企画立案チームと実践組織の作り方
posted at 23:46:00 on 2006-04-18 kaz | Category: オンモード
日経BP社の技術経営メールにて私のコラム 「生島の技術戦略思考第7回 企画立案チームと実践組織の作り方」 が本日配信された。
今回は、ビジネスアイデアを実際のビジネスにつなぐためのふたつの組織についての話であり、これまで7回にわたって続けてきた技術をビジネスに結びつけるイノベーションのフレームワークの最終回だ。次回以降は企業の実例にフレームワークをあてはめてみることにする。
以下、再掲する。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■■生島の技術戦略思考・企画立案チームと実践組織の作り方■■
今回は、新たなビジネスのアイデアを生み出し、そのアイデアを実際のビジネスに
つなぐために、組織面でどのような工夫をすればよいかについて考えてみたい。
顧客に支持される製品やサービスをいかにして創出するか。おそらくすべての企業に
とって喫緊の課題であろう。
消費者の間に必要な製品やサービスが行き渡っている現在、他社と同じような製品を
出していては価格競争に陥るだけだ。お客が求めていない機能を製品に盛り込んで
競争することも無意味である。
といって少し前まで議論されていた、マーケットインアプローチは成立しない。
お客が自らのニーズを把握できない、即ち何を求めているか気付いていないからだ。
となると企業は新しいアイデアを出して、お客の潜在的なニーズを掘り起こすような
プロダクトアウトでもマーケットインでもないアプローチをとっていく必要がある。
そこで本連載の第5回「ビジネスアイデアを作る」において斬新なビジネスアイデア
の創造について述べた。
http://www.i-kit.jp/biz/gijutsukeiei/gijutsukeiei05.html
続いて前回(第6回)、「自律して動く自立した組織へ」と題し、変化の大きい
現在の環境に対応できる「自分で考えて動ける組織」について言及した。
http://www.i-kit.jp/biz/gijutsukeiei/gijutsukeiei06.html
自律して動く、自立した組織の必要性は大きい。変化の大きい現在の環境にタイムリー
に対応するためである。プロダクトアウトでもマーケットインでも対応できなくなって
いる昨今の市場状況と向かいあうためにも必要である。
自ら考え動く組織で新たなビジネスアイデアを創造し、ビジネスを実践していく時には、
異なる性格と役割を持つ二つの組織が関わる。二つの自律した機能集団を用いて、
どのように新規事業を具体化すればよいのか、考えてみよう。
一つは、企画立案チームである。ここが新たなビジネスアイデアを生み出し、
これを具体化するための戦略やビジネスの3層構造を考える。3層構造とはこれまで
本連載で説明してきた通り、以下の三つを指す。
深層:「どうやって技術を獲得し維持するのか?」ということを考える部分。
検討すべきは、基礎研究開発力や知的財産権の獲得、人材の獲得と教育、社内風土。
中継層:「どのように技術を製品に活かすのか?」を検討する。
製品開発戦略(プロダクトアウトかマーケットインか)、組織や制度作りとその運用。
表層:「どのように技術を利益に結びつけるか?」。
ビジネスモデルの確立、マーケティングやセールスの工夫、といったテーマが入る。
もう一つは、実務を担う組織である。企画立案チームによって考え出された戦略や
3層構造を基に、実際のビジネスを作り上げ、運営していく。
企画立案チームは、成長曲線を次々と生み出す戦略を考え、企業に不連続の成長を
もたらすビジネスを企画立案する役割を担う。単なる製品のイノベーションに
とどまらず、ビジネスモデルまで含めた広義のビジネスイノベーションを考える。
私はここで「チーム」という言葉を使っている。この役割を実現するには、
一般の組織ではなく「チーム」が適していると考えるからだ。ここで言うチームは
次のような集団である。
・それぞれが高度の専門スキルを持った少数のメンバーにより構成される。
・チームの目的は、所属する企業や組織の目的と整合性がある。
・メンバーは、チームの目的、達成目標、アプローチを共有し、連帯責任を取る。
上記の定義が保証されるなら、チームの組成はいろいろな場合があってよい。
自社の既存組織内から最適なメンバーを選抜する場合もあるだろうし、逆に社内外
からメンバーを召集し、企業の外部に一時的に設置するやり方でも構わない。
