動画ビジネス戦国時代(日経BP)
posted at 23:20:30 on 2007-04-27 kaz | Category: オンモード
日経BP社の技術経営メールにて私のコラム 「動画ビジネス戦国時代」 が配信されました。
このコラムは、日経ベンチャー 経営者倶楽部のHPにも「ベンチャー企業にしかできないこと」のタイトルで掲載されています。
今回は「動画」をキーワードに切り口を工夫しました。大企業の事例ではなくベンチャー企業を取り上げています。
以下、再掲します。
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■■動画ビジネス戦国時代■■
最近、動画を利用したビジネスが活発化している。いや、活発化というより、百花
繚乱の様相を呈している。毎日のように、「あるブログサービスが動画投稿サービス
を始めた」とか、「動画コンテンツの検索技術を開発した」という動画関連ニュース
が報じられている。
こうしたニュースを追っていくと、ビジネスモデルに関しては、発散思考を得意と
するベンチャーに注目すべきものがある。今回は、大手企業とのアライアンスの組み
方に工夫をみられるケースを二例紹介し、考察してみたい。
その前に、動画ビジネスについてざっとおさらいしてみよう。世の中に「マルチメ
ディアパソコン」なるものが出てきたのが1990年くらいだったと記憶している。しか
し、当時はインターネットに簡単につなぐ手段がなく、OS(基本ソフト)はまだキャ
ラクターベースのものが主流だった。この状況下、マルチメディアパソコンとは名ば
かりで、スタンドアローンのパソコンに新たなメディア(媒体)であるCD-ROMド
ライブを取り付けただけのマシンをそう呼んでいた。動画を扱う環境には程遠かった
のである。
当時私は電機メーカーに勤務しており、「ハードがどうこうではなく、色々なソフト
メディアを一つの通信インフラを通じて入手し、様々な機器で扱えるようになってこそ
マルチメディアではないか」と議論したことを覚えている。もっとも当時は、サービス
の可能性は予見できても、具体的に明確な姿がはっきり見えていた訳ではない。
当時から15年以上経ち、最近になってようやく環境が整ってきた。通信インフラ
はインターネットが主流になり、この上で文字やデータ、静止画、動画などの様々な
情報がやり取りされている。これらの情報を取り扱うパソコンをはじめとするハード
ウエアも充分なパフォーマンスを提供している。
アプリケーションにおいても様々なサービスが現実に始まった。アプリケーション
を含めて少し先の未来像が一般に予見可能となる程度にITの社会的な認知度が高まり
ITがらみの新ビジネスモデルが乱立した。こうした動きは2000年前後から顕著にな
ったと思う。これが、いわゆるITバブルが発生した一つの要因である。
ITバブルは、社会が新しいメディアをどう扱えばよいか、練習する時期であった
かも知れない。筆者の自宅に、ADSLサービスを使った常時接続の環境が整ったのが
2001年春である。このころは、携帯電話のパケット定額制などはまだまだ先の話で
あった。当時相次いで打ち出された様々なビジネスモデルが現実のものになるまでに
はもう少し時間がかかったのである。
今や、動画の圧縮技術は高まり、通信路は整備され、動画を撮影する機器もユーザ
ーが簡単に利用できるようになった。各種メモリーの容量は大きくなり、サーバーの
パフォーマンスも高まり、動画コンテンツを扱うための環境が急速に整備された。
こうなってくると、ビジネスのアイデアがマルチメディアの事業化の正否を分ける
要因になってくる。つまり、どのような動画コンテンツを、誰が、何のために、どの
ような機器とインフラを用いて、どう利用するかを描き、、収入源を考えるのである。
本来、ネットワーク機器のメーカーであるシスコなどもコンテンツのビジネスに参
入してきた。周知の通り、アップルは、iPodといった機器で動画を扱えるようにし
ているし、アップルTVなど、動画を扱う新しい機器は今後も増えていくだろう。パ
ソコンをはじめ、デジタルテレビやHDDレコーダーに親しんで来た日本の消費者も
動画サービスに興味を示し始めている。日本からユーチューブを利用する消費者が増
えているのもこの結果だろう。
しかし、このような状況に反して、無料の動画投稿以外のサービスは、私の見たとこ
ろあまりパッとしていない。動画サービスと言えば、膨大なコンテンツとノウハウを抱
