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メー ルマガジン コラム バックナンバー

  アイキット代表  生島 大嗣 がコラムを執筆しているメールマガジンのバックナンバーです。


 
1. 「技術の経営 − 顧客志向だけでは勝てない」 

      ◆ 技術戦略思考の実現 ◆


2004年12 月8 日

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 技術の経営−顧客志向だけでは勝てない−          1876 部発行
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■       ◆ 技術戦略思考の実現   第16回 ◆
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■■         「社会の公器たる企業 〜 脱個人経営で組織運営を目指す」
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■■■          アイキット <技術戦略マーケティング> 代表 生島 大嗣
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前回の私のコラム「脱下請け時代の製品開発力」
http://www.i-kit.jp/biz/gikei/gikei15.html
に対しても読者の方から何通かのメールを頂いています。
ご意見頂きありがとうございます。
今回は、頂いたメール1通について、その一部をご紹介します。

-----------------------------------ここから---------------------------------
「常にマーケットを意識して、技術を利益に変えていく仕組みこそが大切になってき
ます。そして、この仕組みがあって初めて技術がマーケティングをドライブできるの
です。」
この主張に賛同致します。更に、下請け企業だけではなく、多くの日本の大手企業に
も当てはまる課題であると考えます。
                             ・・・一部省略・・・
今後は何を作っていくのか 「What To Make」が重要になってくるなかで、「技術投
資の費用対効果をどのように最大化していくのか」という点、つまり、技術を利益に
変えていく仕組みが重要になると私も考えます。
-----------------------------------ここまで---------------------------------

ご指摘にあるように、この問題は大企業にも当てはまる大切な問題だと考えています。
この読者の方のご指摘は、「技術を利益に変えていく仕組み」に対して、何を作れば
よいか、即ちマーケティングの側面に対して焦点を当てられておられます。

この問題も、私が何度も申し上げている通り、これからの企業が意識して変えていか
ないといけない重要なポイントです。

これと同時に、私が前回取り上げたO社の事例には、前回の好川氏のコラムで言及さ
れていた「開発マネジメントとプロジェクトマネジメント」の問題が含まれています。
実は、O社にはこの両方が欠如していました。

では、何故これが欠如していたのでしょうか。
切り口を変えてO社の事例を考えてみます。



▼ マネジメントを導入する基盤作り

前回の話は、部門を横断した企画会議や、決定事項のトップによるオーソライズの仕
組み、企画書の作成の部分と、更にこれを実行に移すための製品開発計画の作成、こ
れに基づいて作られた製品の仕様書、そしてこれらを実行に移すためのスケジュール
の作成の部分に大別できます。
もちろん、それぞれをルール化して動かす仕組みも導入しています。

前半の部分が「プロジェクトマネジメント」に、後半の部分が「開発マネジメント」
に相当すると考えます。

実は、前回の話にはもうひとつの問題が含まれているのです。
それは、大企業より中小零細企業で多く見られる問題です。

もうお分かりでしょうか。
個人経営企業に特有の問題です。
O社の抱える問題は、表面的には下請け体質からの脱却ですが、もうひとつ重層的に
抱える問題があります。
それはO社が「組織運営されていない」という重要な問題なのです。

長年に渡り下請けを行っていたために、親会社に言われたものを作ればよいという体
質は、自律的に物事を判断し、方向性を決めて進めるといった、自立した、そして自
律的に動く組織、個人を育成するといったことを自然と阻害してきました。

もちろん言われたこと、主に仕様を満たし納期までに間に合わせ、コストも合わせる
だけの技術力はO社にはあったのは確かですが。

更にO社の場合は、個性的で発言力、行動力共に優れたトップの存在がありました。
この存在も、O社の組織、社員が自立して自律的に動くことに関しては、残念ながら
マイナス要因として作用していたのです。



▼ マネジメントが機能する組織作り

人間は、自立しなさい、自律的に動きなさいと言われても、急にそう動けるものでは
ありません。

以前のコラム、第5回「覚悟はできていますか?」
http://www.i-kit.jp/biz/gikei/gikei05.html
で、このように書いていたのを覚えておられるでしょうか?