ここでチームのメンバーのあり方については、
『いかに「高業績チーム」をつくるか』 Harvard business review anthology
(ダイヤモンド社)にある下記文章に基づいている。
「チームとは、共通の目的、達成すべき目標、そのためのアプローチを共有し、
連帯責任を果たせる補完的スキルを備えた少人数の集合体である」
このチームの思考形態は、事実を基に「何故?」「何故?」「何故?」と問いかけ
ていくロジカルシンキングが適している。社内の慣習や習慣、常識に捉われない形で
考えることが求められるからである。
一方、企画立案チームが考え出したイノベーションを、組織で実際に遂行していく
現場組織が必要である。主役は、自ら考え動ける現場である。ロジカルシンキング
より、組織のあらゆる要因やバランスを配慮したシステムシンキングが求められる。
新たに募集されたメンバーによる実行組織が作られる場合もあるだろうし、既存の
組織がこれを担う場合もある。実務組織の実現には、複雑な要素が絡み合う。
要素とは、リーダーシップであったり、信頼関係の場合もある。
企業の文化、風土にも影響を受けるし、組織を構成する社員のスキルや経歴、
管理のための諸制度にも左右される。
さらに自ら考え動く組織とするために、評価制度、採用基準、教育制度、
マニュアル等の仕掛けが重要になってくる。一例としてマニュアルを考えてみよう。
従来の作業の一挙手一投足が書かれたマニュアルではなく、考えるための
マニュアルが求められる。一問一答形式のマニュアルが有効なこともある。
リッツカールトンホテルのマネージャーの話を聞いたことがある。同ホテルは、
顧客向けに徹底したブランド価値を創出しようと努力している。目標は、
訪れる街にリッツカールトンがあれば間違いなくそこに泊まる、と考える顧客を
増やすこと。利用した顧客が「よかった、また泊まりたい」と思う程度ではダメという。
同ホテルの従業員は、「このお客様が今後も、必ず泊まって下さるにはどうすれば
よいか」と常に考え、行動することを目指す。そのための仕掛けの一つが同社の
価値観を記載した「クレドカード」である。
従業員が考え行動するための価値判断マニュアルとして作られている。
また、従業員はスキルよりも価値感の共有ができるかどうかで選抜されている。
こうすることで、個々人や従業員同士が、誇りを持ってお客様のために考え行動する。
企画立案チームと実務遂行組織の両方をうまく動かすには、企画立案チームが生み
出した成果を実務遂行組織に引き渡す際に、工夫することが必要だ。企画立案
チームに実務遂行組織のメンバーがあらかじめ参画して意思決定に参加したり、
企画立案チームのメンバーの一部が実務遂行の責任を担うとった配慮が求められる。
なお、以前から申し上げているように、企業は千差万別であり、置かれた環境や
使えるリソースといった条件が異なる。このため、どの企業にも当てはまる一般的な
方法は存在しない。したがって企画立案チームと実務を担う組織を明確に分ける
場合もあるし、渾然一体にして仕事を進める場合もある。これらはケースバイケース
で考え対処していかなければならない。
ただ、組織のミッションを考えると、どの企業も似たような筋道で考えないと
いけない。目的、目標、ビジョンの設定からこれを可能にするアイデアの創造、
そしてこれらを基にした新しいビジネスモデルを形作るための戦略、戦術を如何
に生み出すか。更に、これらを実際に動かす組織をどう構築、運営するかという
流れである。今回は、分かりやすくするために、企画立案チームと実務遂行組織
を明確に分けた場合を考えてみた。
◇ ◇ ◇
これまで7回にわたって、技術をビジネスに結びつけるイノベーションの
フレームワークを考えてきた。フレームワークの説明は今回でいったん締めくくり
とし、次回以降は企業の実例にフレームワークをあてはめてみることにする。
新製品を出した企業、技術関連の提携を発表した企業といった実例を取り上げ、
そこにどんな技術戦略思考があったのかを読者の皆様とともに読み解いていきたい。
引き続き、お読み頂きますようお願いします。
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(過去のコラム バックナンバーにも追加しました)
アイキット ソリューションズ
生島大嗣
今回は、ビジネスアイデアを実際のビジネスにつなぐためのふたつの組織についての話であり、これまで7回にわたって続けてきた技術をビジネスに結びつけるイノベーションのフレームワークの最終回だ。次回以降は企業の実例にフレームワークをあてはめてみることにする。