える放送局がすぐ頭に浮かぶが、放送局の手がける動画配信サービスの伸びはそれほど
でもない。
そのような中で、動画サービスのビジネスモデルとして私が注目しているものを二つ
紹介する。一つは、携帯電話向け放送局として気を吐いているQlick.TV だ。Qlick.TV は
フロントメディアというベンチャー企業が運営しているが10代や20代前半の若者から
は圧倒的に支持されている。会員数は2007年3月15日現在で100万人、しかも急速に
その数を増やしている。
10代や20代前半の若者にとっては、最初に手にするデジタル機器はもはやパソコ
ンではなく携帯電話である。若者に親和性の高い携帯を用いた動画ビジネスが今後拡
大するということは簡単に予想できる。他の携帯ビジネスと同じく、最近のパケット
定額制が大きく寄与している。
Qlick.TVが面白いのは、独自のコンテンツと既存放送局のコンテンツをうまく組
み合わせている点だ。BBCやJNN、ディズニーといったコンテンツが視聴できる。
視聴者から料金をとらない広告モデルではあるものの、素人動画の投稿サイトとは一
線を画したサービスと言える。すでに、既存の大手広告代理店経由で広告収入を得て
いる点も注目に値する。つまり、携帯という新しいメディアを利用したビジネスだが
実際は既存の放送局と同様のモデルであり、これが逆に戦略的にユニークではないか
と思う。
動画を扱うベンチャー企業をもう一社紹介しよう。ポッドキャスティング受信用のク
ライアント/サーバー管理ソフト「アリゲーター」を提供しているボイスバンクである。
同社は先頃、三洋電機のザクティーというデジタルビデオカメラと、アリゲーターを組
み合わせるツールを発表した。
日本ではあまり知られていないが、ザクティーは、米国では動画を扱うブロガーに撮
影機器として絶大なな人気を博している。ザクティー対応アリゲーターの面白いところ
は、ザクティーをUSB経由でパソコンに接続すると、撮影した動画ファイルを自動
的にボイスバンクが提供するサーバーにアップロードしてくれる点だ。サーバー側で
は、アップロードされたファイルに自動的に、ファイル名を割り振り、元ファイルに加
え、必要に応じて解像度やファイル形式を変更したファイルも保存してくれる。
以上のサービスが自動的に行われる仕掛けを用意したのは、コンピュータリテラシー
がそれほどなくても、簡単に、しかもシームレスに動画を取り扱って、感動を共有しよ
う、という同社のポリシーからだという。
ボイスバンクは、電機メーカーの技術者がこれまで考えていなかった機器の使い方、
楽しみ方を具現化していると思う。今後は、ザクティー以外のデジタルビデオカメラ
への対応も期待できる。
以上、二社の例を紹介したが、既存企業ではなかなか出てこない新しい考え方に基
づく動画ビジネスが登場していることは間違いないと思う。フロントメディアは、新
しいメディアに既存メディア企業のビジネスモデルを適用しており、ボイスバンクは
既存メーカーの機器に今まで思いつかなかった新しいサービスを提供している。
これらは、ベンチャー企業から見ると、既存企業のステイクホルダーと如何にうま
くアライアンスを組んでいくかという問題をうまく解決した例と言える。既存企業側
から見ると、過去の成功体験に縛られないベンチャー企業の発散的思考をどのように
取り込んでいくかという問題に対処した例とみなせよう。今回取り上げた二つの例は
技術経営戦略の課題を解決するヒントを我々に与えてくれる。ベンチャー企業の発散
的思考による新しいソリューションを取り入れることは、これからのビジネスに欠か
せない要素だからだ。
生島 大嗣 (いくしま かずし)
アイキットソリューションズ代表
http://www.i-kit.jp/
大手電機メーカーで映像機器などの研究開発、情報システムに関する企画や開発に
取り組み、様々な経験を積んだ後、独立。既存企業、ベンチャーのビジネスモデルと
技術の評価、技術戦略と経営に関するコンサルティング、講演などに携わる。
現在は、イノベーション戦略プロデューサーとして活動中。
執筆しているコラムのバックナンバー
http://www.i-kit.jp/biz/category/blog/9
生島ブログ「日々雑感」
http://www.i-kit.jp/biz/category/blog/7
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アイキット ソリューションズ
生島大嗣
