白蟻の巣の最初の一本の柱を立てる
posted at 22:43:51 on 2011-11-24 kaz | Category: オンモード
「ある科学者は、白蟻が巣を造るすべての工程を観察した。最初、彼らは一定のルールもなく、ただ小さい土の塊を、何度もあちこちに無秩序に運ぶだけだった。だが、ひとたび一本の柱のような形ができ始めると、まるで何かにインスピレーションを受けたかのように、軍隊のような群れを形成し始める。蟻は自分がやるべき任務の内容によって、軍隊を配置し、無秩序の中から急激に秩序が生まれたかのように、蟻の巣を建設していく。彼らは巣を造ることだけでなく、例えば食べ物を探すというようなことにおいても、驚異的な能力を発揮している」
これは『中国モノマネ工場――世界ブランドを揺さぶる「山寨革命」の衝撃』の一節です。
更に文章はこう続いています。
「大自然は、脳の力で複雑な組織や構造を考えだす人類を創造しただけでなく、我々の理解の範疇を超えたところで、もう一つの奇跡を造ったのである。
筆者は、蟻が巣を作る工程の進め方は山寨方式によく似ていると思う。このような複雑なプロジェクトは、人類のような階級構造がなければ、理論上では完成し難い」
(以上、『中国モノマネ工場――世界ブランドを揺さぶる「山寨革命」の衝撃』 第三部 山寨社会 13章 山寨の原形 より引用)
山寨(コピー品、ニセモノの意)携帯電話は、経済の論理により、深センを中心とする地域で自然発生的に分業体制ができあがり、それを基に効率よく生み出されました。
「中国モノマネ工場」の筆者阿甘は、この山寨携帯電話が生み出された現象を論拠に、大企業の大きな組織による生産方式は効率が悪く、世の中はネットで緩やかに繋がった人びとにより、LinuxやWikipediaのように専門知識を有するアマチュアの半ばヴォランタリィーな活動に取って代わるといっています。
更にこれを発展させて、宇宙ロケットまでも山寨化すると予想しています。
山寨携帯電話に関しては、私は筆者の考えに異論がありません。
チップメーカーであるメディアテックのターンキー方式(チップからパッケージ化されたソリューションまで一括して提供)を核、即ち白蟻の最初の一本の柱にして、経済効率最優先で繋がった様々な分業を担う人びと、企業が携帯電話の生産と販売に群がる構図は、白蟻のモデルを彷彿させます。
しかし、それ以後の予想には少々異論があります。
実際、今年くらいから徐々に山寨携帯電話は力を削がれています。
原因の一つに、メディアテック社が次のスマートフォン向けのソリューションをなかなか用意できないということが挙げられます。
白蟻モデルで考えてみると、経済論理で金儲けを目論む白蟻たちがメディアテックのソリューションという最初に立った一本の柱に群がり、山寨携帯電話産業という大きな白蟻の巣を作ったけれど、次の一本の柱は自然発生的にはまだ出てきていないということになります。
この経済論理だけに任せたモデルはいつでも有効なのでしょうか。
たぶん、何かが出てくる土壌があれば、可能性はあるのだと思います。
しかし、可能性はあくまでも可能性です。
何も出てこないこともあるのです。
山寨携帯電話の場合は、その土壌は深センを中心とする電子産業の設計、生産、商取引、販売までのクラスターの形成といったものだと思います。
しかし、これだと何が出てくるか、誰が、どこがそれを出してくるかまったくわからないのではないでしょうか。
確かに、新しい産業や製品といったものは、そういった土壌がないとでてきません。
しかし産業集積と経済原理だけでは、たまたま当たってもそれが次に繋がるような産業のグランドデザインは生まれないでしょう。
私は、そこに計画された偶然性といったものをインストールする必要があるのではないかと思っています。
生命が生まれる最初の一歩となるアミノ酸のように、または先程から述べている白蟻の巣の最初の一本の柱のように自然界で行われている全てを偶然に任せるモデルではなく、核となる人物やコンセプト、ビジョンといった方向性を促す核というべきものがそこにあれば、経済論理の偶然性だけに頼るより遥かに確率を高められるのではないかと考えているのです。
企業という環境の中でもそれは起こり得ると思います。
例えばスティーブ・ジョブズがAppleという企業の核になったように。
それが今は企業だけが舞台でなくなったのかもしれません。
リーナス・トーバルズはLinuxの最初の一本の柱となり、ワールドワイドで繋がった開発者を核として束ねています。
彼がビジョンやコンセプトメーカーとなり、ネットで繋がった自律的な人びとがLinuxという白蟻の巣を作っているのです。
私は山寨携帯のケースのように経済論理にすべて任せるのではなく、舞台は企業でもネット上でも構わないから、核となるコンセプトやビジョンが重要だと考えています。
それに惹かれた自律的な人びとや企業が集まり、白蟻の最初の一本の柱を基にクラスターを形成することで、新しいものを創り上げ、生産が始まるという形が自然だと思うのです。
