製品群を着実に世に送り出しており、
それをベンチャーが後追いしている、という点だ。
マスメディアが指摘してきたように、ソニーの製品戦略は一時期、相当にブレ
ていた。MP3に対応しない音楽プレーヤを作りiPodに市場を席巻されてしまったり、
DVDレコーダーではコンセプトは似ているものの規格が微妙に違う製品を、
関連する事業部の数だけ登場させた。液晶などの薄型テレビへの急激な移行から
目をそらし、平面ブラウン管に固執していた時期もあった。
このような時期と比べると、電池やゲームの問題はあるものの、最近になって
製品戦略のブレは小さくなってきていると思う。マーケットをドライブする
大きな要素としての技術と、それを有効に使う戦略がブレなく機能し始めると、
ソニーというブランドが再び、力を発揮するのではないだろうか。
生島 大嗣 (いくしま かずし)
アイキットソリューションズ代表
http://www.i-kit.jp/
大手電機メーカーで映像機器などの研究開発、情報システムに関する企画や
開発に取り組み、様々な経験を積んだ後、独立。既存企業、ベンチャーのビジネスモデルと
技術の評価、技術戦略と経営に関するコンサルティング、
講演などに携わる。現在は、イノベーション戦略プロデューサーとして活動中。
執筆しているコラムのバックナンバー
http://www.i-kit.jp/biz/category/blog/9
生島ブログ「日々雑感」
http://www.i-kit.jp/biz/category/blog/7
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■■日経ベンチャー経営者倶楽部オンラインにて「技術経営戦略考」を開始■■
日経ベンチャー経営者倶楽部オンラインに「技術経営戦略考」というコーナーをもうけ、
技術経営メールに掲載したコラムのバックナンバーを掲載していきます。
http://nvc.nikkeibp.co.jp/report/gijyustu/
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(過去のコラム バックナンバーにも追加しました)
アイキット ソリューションズ
生島大嗣
このコラムは、日経ベンチャー経営者倶楽部メールでも取り上げられており、日経ベンチャーのHPにも掲載されている。
面白いことに、今朝の日経BP社のトップページの巻頭大見出しにこのコラムが取り上げられていた。(この見出しは既に入れ替わっている)
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以下、再掲する。
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■■ソニーは本当にダメなのか?■■
イノベーションを求める声が高まっている中、日本の代表的なイノベーターであった
ソニーの低空飛行が続いている。経営陣を変え、なんとか復調してきたところに、
電池トラブルが発生、パソコン・メーカーがソニーを訴えるという報道もされている。
10月24日にソニーは、原因を説明する会見を開き、ノート・パソコン用のリチウム
イオン電池セルを使用した電池パックを交換するプログラムを全世界で始めるとした。
一方で、これまでソニーを利益面で支えてきたゲーム事業が不調と言われている。
これは、製品の世代交代と携帯型の販売不振が重なったためだが、とにかく今の
ソニーにいい点がないかのようだ。
マスメディアは誉めるときは一斉に誉め、けなすときは一斉にけなす。今はソニーを
叩く時期なのだろう。そこで、あえてソニーらしい点はないかと探してみた。
まだビジネスとして成功していないようだが、「ロケーションフリー」はソニー
らしい製品ではないだろうか。ロケーションフリーはソニーの登録商標になって
いるが、放送コンテンツをインターネット経由で転送し、視聴する仕組みのことで
ある。ソニーは6年前の2000年に、無線LANを用いたワイヤレステレビ「エアボード」
を発売した。その後これを進化させ、家庭内に設置したベースサーバーに受信・蓄積
した放送コンテンツを外出先で視聴できるロケーションフリー製品を2004年に発表し、
その後も機能を強化して製品群を作り上げている。
最近のようにディジタル技術が進みインターネットが普及すると、
様々なコンテンツの作成と配信が多様な手段で行われるようになってくる。
このため、以前は棲み分けができていた放送と通信の垣根が消えつつある。
これに伴い、いろいろなビジネスチャンスが生まれ、軋轢も生じている。
ソニーはこの変化をチャンスととらえ、ロケーションフリー製品を生み出した。
少し前、竹中大臣が主宰していた通信・放送の在り方に関する懇談会は、
テレビ番組のインターネット配信に関して出演者の事前許諾を不要とする法改正を
提案した。しかし、文化庁の審議会はこの措置を、放送と同じ時間帯にインターネットで
流す番組に限定する方針を明らかにしている。すべての番組に適用されるように
なるまでには、まだまだ時間がかかりそうだ。
ロケーションフリーは、テレビのインターネット放送がなかなか進展しないことを
逆手に取ったビジネスと言える。転送しているだけだが、利用者にとっては
「見たいテレビ番組を見たい時に見たい場所で見られる」ことになるからだ。
ソニーはこれらの技術を応用した様々な機器を継続して生み出している。