-----------------------------------ここから---------------------------------
組織のトップが変わりなさいと指示し、社員も変わろうと思っている場合でも、今ま
で「やらされる」「指示を待つ」「してもらう」「そして陰で不満を言う」ことに慣
らされていた社員にとっては、具体的な指示がトップから出てこないと下はどう動い
てよいか最初は分からないものです。

しかし、実はトップも具体的にどう指示してよいか経験がないので分かっていない場
合が多いのです。最初は社員にはこのことすら理解できないことが多いのです。
ある中堅企業では、実はトップも具体策を持っていないことが社員に理解できたこと
から、改革、変化が始まりました。
-----------------------------------ここまで---------------------------------

この会社では、社長が常々「自分で考えろ」と言っていましたが、社員はまったく動
きませんでした。この会社も長年社長がワンマン経営を続けていたのです。

変わるきっかけは、社長も実はどう動いてよいのか分からないのだということが、あ
るとき幹部社員に分かったことでした。
更に、社長の言葉を徹底させようと頑張ってこられたナンバー2の引退も契機になり
ました。

このナンバー2の方は、会議ではほとんどひとりで発言していました。
ご自分では悪気はまったくなかったのですが、社員に自立しなさいと言いながら、自
らそれを阻害してしまっていたのです。

さて、私がO社の場合に取った方法は、企画会議、企画書を作成する仕組みと製品を
生み出すための製品仕様書やスケジュールの作成というプロセスを導入することでし
た。それも実際に企画、開発を進めている製品に対してこの作業を後付けで行いまし
た。

その過程で、いろいろな問題が噴出してきました。
社長に対する要求、部下に対する要求が出てくる反面、出てこない企画書、計画書、
スケジュール、他社製品との比較表、等の類。
営業等の他部署との整合の問題。
情報収集力の問題。
etc.

掛け声だけではうまくいかないのは目に見えている状況でした。だからこそ、実際の
プロセスに落とし込むことで、ひとつひとつ問題を解決していきました。
重要なのは、問題を認識し、解決するプロセスを自ら考えることです。
O社の場合は、実際の業務に落とし込むことで、ある意味練習をして頂いたのです。



▼ 組織運営を目指す

企業としては、もちろんいろいろな形態があって当然です。
個人経営による特色のある会社も多く存在しています。
社長を初めキーマンの力で動いている会社も多くあります。
家族的な経営がうまくいっている会社もあるのです。

しかし、キーマンが把握できる社員の数には限りがあります。
ある程度組織が大きくなると、社員全員を把握できなくなるのは当然です。
更に、意思決定や情報の共有、伝達の阻害要因になってきます。
これが行動スピードと方針の整合性に悪い影響を与え始めます。

それでも企業が、外に向かって大きく成長している過程にある場合は、なかなか問題
は表面には出てきません。しかし、企業が成熟している場合や緩やかな衰退過程にあ
る場合には問題が顕著に現れてくることが多いのです。

また、企業が成長のフェーズにある場合でも、その企業が株式公開を考えているとき
には個人経営では問題があります。

このように企業が個人経営から組織経営に脱皮しないといけない局面はいろいろとあ
るのです。


余談ですが、ときおり会社に伺うと上履きに履き替えるように促されるところがあり
ます。このことは、会社の建物を大切にしていることの現われであり、これはこれで
よいことなのでしょう。

ところがあるコンサルタントの方は、「いろいろな会社を見てきたが、上履きに履き
替える会社はあまり成長しない」と仰っていました。
最近この意味をよく考えるのですが、この話にも一理あると考えています。

上履きに履き替えるということは、その会社を訪問する方に結果的にある程度の不便
を強要することになってしまいます。
もちろん建物を大切にしようとする姿勢は否定しませんし、特に家族経営の会社では
一概に悪いことではないと思います。

しかし企業が程度成長を目指し、ある程度の規模になると、会社は個人の所有物とい
うよりも社会性の側面が大きく出てくるのではないでしょうか。



▼ それぞれの企業に合った方法がある

懇意にして頂いている監査法人の方が仰っておられましたが、ある個人経営の中堅企
業に組織運営の導入を図り、それが定着するのに10年必要だったそうです。

個人企業が社会の公器たる企業に成長するには、いろいろな考え方の改革が必要にな
ってきます。個人経営から組織経営への道程は、決して簡単なものではないのです。


また、友人のWebマーケティングコンサルタントの話なのですが、彼は顧客である
企業のHPの作り直しに当たっては、最初はWebの話はほとんどしないそうです。

Webはその企業の組織を映す鏡であり、組織がうまく機能していないとHPも機能
しないという考えから、まずはその会社の組織改革から手掛けるというのです。

彼は、ある顧客企業の各拠点のキーマンを本社に集めて頂き、その会社の「100年
変わらない基本理念」をまず考えさせるのです。ほとんどの企業では、社員はそのよ
うなことは初めて言われ、経験することであり、最初の間は社員からは何も出てこな
いそうです。つまり、「考える」ということから始めているのです。


いつも申し上げている通り、企業は千差万別です。

その会社その会社で、環境・条件はまったく違ってきます。ある会社で成功した方法
が、そのまま他の会社で通用する訳ではありません。
その会社に合った、最もよい方策を探っていくことが重要なのです。

前回の話と同様、大企業でも同じ問題を抱えているかも知れません。
まずは考える始めることから、企業の組織運営は現実のものになってくるのです。



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