以下、再掲する。
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■■生島の技術戦略思考・企画立案チームと実践組織の作り方■■
今回は、新たなビジネスのアイデアを生み出し、そのアイデアを実際のビジネスに
つなぐために、組織面でどのような工夫をすればよいかについて考えてみたい。
顧客に支持される製品やサービスをいかにして創出するか。おそらくすべての企業に
とって喫緊の課題であろう。
消費者の間に必要な製品やサービスが行き渡っている現在、他社と同じような製品を
出していては価格競争に陥るだけだ。お客が求めていない機能を製品に盛り込んで
競争することも無意味である。
といって少し前まで議論されていた、マーケットインアプローチは成立しない。
お客が自らのニーズを把握できない、即ち何を求めているか気付いていないからだ。
となると企業は新しいアイデアを出して、お客の潜在的なニーズを掘り起こすような
プロダクトアウトでもマーケットインでもないアプローチをとっていく必要がある。
そこで本連載の第5回「ビジネスアイデアを作る」において斬新なビジネスアイデア
の創造について述べた。
http://www.i-kit.jp/biz/gijutsukeiei/gijutsukeiei05.html
続いて前回(第6回)、「自律して動く自立した組織へ」と題し、変化の大きい
現在の環境に対応できる「自分で考えて動ける組織」について言及した。
http://www.i-kit.jp/biz/gijutsukeiei/gijutsukeiei06.html
自律して動く、自立した組織の必要性は大きい。変化の大きい現在の環境にタイムリー
に対応するためである。プロダクトアウトでもマーケットインでも対応できなくなって
いる昨今の市場状況と向かいあうためにも必要である。
自ら考え動く組織で新たなビジネスアイデアを創造し、ビジネスを実践していく時には、
異なる性格と役割を持つ二つの組織が関わる。二つの自律した機能集団を用いて、
どのように新規事業を具体化すればよいのか、考えてみよう。
一つは、企画立案チームである。ここが新たなビジネスアイデアを生み出し、
これを具体化するための戦略やビジネスの3層構造を考える。3層構造とはこれまで
本連載で説明してきた通り、以下の三つを指す。
深層:「どうやって技術を獲得し維持するのか?」ということを考える部分。
検討すべきは、基礎研究開発力や知的財産権の獲得、人材の獲得と教育、社内風土。
中継層:「どのように技術を製品に活かすのか?」を検討する。
製品開発戦略(プロダクトアウトかマーケットインか)、組織や制度作りとその運用。
表層:「どのように技術を利益に結びつけるか?」。
ビジネスモデルの確立、マーケティングやセールスの工夫、といったテーマが入る。
もう一つは、実務を担う組織である。企画立案チームによって考え出された戦略や
3層構造を基に、実際のビジネスを作り上げ、運営していく。
企画立案チームは、成長曲線を次々と生み出す戦略を考え、企業に不連続の成長を
もたらすビジネスを企画立案する役割を担う。単なる製品のイノベーションに
とどまらず、ビジネスモデルまで含めた広義のビジネスイノベーションを考える。
私はここで「チーム」という言葉を使っている。この役割を実現するには、
一般の組織ではなく「チーム」が適していると考えるからだ。ここで言うチームは
次のような集団である。
・それぞれが高度の専門スキルを持った少数のメンバーにより構成される。
・チームの目的は、所属する企業や組織の目的と整合性がある。
・メンバーは、チームの目的、達成目標、アプローチを共有し、連帯責任を取る。
上記の定義が保証されるなら、チームの組成はいろいろな場合があってよい。
自社の既存組織内から最適なメンバーを選抜する場合もあるだろうし、逆に社内外
からメンバーを召集し、企業の外部に一時的に設置するやり方でも構わない。
ここでチームのメンバーのあり方については、
『いかに「高業績チーム」をつくるか』 Harvard business review anthology
(ダイヤモンド社)にある下記文章に基づいている。
「チームとは、共通の目的、達成すべき目標、そのためのアプローチを共有し、
連帯責任を果たせる補完的スキルを備えた少人数の集合体である」
このチームの思考形態は、事実を基に「何故?」「何故?」「何故?」と問いかけ
