正常性バイアスの罠(大商ニュース)
posted at 21:21:16 on 2007-04-08 kaz | Category: オンモード
少し前になりますが、大阪商工会議所が発行する大商ニュース(3月25日)に私のコラムが掲載されました。
「中小企業成長の秘密」と題して三ツ松新氏と執筆を分担していています。
(全5回、私は4回と5回を担当)
以下に再掲します。
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「中小企業成長の秘密」 第5回
■■正常性バイアスの罠■■
【脳の特性を知る】
組織の意思決定と行動は、組織を構成する人のそれに支配されている。更に人の
意思決定と行動は「脳」という情報処理システムにより支配されている。 脳は狡
猾であり、本人の意識の及ばないところでその人のあらゆる行動を左右する。即ち、
この情報システムの特性を理解することは、組織の行動を理解するひとつの大きな
助けになる。
人は自由意志に基づき、情報や環境の変化を自分の経験や知識に照らし合わせて
検討し、論理的に決定を下していると思っている。しかし、果たしてそうなのだろ
うか?
人間は論理的に判断していると思い込んでいるだけで、実はその決定は感情に大
きく影響を受けているのだ。いや、支配されていると言っても過言ではない。自分
では論理的に考え、冷静に判断しているつもりでも、その決定は本人の気付かない
ところで感情的に決められていることを認識しておく必要がある。
大きな決断でも感情が介入し、後付けでいろいろと言い訳を考え、「自分は感情
的に決定したのではない、論理的に冷静に決断を下したのだ」と思うのである。
感情が悪いというのではない。適切な決断には感情は不可欠だ。例えば、前頭全
野の一部(腹内側前頭皮質)を脳腫瘍で切除した患者は、買い物という単純な行為で
も何一つ決定ができなくなってしまったという報告がある。この部位は、無意識下
の直感的な意思決定に大きく関わっているそうだ。
このように、人は感情により大きく影響される脳という情報システムに支配され
て生きているわけだが、ときにそれが悪影響を与える場合がある。自分に都合のよ
いように情報を歪曲して勝手に納得してしまうのだ。
過去の成功体験にしがみつき、新しい時代を読めなくなるのもそのひとつであろ
うが、ここではもっと具体的な例を示しておこうと思う。
【バイアスを意識する】
災害時に「正常性バイアス」という現象が起きて避難等が遅れることあると指摘
されている。人間は非常事態では、ひとりでいるときより複数でいる場合の方が圧
倒的に逃げるという行動が遅くなるという現象があるのだ。
ひとりでいると、異変に気付いた場合に不安になりすぐ行動するのだが、複数で
いると互いの行動を観察して、「あの人が平然としているからまだ大丈夫だ」とい
うように正常だと思い込もうとする力が働くという。自分だけ大騒ぎするのは格好
悪いというように考えるのかも知れない。異常を正常と思い込もうとするバイアス
が働くのである。
災害時だけでなく、この心理は日常のシーンでも働いている。ビジネスのシーン
などで、「自分は少々不安に思っているが、誰も問題にしていないから自分から言
い出すのはやめよう」とせっかく問題点に気が付いていながらそれを見過ごすとい
うことがないだろうか。
例えば、先輩が提案した企画に問題があると思っているが、上司も承認しそうだ
し、問題点を指摘したら波風が立つとか、問題の解決を自分が背負わされることに
なるという理由で敢えて問題提起をしないということがないだろうか。
もっと単純に、単に誰も言い出さないのでそれで正しいのかも知れない、もし自
分が言い出して間違っていたら格好悪いから言わないでおこうという理由からかも
知れない。ところが、往々にして「あのときに言っておけばよかった」という結果
になりかねない。
これも、人間が脳という情報処理システムのひとつの特性の罠に陥っている結果
である。もう一度自分の決定を冷静に見つめ、この脳の仕組んだ罠に嵌っていない
かを考えてみてもよいのではないか。
いくしま・かずし
大手電機メーカーで映像機器などの研究開発、情報システムに関する企画や開発に取
り組み、様々な経験を積んだ後、独立。
既存企業、ベンチャーのビジネスモデルと技術の評価、技術戦略と経営に関する
コンサルティング、講演などに携わる。現在は、イノベーション戦略プロデューサー
として活動中。
http://www.i-kit.jp/
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アイキット ソリューションズ
生島大嗣
「中小企業成長の秘密」と題して三ツ松新氏と執筆を分担していています。
(全5回、私は4回と5回を担当)
以下に再掲します。
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「中小企業成長の秘密」 第5回
■■正常性バイアスの罠■■
【脳の特性を知る】
組織の意思決定と行動は、組織を構成する人のそれに支配されている。更に人の
意思決定と行動は「脳」という情報処理システムにより支配されている。 脳は狡
猾であり、本人の意識の及ばないところでその人のあらゆる行動を左右する。即ち、
この情報システムの特性を理解することは、組織の行動を理解するひとつの大きな
助けになる。
人は自由意志に基づき、情報や環境の変化を自分の経験や知識に照らし合わせて
検討し、論理的に決定を下していると思っている。しかし、果たしてそうなのだろ
うか?
