ビジネスアイデア
posted at 22:05:55 on 2006-01-17 kaz | Category: オンモード
日経BP社の技術経営メールにて私のコラム 「生島の技術戦略思考第5回 「ビジネスアイデア」を生み出す」 が本日配信された。
今回は、アイキットソリューションズの戦略フレームワーク「3層構造」の表層に関係するビジネスアイデア創出の話だ。
以下、再掲する。
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■■生島の技術戦略思考第5回 「ビジネスアイデア」を生み出す■■
技術経営メール読者の皆様,本年もよろしくお願いします。
今回は,もの作りの対極にあるように思える「ビジネスアイデア」について考える。
これまでお伝えしてきたように,経営には「3層構造」と「人・組織の問題解決」が
必要と私は考えている。
3層構造は戦略に、人・組織の問題解決はマネジメントに,それぞれ関係する。
3層構造とは,技術を獲得し維持する「深層」,技術を製品に活かす「中継層」,
技術や製品を利益に結びつける「表層」を指す。
詳しく知りたい方は、「ビジネスモデルも組織運営も3層理論でクリアーに!」を
参照していただきたい。
http://www.i-kit.jp/biz/gikei/gikei17.html
今回のテーマである「ビジネスアイデア」は3層構造の表層に位置する。
一方,深層にはコア技術を支える基礎研究、知的財産権、人材、社内風土といった
要素がある。深層の諸要素を表層のビジネスアイデアにどう結びつけるか,
ここが企業にとって大きな課題となっている。
多くのメーカーは,深層のコア技術に強さを見出そうとする。他社にない独自技術を
ビジネスの拠り所、即ち競争力の根源と捉えるわけである。
しかし顧客にとってみれば、商品やサービスが提供してくれるものが同じなら、
それを実現する技術が優れているかどうかはあまり重要ではない。これが現実である。
こうなると、メーカーの考えや価値観と、顧客のそれにずれが生じてしまう。
メーカーはよいものを作れば売れると信じる。
これに対し,顧客は機能が同じなら値段かサービスまたはデザインによって
選択しようとする。
メーカーではなく、機械部品を扱う商社ならどうだろうか。扱う部品が他の商社と
同じなら、顧客は価格か営業担当者の姿勢によって取り引きする商社を選ぶだろう。
こうみてくると,商社よりメーカーの方が顧客から離れていると言える。
顧客から離れていればいるほど顧客が理解できなくなり自分の論理で考えようとする。
そして「よいものは売れる」とか「売れないのは客が理解できないからだ」と言う。
これはもっての外である。
したがって私は表層の「ビジネスアイデア」とその作り方が大事だと思っている。
ビジネスアイデアとは、事業モデルに関するアイデア創出を意味する。もちろん
深層の力を否定するものではない。コアコンピタンスを持たないものがビジネス
アイデアを議論することは空しい。
コアコンピタンスとは、他にない独自の強さを指す。メーカーの場合,やはり独自
技術を意味することが多いが、これを表層のビジネスアイデアに結び付けてこそ
ビジネス面において強さを発揮できる。
というのは、技術の深層部分にコアコンピタンスを見出すビジネスにおいては、
他社が追随できない商品を扱うか、市場に製品が不足しているときは問題ないが、
そうでない場合、表層のビジネスが他と横並びになってしまう危険があるからだ。
こうなると顧客の求めていない機能や特徴を競ったり、固定観念に縛られた過剰
サービスをしたりする。
コアコンピタンスは技術とは限らない。顧客や取引先と特別の関係を作り維持する
能力,例えば他にないメンテナンスサービスやサプライチェーンマネジメント、
あるいは優秀な人材といったものがコアコンピタンスになり得る。ここから、
競争を無効にしてしまう程のビジネスアイデアを生み出せれば言うことはない。
しかし、斬新なビジネスアイデアを創出し、実現することは難しい。よく使われる
例だが、iPodと同様のハードウェアは世の中に多いが、iPodとiTunesを組み合
わせるビジネスアイデアにおいて、アップルコンピュータは強さを発揮した。
ハードウェアを作り出すメーカーが新しいビジネスアイデアとしてまず思いつく
のは、そのハードウェアに付帯するソフトウエアやサービスの事業化である。
ただし、汎用のハードウェアは他社も入手できるから、ソリューションビジネスを
メーカーではなくても展開できる。顧客との距離が遠いメーカーより、
長年サービス事業を手がけてきた企業の方が顧客との距離が近い分、
事業展開については巧みである。
デジタルカメラが出始めた段階で、これを使った様々なソリューションビジネスが
メーカーから考え出された。中には、産婦人科病院向けに、デジタルカメラで入院
から出産までの記録を取りCD-Rで提供するビジネスがあった。
しかしこれらのビジネスは、ハードウェアが普及するにつれて急速に陳腐化した。
