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メー ルマガジン コラム バックナンバー |
| アイキット代表 生島 大嗣 がコラムを執筆しているメールマガジンのバックナンバーです。 |
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1. 「技術の経営 − 顧客志向だけでは勝てない」 |
| ◆ 技術戦略思考の実現 ◆ |
| 2004年 9月 15日 |
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| ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 技術の経営−顧客志向だけでは勝てない− 1896 部発行 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ ■ ◆ 技術戦略思考の実現 第14回 ◆ ■■ ■■ 「マーケティングをドライブする技術」 ■■■ ■■■ アイキット <技術戦略マーケティング> 代表 生島 大嗣 ■■■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 今回は、コンシューマ向けの製品に関するお話です。 私は、技術経営の2本柱として、技術戦略と人・組織の問題があるといつも申し上げ てきました。 http://www.i-kit.jp/biz/gikei/gikei05.html 今回の議論は、その2本柱のひとつである戦略に関するものです。 今回取り上げるのは、類似の「深層」の技術を用いたコンシューマ向け製品に関する アメリカでの話なのですが、同様の技術を使った、同様の製品を作る二つの会社の製 品には大きな売れ行きの違いが生じています。 ビジネスを組み立てるコンセプトが大きく異なるこれら二つの会社について、特に戦 略の違いに着目して考えてみたいと思います。 ▼ 市場創出型製品であるHDDプレーヤ 今回取り上げる製品は、最近話題になってきている「小型ハードドライブ内臓のオー ディオプレーヤ」です。(以下、HDDプレーヤと略す) これらの製品を持ついろ いろな企業の中で、今回は対照的な海外のメーカーである Creative Technology Ltd. とApple Computer に注目します。 一時、「シリコンオーディオ」という製品話題になりました。こちらは、フラッシュ メモリを内蔵するタイプのものですが、安くなったといえまだまだフラッシュメモリ は高価であり、まだまだ128KBや256KBというオーダーの容量に限られてい ました。 しかし、フラッシュメモリの代わりに小型ハードディスク(HDD)を用いることに より携帯オーディオ機器はメモリ容量を圧倒的に増やすことができるようになってき ました。HDDの容量によっては、個人の持つ全ての音楽アルバムを携帯用のHDD プレーヤで持ち運ぶことが可能となったのです。 このような製品を持つメーカーとしては、SONY、東芝を初めとする日本企業や今 回取り上げるシンガポールの Creative Technology やアメリカの Apple 等がありま す。日本では情報家電やデジタル家電という製品群に分類され、日本の家電メーカー が力を入れている分野でもあります。 ところが、単価が安いためか、まだまだ一般に周知されていないのか、家電としては フラットパネルを用いたTVやHDD内臓DVDレコーダに比べて、一般的にはかな り話題性、注目度が低いというのが現実ではないでしょうか。 これはひょっとすると、ほとんど日本でしか発売されていないMDプレーヤが製品と して投入され、広く認知されていることも原因かもしれません。 携帯用のHDDプレーヤは、従来のカセットやCD、MDを用いた携帯用プレーヤと は、明らかに一線を画したものであると考えています。その理由は、技術的にはこの 製品が従来のノウハウを持った家電メーカーにしか作ることが難しい製品ではないと いうことです。 昨今よく耳にする、「情報家電」「デジタル家電」という製品群は、家電メーカーで なくても、技術的にはコンピュータ関連製品を扱うメーカーには製造可能だというこ となのです。例えば、HPやDELL等は液晶ディスプレイを用いたTVを製品に加 えてきています。シリコンオーディオやHDDプレーヤも日本の有名メーカー以外の 企業やアジアの企業が多く参入しています。 日本メーカーは、技術だけではなく長年家電を作り続けてきたノウハウを武器にこれ らを迎え撃とうとしています。 家電のプレーヤが増えることは、消費者にとっては選択肢が増えていることを意味し ますが、同時に今までにない新たなデジタル技術を使った製品が市場に投入されにつ れ、家電製品には新たな勢力図が描かれようとしているのです。 情報家電、デジタル家電は、新たな市場を創造しつつあるのです。 ▼ 創造型ビジネスを選択したApple Creative Technology は、携帯用のMP3プレーヤを2000年の初頭にリリースし ていましたが、Apple がこの分野にiPod で参入したのは、それから2年近く遅れて いました。 しかしながら、Creative Technology のシェアは2001年に31%あったのが、昨 年には17%落ちています。(調査会社IDCによる)それに比べて、iPod の市場シェ アは54%に達しています。 どうしてこの分野では後発の Apple が、先発の Creative Technology を追い越して 大きなシェアを取れたのでしょうか。 大きな原因のひとつに、マーケティングの違いがあります。 どちらの企業も、従来はPCに関係している企業だというところは同じです。 Appleは、iMac を主力としてきたPCメーカーですし、Creative Technology は、ど のPCにも入っているオーディオボードのサウンドブラスターで有名なPC周辺機器 企業です。 ところが、この両社が作ったHDDプレーヤの販売の方法が大きく異なるのです。 Appleのマーケティングは、従来の自社のコンピュータ製品とも異なっています。 国によって異なりますが、主なショッピング地区にファンキーなポスターを貼りまく ったり、映画館で粋な広告電撃戦を繰り広げたりもしました。 日本でも、最近はテレビでiPod の派手なCMがよく流れています。 