まったくの偶然に任せるのではなく、偶然を計画するものが必要なのではないかと考えているわけなのです。
日本はアメリカで創り上げられ、最初の一本の柱が既に立っていた電機産業や自動車産業を更に高度に発展させ、アメリカのお株を奪う形で、より大きな白蟻の巣を作ってきました。
最初の一本の柱が立った後、即ち問題を認識し、問題を設定した後は、日本は世界でも類をみないほど効率よく、皆が分担することで、問題解決に当たっていきます。
しかし、一旦問題が解かれたら、今では韓国や台湾といった企業が、日本から学びより効率よく、例えばサムスンのように白蟻の巣を大きく建設しているのではないでしょうか。
日本にとって残念なことに、GoogleやApple、近頃ではFacebookといった次の最初の一本の柱は、またアメリカで建てられています。こういった新しいビジネスにおいて、以前の電機産業や自動車産業のように日本はアメリカのお株を奪うことはまだできていません。
最初の一本の柱を日本で独自に立ち上げることもできず、既に立った柱を以前のように奪えないでいます。
最初の柱が立ってからそれを大きくする能力と、最初の柱を立てる能力は種類が異なります。大企業の優秀な社員は、既に立った柱を大きくすることは得意でしょうが、残念ながら最初の一本の柱を一から立てるのは、中小企業やベンチャーの方が得意なのかもしれません。
そして、最初の一本の柱を立てる白蟻を育むのはシリコンバレーのような土壌が必要なのでしょう。そこでは偶然を計画するということが日常起こっています。
今の日本ではそれとは逆に、何でもかんでも効率優先にしてしまい、偶然を計画するという機能を阻害してしまっていないでしょうか?
日本企業は日本社会もそのことに気づかないと、次の最初の一本の柱をアメリカどころか韓国や中国に立てられてしまわないとも限りません。
次の最初の一本の柱は、是非日本が育んでいって欲しいものです。
そして私も、少しでも次の最初の一本の柱を立てようとするみなさんのお役に立てるように、微力ながら頑張っていきたいと思っています。
アイキットソリューションズ
生島大嗣
これは『中国モノマネ工場――世界ブランドを揺さぶる「山寨革命」の衝撃』の一節です。
更に文章はこう続いています。
「大自然は、脳の力で複雑な組織や構造を考えだす人類を創造しただけでなく、我々の理解の範疇を超えたところで、もう一つの奇跡を造ったのである。
筆者は、蟻が巣を作る工程の進め方は山寨方式によく似ていると思う。このような複雑なプロジェクトは、人類のような階級構造がなければ、理論上では完成し難い」
(以上、『中国モノマネ工場――世界ブランドを揺さぶる「山寨革命」の衝撃』 第三部 山寨社会 13章 山寨の原形 より引用)
山寨(コピー品、ニセモノの意)携帯電話は、経済の論理により、深センを中心とする地域で自然発生的に分業体制ができあがり、それを基に効率よく生み出されました。
「中国モノマネ工場」の筆者阿甘は、この山寨携帯電話が生み出された現象を論拠に、大企業の大きな組織による生産方式は効率が悪く、世の中はネットで緩やかに繋がった人びとにより、LinuxやWikipediaのように専門知識を有するアマチュアの半ばヴォランタリィーな活動に取って代わるといっています。
更にこれを発展させて、宇宙ロケットまでも山寨化すると予想しています。
山寨携帯電話に関しては、私は筆者の考えに異論がありません。
チップメーカーであるメディアテックのターンキー方式(チップからパッケージ化されたソリューションまで一括して提供)を核、即ち白蟻の最初の一本の柱にして、経済効率最優先で繋がった様々な分業を担う人びと、企業が携帯電話の生産と販売に群がる構図は、白蟻のモデルを彷彿させます。
しかし、それ以後の予想には少々異論があります。
実際、今年くらいから徐々に山寨携帯電話は力を削がれています。
原因の一つに、メディアテック社が次のスマートフォン向けのソリューションをなかなか用意できないということが挙げられます。
白蟻モデルで考えてみると、経済論理で金儲けを目論む白蟻たちがメディアテックのソリューションという最初に立った一本の柱に群がり、山寨携帯電話産業という大きな白蟻の巣を作ったけれど、次の一本の柱は自然発生的にはまだ出てきていないということになります。
この経済論理だけに任せたモデルはいつでも有効なのでしょうか。
たぶん、何かが出てくる土壌があれば、可能性はあるのだと思います。
しかし、可能性はあくまでも可能性です。
何も出てこないこともあるのです。
山寨携帯電話の場合は、その土壌は深センを中心とする電子産業の設計、生産、商取引、販売までのクラスターの形成といったものだと思います。
しかし、これだと何が出てくるか、誰が、どこがそれを出してくるかまったくわからないのではないでしょうか。
確かに、新しい産業や製品といったものは、そういった土壌がないとでてきません。
しかし産業集積と経済原理だけでは、たまたま当たってもそれが次に繋がるような産業のグランドデザインは生まれないでしょう。