このコラムは、日経ベンチャー 経営者倶楽部のHPにも「ベンチャー企業にしかできないこと」のタイトルで掲載されています。
今回は「動画」をキーワードに切り口を工夫しました。大企業の事例ではなくベンチャー企業を取り上げています。
以下、再掲します。
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■■動画ビジネス戦国時代■■
最近、動画を利用したビジネスが活発化している。いや、活発化というより、百花
繚乱の様相を呈している。毎日のように、「あるブログサービスが動画投稿サービス
を始めた」とか、「動画コンテンツの検索技術を開発した」という動画関連ニュース
が報じられている。
こうしたニュースを追っていくと、ビジネスモデルに関しては、発散思考を得意と
するベンチャーに注目すべきものがある。今回は、大手企業とのアライアンスの組み
方に工夫をみられるケースを二例紹介し、考察してみたい。
その前に、動画ビジネスについてざっとおさらいしてみよう。世の中に「マルチメ
ディアパソコン」なるものが出てきたのが1990年くらいだったと記憶している。しか
し、当時はインターネットに簡単につなぐ手段がなく、OS(基本ソフト)はまだキャ
ラクターベースのものが主流だった。この状況下、マルチメディアパソコンとは名ば
かりで、スタンドアローンのパソコンに新たなメディア(媒体)であるCD-ROMド
ライブを取り付けただけのマシンをそう呼んでいた。動画を扱う環境には程遠かった
のである。
当時私は電機メーカーに勤務しており、「ハードがどうこうではなく、色々なソフト
メディアを一つの通信インフラを通じて入手し、様々な機器で扱えるようになってこそ
マルチメディアではないか」と議論したことを覚えている。もっとも当時は、サービス
の可能性は予見できても、具体的に明確な姿がはっきり見えていた訳ではない。
当時から15年以上経ち、最近になってようやく環境が整ってきた。通信インフラ
はインターネットが主流になり、この上で文字やデータ、静止画、動画などの様々な
情報がやり取りされている。これらの情報を取り扱うパソコンをはじめとするハード
ウエアも充分なパフォーマンスを提供している。
アプリケーションにおいても様々なサービスが現実に始まった。アプリケーション
を含めて少し先の未来像が一般に予見可能となる程度にITの社会的な認知度が高まり
ITがらみの新ビジネスモデルが乱立した。こうした動きは2000年前後から顕著にな
ったと思う。これが、いわゆるITバブルが発生した一つの要因である。
ITバブルは、社会が新しいメディアをどう扱えばよいか、練習する時期であった
かも知れない。筆者の自宅に、ADSLサービスを使った常時接続の環境が整ったのが
2001年春である。このころは、携帯電話のパケット定額制などはまだまだ先の話で
あった。当時相次いで打ち出された様々なビジネスモデルが現実のものになるまでに
はもう少し時間がかかったのである。
今や、動画の圧縮技術は高まり、通信路は整備され、動画を撮影する機器もユーザ
ーが簡単に利用できるようになった。各種メモリーの容量は大きくなり、サーバーの
パフォーマンスも高まり、動画コンテンツを扱うための環境が急速に整備された。
こうなってくると、ビジネスのアイデアがマルチメディアの事業化の正否を分ける
要因になってくる。つまり、どのような動画コンテンツを、誰が、何のために、どの
ような機器とインフラを用いて、どう利用するかを描き、、収入源を考えるのである。
本来、ネットワーク機器のメーカーであるシスコなどもコンテンツのビジネスに参
入してきた。周知の通り、アップルは、iPodといった機器で動画を扱えるようにし
ているし、アップルTVなど、動画を扱う新しい機器は今後も増えていくだろう。パ
ソコンをはじめ、デジタルテレビやHDDレコーダーに親しんで来た日本の消費者も
動画サービスに興味を示し始めている。日本からユーチューブを利用する消費者が増
えているのもこの結果だろう。
しかし、このような状況に反して、無料の動画投稿以外のサービスは、私の見たとこ
ろあまりパッとしていない。動画サービスと言えば、膨大なコンテンツとノウハウを抱
える放送局がすぐ頭に浮かぶが、放送局の手がける動画配信サービスの伸びはそれほど
でもない。
そのような中で、動画サービスのビジネスモデルとして私が注目しているものを二つ
紹介する。一つは、携帯電話向け放送局として気を吐いているQlick.TV だ。Qlick.TV は