今や量販店で機器を買い揃え、ハウツー本を見れば、誰でもできてしまう。
ハードウェアがまだ世の中に普及していない段階では、それを作っているメーカー
にしか、そのハードを使ったソリューションビジネスを思いつけない。
とはいえ比較的簡単なアイデアを基にしたビジネスは時間と共に模倣されてしまう。
模倣されるだけではなく、メーカーより顧客に近くサービスに長けている企業に
負けてしまうことが多い。
つまり,この程度のアイデアでは勝負にならないのだが、技術に自信のある
メーカーであればあるほど有効なビジネスアイデアを創造することが難しい。
では、いかにしてビジネスアイデアを考え出せばよいのか。
私の知っているある会社は、広告やデザインを手がけるいわゆるクリエーターを
メーカーの研究所へ送り込むサービスを手がけている。クリエーターと研究者の
コラボレーションを進めるためだ。高いレベルのクリエーターになると、
凡人と発想の質がまったく違っており、これは簡単に真似できるものではない。
クリエーターの斬新な発想とデザインを実現する技術を研究所で作ることで、
新しい製品やビジネスアイデアを生み出そうという考えだ。
アイデアの発想次第で勝負が決まる世の中が来ているのは間違いない。
生産性や効率性の追求だけではアイデア発想力は強化されない。
言うまでもないが、奇想天外なアイデアを出せばよいというわけではない。
アイデアを基に練り上げられたビジネスをいざ展開しようとしたときは、
生産性と効率性も問われる。ビジネスの方向性を決めた後、
速やかに実行する実務能力も求められる。難しいことではあるが、
ビジネスをてがけるチームの構成メンバーにより一層の多様化が求められ、
複数の価値を同時に追求する姿勢が必要になる。
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(過去のコラム バックナンバーにも追加しました)
アイキット ソリューションズ
生島 大嗣
今回は、アイキットソリューションズの戦略フレームワーク「3層構造」の表層に関係するビジネスアイデア創出の話だ。
以下、再掲する。
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■■生島の技術戦略思考第5回 「ビジネスアイデア」を生み出す■■
技術経営メール読者の皆様,本年もよろしくお願いします。
今回は,もの作りの対極にあるように思える「ビジネスアイデア」について考える。
これまでお伝えしてきたように,経営には「3層構造」と「人・組織の問題解決」が
必要と私は考えている。
3層構造は戦略に、人・組織の問題解決はマネジメントに,それぞれ関係する。
3層構造とは,技術を獲得し維持する「深層」,技術を製品に活かす「中継層」,
技術や製品を利益に結びつける「表層」を指す。
詳しく知りたい方は、「ビジネスモデルも組織運営も3層理論でクリアーに!」を
参照していただきたい。
http://www.i-kit.jp/biz/gikei/gikei17.html
今回のテーマである「ビジネスアイデア」は3層構造の表層に位置する。
一方,深層にはコア技術を支える基礎研究、知的財産権、人材、社内風土といった
要素がある。深層の諸要素を表層のビジネスアイデアにどう結びつけるか,
ここが企業にとって大きな課題となっている。
多くのメーカーは,深層のコア技術に強さを見出そうとする。他社にない独自技術を
ビジネスの拠り所、即ち競争力の根源と捉えるわけである。
しかし顧客にとってみれば、商品やサービスが提供してくれるものが同じなら、
それを実現する技術が優れているかどうかはあまり重要ではない。これが現実である。
こうなると、メーカーの考えや価値観と、顧客のそれにずれが生じてしまう。
メーカーはよいものを作れば売れると信じる。
これに対し,顧客は機能が同じなら値段かサービスまたはデザインによって
選択しようとする。
メーカーではなく、機械部品を扱う商社ならどうだろうか。扱う部品が他の商社と
同じなら、顧客は価格か営業担当者の姿勢によって取り引きする商社を選ぶだろう。
こうみてくると,商社よりメーカーの方が顧客から離れていると言える。
顧客から離れていればいるほど顧客が理解できなくなり自分の論理で考えようとする。
そして「よいものは売れる」とか「売れないのは客が理解できないからだ」と言う。
これはもっての外である。
したがって私は表層の「ビジネスアイデア」とその作り方が大事だと思っている。
ビジネスアイデアとは、事業モデルに関するアイデア創出を意味する。もちろん
深層の力を否定するものではない。コアコンピタンスを持たないものがビジネス
アイデアを議論することは空しい。
コアコンピタンスとは、他にない独自の強さを指す。メーカーの場合,やはり独自
技術を意味することが多いが、これを表層のビジネスアイデアに結び付けてこそ
ビジネス面において強さを発揮できる。
というのは、技術の深層部分にコアコンピタンスを見出すビジネスにおいては、
他社が追随できない商品を扱うか、市場に製品が不足しているときは問題ないが、
