営業とクロージング ③
posted at 01:32:41 on 2009-06-26 kaz | Category: オンモード
お待たせしました。
営業とクロージング シリーズ 最終回です。
このシリーズの第1回では、営業を行う場合には相手が
『好意を持ってもらう ⇒ ファンになってもらう ⇒ その人のためなら役に立ちたいと思ってもらう』
というプロセスを経て自分のファンになってもらうことが必要だと述べました。
更に第2回では、そのためには
『まず自分から相手を好きになること』
が相手に好きになってもらうのにとても重要であるということを事例を挙げて述べました。
このように営業でクロージングをかけるには、これまで説明した一番有効な方法である「自分のファンになってもらう」、「ファンを増やす」、「ファンが営業を買って出る」という状況を作り出すことが重要で、ここまで来て初めてクロージングのプロセスが有効になります。
しかし世の中面白いもので、このプロセスを経ずにクロージングができてしまう場合もあるのです。今回はこれについて述べてみます。
ある興味深い事例を取り上げましょう。
現在上場を果たしているある企業C社の創業期(80年代)の話です。
この企業の事業内容は新事業創造に関わるある種のコンサルティングです。
創業期のボードメンバーのひとりと飲んでいたときに彼が話していたことを取り上げましょう。彼は現在は独立しており、C社からは離れて別の企業の社長をしています。
C社の創業期、彼はあちこちの会社に提案書を持っていっていたのですが、まだまだ会社の知名度もなくビジネス自体もあまり認知度がないために提案はなかなかそのままでは受け入れてもらえなかったそうです。
そこで彼らは奇策を打ったのです。
訪問先の会社のライバル会社への提案書を作り、訪問先の企業で帰り際にわざとライバル企業の名前が見えるように机の上や床に落としたのです。
そうすると今まで興味を示さなかった訪問先の企業は、ライバル会社の名前が記された書類を一目見た瞬間に急に態度が変わり、あれこれと質問を始めたそうです。
C社の社員は、”しまった!” ” 困った!”というような表情をわざと作り、あまり答えたくないという態度で訪問先企業のライバル会社がC社と契約したことを仕方なくという態度を装いながら質問に答える形で伝えたのです。
もちろん、この提案書は”嘘”です。
わざと落としてみせるための小道具に過ぎません。
ここがミソだそうで、訪問先の企業人間は、C社が積極的にアピールしなかった、逆に隠そうとしたことで信憑性の高い重要な秘密を聞き出したと感じます。
情報の価値が格段と上がるように感じてしまうのです。
情報の価値は、内容が同じでもその状況によって大きく変わります。
相手が隠そうとしている情報の価値は大きくなります。
こういうこともあります。
電車の中や喫茶店である企業の株価が上がるというような話を誰かがしているのを漏れ聞いたとしましょう。この情報の価値も大きくなります。
つまり、利害の絡まない第三者から売り込みではなく、偶然もたらされた情報というのは信憑性が増すように感じ、聞き手にとっての価値は高くなるというのです。
さて、C社の社員はライバル企業を全て回りそこで同じようにライバル企業の名前の書いた提案書を落としてほぼ全ての企業から契約を取り付けたそうです。
人間の感情とは不安定なものです。
特に「欲」や「不安」によって支配されがちになります。
この事例では、「ライバル企業に出し抜かれるのではないか」、「ライバル企業が契約してのに我社は契約しなくて大丈夫なのか」というような不安を誘って有効に利用しています。
更に積極的に売り込んできた内容ではなく、どちらかといえば相手が隠そうとしたので逆に信憑性が高くなるという効果も狙っています。
この手法、ちょっと詐欺のような気もしますね。
まぁ最終的にライバル企業ほぼ全ての契約を取っていったということでしたから、結果的に全くの詐欺という訳ではないのでしょうが、これはやはり微妙ですね。
このように相手の「欲」や「不安」をうまく利用してクロージングをかけてしまうという方法も確かに効果があります。
効果はありますが、私的には好きな方法ではありません。
これはある意味詐欺に通じるテクニックだと感じるからです。
私の知り合いが羽根布団詐欺にあったことがあります。
道を歩いていたときに道を聞く振りをして止まった一台の車があったそうです。
15分後には彼はその30万もする羽根布団を買うために銀行でお金を下ろすと相手に伝えていたそうです。
冷静になって考えると騙されたことは明白なのですが、そのとき彼は「今買わないと損をする」「今しかこのチャンスはない」と何故か思い込んでしまったというのです。
これもうまく「欲」や「不安」という感情を利用されてしまった例ですね。