この分野では他社の後追いではない。自社のHDD内蔵DVDレコーダーと
プレイステーションポータブル、ロケーションフリー用ベースサーバーと
ソニーエリクソンの携帯電話などの組み合わせでも、ロケーションフリー
機能を実現している。さらに他社に対して技術供与も開始している。
加賀電子はこれを受けて、アップルのマッキントッシュでも視聴可能な
ソフトウェアを開発すると発表している。
ソニーの技術に頼らず、独自にソニーを追うベンチャー企業も登場している。
米国カリフォルニア州のベンチャー企業スリングメディアは7月から、テレビ番組を
インターネットに転送し視聴する専用機器を販売した。ノバックという日本の
ベンチャーは、スカイプを使用して出先でテレビを視聴するためのチューナーを
発売している。
ここで特記したいのは、ソニーのような大企業が何年も前からロケーション
フリーのような新しいアイデアに基づき、技術と製品群を着実に世に送り出しており、
それをベンチャーが後追いしている、という点だ。
マスメディアが指摘してきたように、ソニーの製品戦略は一時期、相当にブレ
ていた。MP3に対応しない音楽プレーヤを作りiPodに市場を席巻されてしまったり、
DVDレコーダーではコンセプトは似ているものの規格が微妙に違う製品を、
関連する事業部の数だけ登場させた。液晶などの薄型テレビへの急激な移行から
目をそらし、平面ブラウン管に固執していた時期もあった。
このような時期と比べると、電池やゲームの問題はあるものの、最近になって
製品戦略のブレは小さくなってきていると思う。マーケットをドライブする
大きな要素としての技術と、それを有効に使う戦略がブレなく機能し始めると、
ソニーというブランドが再び、力を発揮するのではないだろうか。
生島 大嗣 (いくしま かずし)
アイキットソリューションズ代表
http://www.i-kit.jp/
大手電機メーカーで映像機器などの研究開発、情報システムに関する企画や
開発に取り組み、様々な経験を積んだ後、独立。既存企業、ベンチャーのビジネスモデルと
技術の評価、技術戦略と経営に関するコンサルティング、
講演などに携わる。現在は、イノベーション戦略プロデューサーとして活動中。
執筆しているコラムのバックナンバー
http://www.i-kit.jp/biz/category/blog/9
生島ブログ「日々雑感」
http://www.i-kit.jp/biz/category/blog/7
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■■日経ベンチャー経営者倶楽部オンラインにて「技術経営戦略考」を開始■■
日経ベンチャー経営者倶楽部オンラインに「技術経営戦略考」というコーナーをもうけ、
技術経営メールに掲載したコラムのバックナンバーを掲載していきます。
http://nvc.nikkeibp.co.jp/report/gijyustu/
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(過去のコラム バックナンバーにも追加しました)
アイキット ソリューションズ
生島大嗣
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きよ店長 wrote:
ソニーがどの方向性に向かっていて、いまどのような軌道修正がどのレベルではかれているかという事がよく分かりました。そろそろWBSに呼ばれる時期だと思います。早く御岳さんと変わってください(笑)
今期の利益のほとんどがリチウム電池で吹っ飛んだようですが、そのーー、本質的な部分で、利益が上がってないならそれはほんとに危機は脱出できてないんでしょうが、ある種、外れくじを引いただけですから、さらに、これによってだいぶ、社内的にも引き締まったでしょうから、僕もソニーは今後、回復すると思います。なんでしょう、、大企業、大人数が働いてる企業って、致命傷にならない程度のカンフル剤って、要る様な気がするんですよね、、、。いま、パッと思い浮かびませんが、こけかけてた大企業で、業績を回復したパターンって、こんなパターン、多いような気がするんですよね、、、。
生島大嗣 wrote:
きよ店長さん
コメントありがとうございます。
> 早く御岳さんと変わってください(笑)
呼ばれればねぇ(笑)
> 社内的にも引き締まったでしょうから、僕もソニーは今後、回復すると思います。
組織ってそういうものでしょうから、徐々にそういう方向に向かうでしょうね。ただ時間がかかるでしょうし、その間に逆の力が働く何らかの事態が起こるかもしれません。未知なのは変わらないでしょうね。
> こけかけてた大企業で、業績を回復したパターンって、こんなパターン、多いような気がするんですよね
確かに業績回復のひとつのパターンですね。
でも、私の古巣なんて過去の業績悪化と回復は内部の士気にはかかわりなく、外部要因の景気変動に引きずられていたように感じます。独自の戦略で尖がらなかったから、今あんなことになってるんじゃないかと。
その組織のもつ潜在能力っていうのは、如何に自立&自律して動けるかという能力にもモチベーションにも依存すると思います。単なる技術力や戦略構築力の差ではないですね。その遂行が如何に可能かが大きい。だから仰るように危機感というのは大きな要因になるのだと思いますよ。
戦略構築力×遂行力=企業の力
というような感じでしょうか。