そうでない場合、表層のビジネスが他と横並びになってしまう危険があるからだ。
こうなると顧客の求めていない機能や特徴を競ったり、固定観念に縛られた過剰
サービスをしたりする。
コアコンピタンスは技術とは限らない。顧客や取引先と特別の関係を作り維持する
能力,例えば他にないメンテナンスサービスやサプライチェーンマネジメント、
あるいは優秀な人材といったものがコアコンピタンスになり得る。ここから、
競争を無効にしてしまう程のビジネスアイデアを生み出せれば言うことはない。
しかし、斬新なビジネスアイデアを創出し、実現することは難しい。よく使われる
例だが、iPodと同様のハードウェアは世の中に多いが、iPodとiTunesを組み合
わせるビジネスアイデアにおいて、アップルコンピュータは強さを発揮した。
ハードウェアを作り出すメーカーが新しいビジネスアイデアとしてまず思いつく
のは、そのハードウェアに付帯するソフトウエアやサービスの事業化である。
ただし、汎用のハードウェアは他社も入手できるから、ソリューションビジネスを
メーカーではなくても展開できる。顧客との距離が遠いメーカーより、
長年サービス事業を手がけてきた企業の方が顧客との距離が近い分、
事業展開については巧みである。
デジタルカメラが出始めた段階で、これを使った様々なソリューションビジネスが
メーカーから考え出された。中には、産婦人科病院向けに、デジタルカメラで入院
から出産までの記録を取りCD-Rで提供するビジネスがあった。
しかしこれらのビジネスは、ハードウェアが普及するにつれて急速に陳腐化した。
今や量販店で機器を買い揃え、ハウツー本を見れば、誰でもできてしまう。
ハードウェアがまだ世の中に普及していない段階では、それを作っているメーカー
にしか、そのハードを使ったソリューションビジネスを思いつけない。
とはいえ比較的簡単なアイデアを基にしたビジネスは時間と共に模倣されてしまう。
模倣されるだけではなく、メーカーより顧客に近くサービスに長けている企業に
負けてしまうことが多い。
つまり,この程度のアイデアでは勝負にならないのだが、技術に自信のある
メーカーであればあるほど有効なビジネスアイデアを創造することが難しい。
では、いかにしてビジネスアイデアを考え出せばよいのか。
私の知っているある会社は、広告やデザインを手がけるいわゆるクリエーターを
メーカーの研究所へ送り込むサービスを手がけている。クリエーターと研究者の
コラボレーションを進めるためだ。高いレベルのクリエーターになると、
凡人と発想の質がまったく違っており、これは簡単に真似できるものではない。
クリエーターの斬新な発想とデザインを実現する技術を研究所で作ることで、
新しい製品やビジネスアイデアを生み出そうという考えだ。
アイデアの発想次第で勝負が決まる世の中が来ているのは間違いない。
生産性や効率性の追求だけではアイデア発想力は強化されない。
言うまでもないが、奇想天外なアイデアを出せばよいというわけではない。
アイデアを基に練り上げられたビジネスをいざ展開しようとしたときは、
生産性と効率性も問われる。ビジネスの方向性を決めた後、
速やかに実行する実務能力も求められる。難しいことではあるが、
ビジネスをてがけるチームの構成メンバーにより一層の多様化が求められ、
複数の価値を同時に追求する姿勢が必要になる。
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(過去のコラム バックナンバーにも追加しました)
アイキット ソリューションズ
生島 大嗣
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ぽぽ wrote:
記事を拝見致しました。大変興味をひかれました。私は外資系の産業財メーカのマーケティング部にて7年働いた後、現在、経営大学院で勉強しております。大学では電気工学を専攻していたため、友人の大半は研究開発員となり、私はマーケティングというちょっと違った方面に進みました。最近、友人の研究開発員と話すと、考え方が離れている事を強く感じています。どちらも正しいと思うのですが。 なぜこんな事になるのかという疑問を探る目的を持って、今、勉強中です。今後は、今学んでいることを役立てたいと考えています。
今悩んでいるのは、私も偏った考えを持っている事です。そのため、生島様の記事は私の偏った考えを修正するのに非常に有効でした。ありがとうございました。
生島大嗣 wrote:
早速のコメントありがとうございます。
日本には理系、文系という概念が今だに根強いのですが、欧米では希薄ですね。アカウンティングとコンピュータサイエンスというような理系と文系のダブルメジャーも欧米では一般的です。
日本では両方を経験した者は少数です。交流も少ないために互いに溝ができがちですし、考え方も偏りがちです。
少なくとも、自分ではこのことを意識してバランスをとっていきたいと思っています。
今後共ご愛読よろしくお願いします。