両方の事例とも、相手のことを好きになったり、ましてやファンになったりしている訳ではありません。それどころかまだ相手がどういった人物か何も分かっていないのです。
人間の心理を利用したこうした営業は、これほど酷くなくても多かれ少なかれあちこちで目に付きます。
例えばお店で洋服を買う場合に店員は決まって「よくお似合いですよ」と言いますよね。
以前に電機会社D社ののセールスマンと話していたとき、彼からある販売テクニックについて教えてもらいました。(これも飲んでいたときのことです・・・笑)
彼はメーカーから販売員としてよくあちこちの家電を販売している店舗に派遣されたそうです。もちろんライバル会社の社員もいます。
お客さんには一応所属しているメーカーの製品だけを強く勧めるということは表面上はないそうですが、やはり自社の製品を勧めたいものです。
彼はD社の社員だったのですが、彼が接客したお客さんはライバル会社E社の掃除機を買いに来ていました。彼は倉庫にお客さんの求めるライバル会社の掃除機の在庫を確認に行く振りをします。(在庫状況は全て頭に入っているにも関わらずです)
そうして倉庫から帰ってきてお客さんにこう言うそうです。
「E社の掃除機、在庫ありましたよ。でも色がね、真っ赤しかないんですよ。真っ赤っか!。D社のなら白がありましたよ、きれいな白が。それに性能は同じなのに値段も安いし」
もちろんお客さんはD社の掃除機をお買い上げ。
彼曰く、「本当はね、E社の掃除機、きれいな品のよい赤だったんだよね~」
彼はトップセールスマンだったそうです。
営業で心理テクニックを使ってうまく商品を売る営業マン、あなたならどのように感じますか?
お客さんが買った商品、契約したサービスをお客さんが最後まで気に入って使う場合は一概に詐欺商法とは言いにくいですね。
しかし、お客さんが気付いて悔しい、腹立たしい思いをする場合、そして法に抵触する場合にはこれは詐欺と呼ぶべき行為になるのでしょう。
テクニックはほどほどに、そして
『好意を持ってもらう ⇒ ファンになってもらう ⇒ その人のためなら役に立ちたいと思ってもらう』
というプロセスを私は大事にしていきたいと思います。
回りを幸せにし、感謝され、そしてビジネスが回る。
これに勝る幸せはないと思うからです。
アイキットソリューションズ
生島 大嗣
営業とクロージング シリーズ 最終回です。
このシリーズの第1回では、営業を行う場合には相手が
『好意を持ってもらう ⇒ ファンになってもらう ⇒ その人のためなら役に立ちたいと思ってもらう』
というプロセスを経て自分のファンになってもらうことが必要だと述べました。
更に第2回では、そのためには
『まず自分から相手を好きになること』
が相手に好きになってもらうのにとても重要であるということを事例を挙げて述べました。
このように営業でクロージングをかけるには、これまで説明した一番有効な方法である「自分のファンになってもらう」、「ファンを増やす」、「ファンが営業を買って出る」という状況を作り出すことが重要で、ここまで来て初めてクロージングのプロセスが有効になります。
しかし世の中面白いもので、このプロセスを経ずにクロージングができてしまう場合もあるのです。今回はこれについて述べてみます。
ある興味深い事例を取り上げましょう。
現在上場を果たしているある企業C社の創業期(80年代)の話です。
この企業の事業内容は新事業創造に関わるある種のコンサルティングです。
創業期のボードメンバーのひとりと飲んでいたときに彼が話していたことを取り上げましょう。彼は現在は独立しており、C社からは離れて別の企業の社長をしています。
C社の創業期、彼はあちこちの会社に提案書を持っていっていたのですが、まだまだ会社の知名度もなくビジネス自体もあまり認知度がないために提案はなかなかそのままでは受け入れてもらえなかったそうです。
そこで彼らは奇策を打ったのです。
訪問先の会社のライバル会社への提案書を作り、訪問先の企業で帰り際にわざとライバル企業の名前が見えるように机の上や床に落としたのです。
そうすると今まで興味を示さなかった訪問先の企業は、ライバル会社の名前が記された書類を一目見た瞬間に急に態度が変わり、あれこれと質問を始めたそうです。
C社の社員は、”しまった!” ” 困った!”というような表情をわざと作り、あまり答えたくないという態度で訪問先企業のライバル会社がC社と契約したことを仕方なくという態度を装いながら質問に答える形で伝えたのです。
もちろん、この提案書は”嘘”です。
わざと落としてみせるための小道具に過ぎません。
ここがミソだそうで、訪問先の企業人間は、C社が積極的にアピールしなかった、逆に隠そうとしたことで信憑性の高い重要な秘密を聞き出したと感じます。
情報の価値が格段と上がるように感じてしまうのです。