人間は論理的に判断していると思い込んでいるだけで、実はその決定は感情に大
きく影響を受けているのだ。いや、支配されていると言っても過言ではない。自分
では論理的に考え、冷静に判断しているつもりでも、その決定は本人の気付かない
ところで感情的に決められていることを認識しておく必要がある。
大きな決断でも感情が介入し、後付けでいろいろと言い訳を考え、「自分は感情
的に決定したのではない、論理的に冷静に決断を下したのだ」と思うのである。
感情が悪いというのではない。適切な決断には感情は不可欠だ。例えば、前頭全
野の一部(腹内側前頭皮質)を脳腫瘍で切除した患者は、買い物という単純な行為で
も何一つ決定ができなくなってしまったという報告がある。この部位は、無意識下
の直感的な意思決定に大きく関わっているそうだ。
このように、人は感情により大きく影響される脳という情報システムに支配され
て生きているわけだが、ときにそれが悪影響を与える場合がある。自分に都合のよ
いように情報を歪曲して勝手に納得してしまうのだ。
過去の成功体験にしがみつき、新しい時代を読めなくなるのもそのひとつであろ
うが、ここではもっと具体的な例を示しておこうと思う。
【バイアスを意識する】
災害時に「正常性バイアス」という現象が起きて避難等が遅れることあると指摘
されている。人間は非常事態では、ひとりでいるときより複数でいる場合の方が圧
倒的に逃げるという行動が遅くなるという現象があるのだ。
ひとりでいると、異変に気付いた場合に不安になりすぐ行動するのだが、複数で
いると互いの行動を観察して、「あの人が平然としているからまだ大丈夫だ」とい
うように正常だと思い込もうとする力が働くという。自分だけ大騒ぎするのは格好
悪いというように考えるのかも知れない。異常を正常と思い込もうとするバイアス
が働くのである。
災害時だけでなく、この心理は日常のシーンでも働いている。ビジネスのシーン
などで、「自分は少々不安に思っているが、誰も問題にしていないから自分から言
い出すのはやめよう」とせっかく問題点に気が付いていながらそれを見過ごすとい
うことがないだろうか。
例えば、先輩が提案した企画に問題があると思っているが、上司も承認しそうだ
し、問題点を指摘したら波風が立つとか、問題の解決を自分が背負わされることに
なるという理由で敢えて問題提起をしないということがないだろうか。
もっと単純に、単に誰も言い出さないのでそれで正しいのかも知れない、もし自
分が言い出して間違っていたら格好悪いから言わないでおこうという理由からかも
知れない。ところが、往々にして「あのときに言っておけばよかった」という結果
になりかねない。
これも、人間が脳という情報処理システムのひとつの特性の罠に陥っている結果
である。もう一度自分の決定を冷静に見つめ、この脳の仕組んだ罠に嵌っていない
かを考えてみてもよいのではないか。
いくしま・かずし
大手電機メーカーで映像機器などの研究開発、情報システムに関する企画や開発に取
り組み、様々な経験を積んだ後、独立。
既存企業、ベンチャーのビジネスモデルと技術の評価、技術戦略と経営に関する
コンサルティング、講演などに携わる。現在は、イノベーション戦略プロデューサー
として活動中。
http://www.i-kit.jp/
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アイキット ソリューションズ
生島大嗣
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