フロントメディアというベンチャー企業が運営しているが10代や20代前半の若者から
は圧倒的に支持されている。会員数は2007年3月15日現在で100万人、しかも急速に
その数を増やしている。
10代や20代前半の若者にとっては、最初に手にするデジタル機器はもはやパソコ
ンではなく携帯電話である。若者に親和性の高い携帯を用いた動画ビジネスが今後拡
大するということは簡単に予想できる。他の携帯ビジネスと同じく、最近のパケット
定額制が大きく寄与している。
Qlick.TVが面白いのは、独自のコンテンツと既存放送局のコンテンツをうまく組
み合わせている点だ。BBCやJNN、ディズニーといったコンテンツが視聴できる。
視聴者から料金をとらない広告モデルではあるものの、素人動画の投稿サイトとは一
線を画したサービスと言える。すでに、既存の大手広告代理店経由で広告収入を得て
いる点も注目に値する。つまり、携帯という新しいメディアを利用したビジネスだが
実際は既存の放送局と同様のモデルであり、これが逆に戦略的にユニークではないか
と思う。
動画を扱うベンチャー企業をもう一社紹介しよう。ポッドキャスティング受信用のク
ライアント/サーバー管理ソフト「アリゲーター」を提供しているボイスバンクである。
同社は先頃、三洋電機のザクティーというデジタルビデオカメラと、アリゲーターを組
み合わせるツールを発表した。
日本ではあまり知られていないが、ザクティーは、米国では動画を扱うブロガーに撮
影機器として絶大なな人気を博している。ザクティー対応アリゲーターの面白いところ
は、ザクティーをUSB経由でパソコンに接続すると、撮影した動画ファイルを自動
的にボイスバンクが提供するサーバーにアップロードしてくれる点だ。サーバー側で
は、アップロードされたファイルに自動的に、ファイル名を割り振り、元ファイルに加
え、必要に応じて解像度やファイル形式を変更したファイルも保存してくれる。
以上のサービスが自動的に行われる仕掛けを用意したのは、コンピュータリテラシー
がそれほどなくても、簡単に、しかもシームレスに動画を取り扱って、感動を共有しよ
う、という同社のポリシーからだという。
ボイスバンクは、電機メーカーの技術者がこれまで考えていなかった機器の使い方、
楽しみ方を具現化していると思う。今後は、ザクティー以外のデジタルビデオカメラ
への対応も期待できる。
以上、二社の例を紹介したが、既存企業ではなかなか出てこない新しい考え方に基
づく動画ビジネスが登場していることは間違いないと思う。フロントメディアは、新
しいメディアに既存メディア企業のビジネスモデルを適用しており、ボイスバンクは
既存メーカーの機器に今まで思いつかなかった新しいサービスを提供している。
これらは、ベンチャー企業から見ると、既存企業のステイクホルダーと如何にうま
くアライアンスを組んでいくかという問題をうまく解決した例と言える。既存企業側
から見ると、過去の成功体験に縛られないベンチャー企業の発散的思考をどのように
取り込んでいくかという問題に対処した例とみなせよう。今回取り上げた二つの例は
技術経営戦略の課題を解決するヒントを我々に与えてくれる。ベンチャー企業の発散
的思考による新しいソリューションを取り入れることは、これからのビジネスに欠か
せない要素だからだ。
生島 大嗣 (いくしま かずし)
アイキットソリューションズ代表
http://www.i-kit.jp/
大手電機メーカーで映像機器などの研究開発、情報システムに関する企画や開発に
取り組み、様々な経験を積んだ後、独立。既存企業、ベンチャーのビジネスモデルと
技術の評価、技術戦略と経営に関するコンサルティング、講演などに携わる。
現在は、イノベーション戦略プロデューサーとして活動中。
執筆しているコラムのバックナンバー
http://www.i-kit.jp/biz/category/blog/9
生島ブログ「日々雑感」
http://www.i-kit.jp/biz/category/blog/7
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生島大嗣
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咲本 wrote:
弊社を取り上げていただき、おおきにです。
生島大嗣 wrote:
咲本さん
こちらこそ、インタビューに快く応じていただきおおきにです。
(この記事は5/1に日経BPトップページで必読記事の筆頭に取り上げられました)