ていくロジカルシンキングが適している。社内の慣習や習慣、常識に捉われない形で
考えることが求められるからである。
一方、企画立案チームが考え出したイノベーションを、組織で実際に遂行していく
現場組織が必要である。主役は、自ら考え動ける現場である。ロジカルシンキング
より、組織のあらゆる要因やバランスを配慮したシステムシンキングが求められる。
新たに募集されたメンバーによる実行組織が作られる場合もあるだろうし、既存の
組織がこれを担う場合もある。実務組織の実現には、複雑な要素が絡み合う。
要素とは、リーダーシップであったり、信頼関係の場合もある。
企業の文化、風土にも影響を受けるし、組織を構成する社員のスキルや経歴、
管理のための諸制度にも左右される。
さらに自ら考え動く組織とするために、評価制度、採用基準、教育制度、
マニュアル等の仕掛けが重要になってくる。一例としてマニュアルを考えてみよう。
従来の作業の一挙手一投足が書かれたマニュアルではなく、考えるための
マニュアルが求められる。一問一答形式のマニュアルが有効なこともある。
リッツカールトンホテルのマネージャーの話を聞いたことがある。同ホテルは、
顧客向けに徹底したブランド価値を創出しようと努力している。目標は、
訪れる街にリッツカールトンがあれば間違いなくそこに泊まる、と考える顧客を
増やすこと。利用した顧客が「よかった、また泊まりたい」と思う程度ではダメという。
同ホテルの従業員は、「このお客様が今後も、必ず泊まって下さるにはどうすれば
よいか」と常に考え、行動することを目指す。そのための仕掛けの一つが同社の
価値観を記載した「クレドカード」である。
従業員が考え行動するための価値判断マニュアルとして作られている。
また、従業員はスキルよりも価値感の共有ができるかどうかで選抜されている。
こうすることで、個々人や従業員同士が、誇りを持ってお客様のために考え行動する。
企画立案チームと実務遂行組織の両方をうまく動かすには、企画立案チームが生み
出した成果を実務遂行組織に引き渡す際に、工夫することが必要だ。企画立案
チームに実務遂行組織のメンバーがあらかじめ参画して意思決定に参加したり、
企画立案チームのメンバーの一部が実務遂行の責任を担うとった配慮が求められる。
なお、以前から申し上げているように、企業は千差万別であり、置かれた環境や
使えるリソースといった条件が異なる。このため、どの企業にも当てはまる一般的な
方法は存在しない。したがって企画立案チームと実務を担う組織を明確に分ける
場合もあるし、渾然一体にして仕事を進める場合もある。これらはケースバイケース
で考え対処していかなければならない。
ただ、組織のミッションを考えると、どの企業も似たような筋道で考えないと
いけない。目的、目標、ビジョンの設定からこれを可能にするアイデアの創造、
そしてこれらを基にした新しいビジネスモデルを形作るための戦略、戦術を如何
に生み出すか。更に、これらを実際に動かす組織をどう構築、運営するかという
流れである。今回は、分かりやすくするために、企画立案チームと実務遂行組織
を明確に分けた場合を考えてみた。
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これまで7回にわたって、技術をビジネスに結びつけるイノベーションの
フレームワークを考えてきた。フレームワークの説明は今回でいったん締めくくり
とし、次回以降は企業の実例にフレームワークをあてはめてみることにする。
新製品を出した企業、技術関連の提携を発表した企業といった実例を取り上げ、
そこにどんな技術戦略思考があったのかを読者の皆様とともに読み解いていきたい。
引き続き、お読み頂きますようお願いします。
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(過去のコラム バックナンバーにも追加しました)
アイキット ソリューションズ
生島大嗣
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いかに「高業績チーム」をつくるか Harvard business review anthology DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集部 (編集) 単行本 (2005/05/06) ダイヤモンド社 |
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