私は、そこに計画された偶然性といったものをインストールする必要があるのではないかと思っています。
生命が生まれる最初の一歩となるアミノ酸のように、または先程から述べている白蟻の巣の最初の一本の柱のように自然界で行われている全てを偶然に任せるモデルではなく、核となる人物やコンセプト、ビジョンといった方向性を促す核というべきものがそこにあれば、経済論理の偶然性だけに頼るより遥かに確率を高められるのではないかと考えているのです。
企業という環境の中でもそれは起こり得ると思います。
例えばスティーブ・ジョブズがAppleという企業の核になったように。
それが今は企業だけが舞台でなくなったのかもしれません。
リーナス・トーバルズはLinuxの最初の一本の柱となり、ワールドワイドで繋がった開発者を核として束ねています。
彼がビジョンやコンセプトメーカーとなり、ネットで繋がった自律的な人びとがLinuxという白蟻の巣を作っているのです。
私は山寨携帯のケースのように経済論理にすべて任せるのではなく、舞台は企業でもネット上でも構わないから、核となるコンセプトやビジョンが重要だと考えています。
それに惹かれた自律的な人びとや企業が集まり、白蟻の最初の一本の柱を基にクラスターを形成することで、新しいものを創り上げ、生産が始まるという形が自然だと思うのです。
まったくの偶然に任せるのではなく、偶然を計画するものが必要なのではないかと考えているわけなのです。
日本はアメリカで創り上げられ、最初の一本の柱が既に立っていた電機産業や自動車産業を更に高度に発展させ、アメリカのお株を奪う形で、より大きな白蟻の巣を作ってきました。
最初の一本の柱が立った後、即ち問題を認識し、問題を設定した後は、日本は世界でも類をみないほど効率よく、皆が分担することで、問題解決に当たっていきます。
しかし、一旦問題が解かれたら、今では韓国や台湾といった企業が、日本から学びより効率よく、例えばサムスンのように白蟻の巣を大きく建設しているのではないでしょうか。
日本にとって残念なことに、GoogleやApple、近頃ではFacebookといった次の最初の一本の柱は、またアメリカで建てられています。こういった新しいビジネスにおいて、以前の電機産業や自動車産業のように日本はアメリカのお株を奪うことはまだできていません。
最初の一本の柱を日本で独自に立ち上げることもできず、既に立った柱を以前のように奪えないでいます。
最初の柱が立ってからそれを大きくする能力と、最初の柱を立てる能力は種類が異なります。大企業の優秀な社員は、既に立った柱を大きくすることは得意でしょうが、残念ながら最初の一本の柱を一から立てるのは、中小企業やベンチャーの方が得意なのかもしれません。
そして、最初の一本の柱を立てる白蟻を育むのはシリコンバレーのような土壌が必要なのでしょう。そこでは偶然を計画するということが日常起こっています。
今の日本ではそれとは逆に、何でもかんでも効率優先にしてしまい、偶然を計画するという機能を阻害してしまっていないでしょうか?
日本企業は日本社会もそのことに気づかないと、次の最初の一本の柱をアメリカどころか韓国や中国に立てられてしまわないとも限りません。
次の最初の一本の柱は、是非日本が育んでいって欲しいものです。
そして私も、少しでも次の最初の一本の柱を立てようとするみなさんのお役に立てるように、微力ながら頑張っていきたいと思っています。
アイキットソリューションズ
生島大嗣
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めぐみ wrote:
本当に、最近日本、日本人頑張れと痛感します。
主たる業務をただもくもくと真面目にしていても、一本の柱は立ちません。立たせるには、ある程度心理的、経済的、時間的余裕のある状態で、アソビが必要なのかもしれません。
みんなそろって、アソンでしまってはいけませんが。
生島大嗣 wrote:
めぐみさん
仰る通りだと思います。
業績が右肩上がりのときは、事業戦略が合っている。というか、戦略が正解だから右肩上がりになるのですが、業績が頭打ち、または右肩下がりの場合は戦略を修正したり、新しい戦略、ビジネスの仕組みの刷新が必要ですね。
そのときに、以前の仕事をそのまま真面目にコツコツ行っていても何ら改善には繋がらない。なのにそれをそのまま続けてしまうのが人間の性なのでしょうね。
それを打ち破るにはいろいろと方法がありますが、仰る通り「ある程度心理的、経済的、時間的余裕のある状態で、アソビが必要」というものも大いにあるのでしょうね。
モチベーション、切迫感、問題意識等も絡んでくると思います。
如何に自分の問題として捉えるかという当事者意識も必要でしょう。この辺りは組織行動論であり、ボトムアップの要素ですね。
事業を組み立てるという点では、トップダウンの手法もありだとは思います。
これらがうまく組み合わさり、方向性やビジョンを伴って、今、白蟻がどんどん柱を立てているところがシリコンバレーなのでしょうね。
コメントありがとうございました。
生島 大嗣