情報の価値は、内容が同じでもその状況によって大きく変わります。
相手が隠そうとしている情報の価値は大きくなります。
こういうこともあります。
電車の中や喫茶店である企業の株価が上がるというような話を誰かがしているのを漏れ聞いたとしましょう。この情報の価値も大きくなります。
つまり、利害の絡まない第三者から売り込みではなく、偶然もたらされた情報というのは信憑性が増すように感じ、聞き手にとっての価値は高くなるというのです。
さて、C社の社員はライバル企業を全て回りそこで同じようにライバル企業の名前の書いた提案書を落としてほぼ全ての企業から契約を取り付けたそうです。
人間の感情とは不安定なものです。
特に「欲」や「不安」によって支配されがちになります。
この事例では、「ライバル企業に出し抜かれるのではないか」、「ライバル企業が契約してのに我社は契約しなくて大丈夫なのか」というような不安を誘って有効に利用しています。
更に積極的に売り込んできた内容ではなく、どちらかといえば相手が隠そうとしたので逆に信憑性が高くなるという効果も狙っています。
この手法、ちょっと詐欺のような気もしますね。
まぁ最終的にライバル企業ほぼ全ての契約を取っていったということでしたから、結果的に全くの詐欺という訳ではないのでしょうが、これはやはり微妙ですね。
このように相手の「欲」や「不安」をうまく利用してクロージングをかけてしまうという方法も確かに効果があります。
効果はありますが、私的には好きな方法ではありません。
これはある意味詐欺に通じるテクニックだと感じるからです。
私の知り合いが羽根布団詐欺にあったことがあります。
道を歩いていたときに道を聞く振りをして止まった一台の車があったそうです。
15分後には彼はその30万もする羽根布団を買うために銀行でお金を下ろすと相手に伝えていたそうです。
冷静になって考えると騙されたことは明白なのですが、そのとき彼は「今買わないと損をする」「今しかこのチャンスはない」と何故か思い込んでしまったというのです。
これもうまく「欲」や「不安」という感情を利用されてしまった例ですね。
両方の事例とも、相手のことを好きになったり、ましてやファンになったりしている訳ではありません。それどころかまだ相手がどういった人物か何も分かっていないのです。
人間の心理を利用したこうした営業は、これほど酷くなくても多かれ少なかれあちこちで目に付きます。
例えばお店で洋服を買う場合に店員は決まって「よくお似合いですよ」と言いますよね。
以前に電機会社D社ののセールスマンと話していたとき、彼からある販売テクニックについて教えてもらいました。(これも飲んでいたときのことです・・・笑)
彼はメーカーから販売員としてよくあちこちの家電を販売している店舗に派遣されたそうです。もちろんライバル会社の社員もいます。
お客さんには一応所属しているメーカーの製品だけを強く勧めるということは表面上はないそうですが、やはり自社の製品を勧めたいものです。
彼はD社の社員だったのですが、彼が接客したお客さんはライバル会社E社の掃除機を買いに来ていました。彼は倉庫にお客さんの求めるライバル会社の掃除機の在庫を確認に行く振りをします。(在庫状況は全て頭に入っているにも関わらずです)
そうして倉庫から帰ってきてお客さんにこう言うそうです。
「E社の掃除機、在庫ありましたよ。でも色がね、真っ赤しかないんですよ。真っ赤っか!。D社のなら白がありましたよ、きれいな白が。それに性能は同じなのに値段も安いし」
もちろんお客さんはD社の掃除機をお買い上げ。
彼曰く、「本当はね、E社の掃除機、きれいな品のよい赤だったんだよね~」
彼はトップセールスマンだったそうです。
営業で心理テクニックを使ってうまく商品を売る営業マン、あなたならどのように感じますか?
お客さんが買った商品、契約したサービスをお客さんが最後まで気に入って使う場合は一概に詐欺商法とは言いにくいですね。
しかし、お客さんが気付いて悔しい、腹立たしい思いをする場合、そして法に抵触する場合にはこれは詐欺と呼ぶべき行為になるのでしょう。
テクニックはほどほどに、そして
『好意を持ってもらう ⇒ ファンになってもらう ⇒ その人のためなら役に立ちたいと思ってもらう』
というプロセスを私は大事にしていきたいと思います。
回りを幸せにし、感謝され、そしてビジネスが回る。
これに勝る幸せはないと思うからです。
アイキットソリューションズ
生島 大嗣
TrackBack(URL)
トラックバック
このエントリにトラックバックはありません
このトラックバックURLを使ってこの記事にトラックバックを送ることができます。(右クリックでショートカットのコピーをご利用ください)
もしあなたのブログがトラックバック送信に対応していない場合にはこちらのフォームからトラックバックを送信することができます。.