また Apple は、アメリカにApple Store という直営店を展開しており、日本でも Apple Store, Ginza を初め主要都市で展開を開始しています。 http://www.apple.com/jp/retail/ginza/ 私はカルフォルニアにある Apple Store に立ち寄ったことがありますが、Apple ら しくクールなイメージのデザインで統一された店に、iPod も多く展示されていまし た。5色のカラーが目立つ発売されたばかりの iPod mini に人だかりができていた のが印象的でした。 これらから、Apple は、従来のコンピュータの顧客層に訴えるのではなく、新たなユ ーザ層を開拓しようとしているのは明らかです。 Apple は、コンピュータメーカーでしたが、コンピュータ以外の製品に進出するに当 たり、その製品の持つ力をうまく捉え、従来のコンピュータとは異なった売り方を今 までの自社の顧客層とは異なった新たな顧客層に展開しようとしているようです。 また、iPod は、いわゆるMP3プレーヤですが、CDからのリッピング以外にも楽 曲を入手する手段が提供されています。 iTunes という楽曲の管理とiPod への楽曲のダウンロードソフトには、ネット上での 楽曲の流通をサポートする機能があります。このiTunes が高く評価されているので す。もちろん、課金とライセンス管理機能が備わっています。アメリカでは、楽曲 の購入方法が変わり始めているようです。 余談ですが、最近日本で多くなってきたプロテクト付きのCDは、アメリカでは消費 者にあまり受け入れられず、その割合は日本ほど増えていません。どうやら消費者の マインドが随分異なるようです。この辺りは、ビジネスにも少なからず影響を与えて いるでしょう。 このように、Apple は、音楽を聴く、入手するという新しい手段を消費者に総合的に 提供し始めています。そして、そのマーケティング方法は、従来のコンピュータ製品 とは異なった新しい製品にうまく合った方法を取ろうとしているのです。 更に、新しい製品の流通経路までも作り出そうとしています。 Appleは、会社のブランド全体を俯瞰したブランディング手法を開発し、新製品のブ ランドをこれにうまく組み合わせようとしているようです。新しい製品は新しい顧客 層に訴え、新機能を持つ製品の市場を新たに創造し、会社のブランドにうまく取り込 もうとしているのです。 このことから、Apple は新しいビジネスを自ら創造しようとしていると思えるのです。 ▼ 従来構造に依存したCreative Technology これに比べて、Creative Technology は、携帯オーディオ機器を従来から得意として いたPC周辺機器と捉え、これらと同じ販売方法で売ろうとしていました。 販売チャンネル、広告宣伝媒体も従来のPC周辺機器と同じものでした。新商品の性 質に合った新しいマーケティングをほとんど考えていなかったのです。 新しい顧客に訴え、新しい販売経路を開拓することのできた新製品を、更に新しい文 化までを創造できる可能性を持った新製品を従来の自社の製品カテゴリで理解して販 売していたのです。 アジアには、製品と価格をアピールすることが最も重要であると考えている企業の幹 部が多いようです。そして、アジアの企業の特徴として多く見られるものに、ローコ スト製造は得意なのですが、ブランディングやマーケティングに弱いというものがあ るのです。 Creative Technology も、PCの専門誌向けに宣伝を行い、その広告は Creative Technology の社内で制作しており、伝統的にブランド全体よりも特定の製品を売り 込んできたのです。 Creative Technology の携帯オーディ機器の製品としての機能や性能は、iPod にひ けを取るものではありません。むしろこちらの方が充実しているかも知れません。 Creative Technology のHDDプレーヤはPCファンの間では人気があるのは確かな のです。 しかし Creative Technology は、ブランディングではなく製品単体のマーケティン グしか考えておらず、それもという一般消費者をターゲットとすべき音楽関連商品を PC周辺機器として捉え、従来からの自社の顧客層に売ろうとしていたのです。 しかし、ここにきてとうとう Creative Technology は自社ブランドのマーケティン グを考え始めたようです。最近、CEOのSim Wong Hoo氏は最大の課題はマーケティン グであると言い出しています。 しかし彼は、成功することが明らかでなければ費用をかけたくないとも言っており、 最終的にシェアを大幅に落としたのは、マーケティング予算がまだ充分でなく、かつ トータルなブランディング戦略もうまく機能しなかったことが原因であると考えられ るのです。 ▼ 明確になった戦略の違い 8月にCreative Technology は Zen Portable Media Center という商品を米国で発 表しました。(日本での発売は調整中だそうです) この Zen Portable Media Center には大きな特徴があります。 メーカーが独自にOSや再生フォーマットを決めて作った製品ではなく、Microsoft の Windows Mobile based Portable Media Centers(Windows PMC)と呼ばれる Microsoft製OSを搭載した Creative Technology の最初の製品なのです。 音楽中心としたiPod とビデオまで含めたメディアを扱うWindows PMC を搭載した製 品を同じカテゴリとして議論するのは少々無理があるかもしれませんが、Creative Technology が、私が言う「深層」のコア技術の入手を他社とのアライアンスに頼る という技術戦略上の選択を行ったのは確かです。これにより、Creative Technology は、Microsoft に大きく依存することになります。 オーディオだけに特化せずビデオまでを扱えるプレーヤをソフトの巨人の戦略に乗る 形で売り出し、コンテンツの流通までをMicrosoftとの運命共同体にかけた Creative Technology 。 大量の資金の投下によるマーケティング、販売、流通経路の創造、消費者を呼び込む 文化の創造、これらの新しいマーケティング次々とドライブするための新製品の開発 とリリースを自社で行っている Apple 。 Creative Technology がApple と同じ路線を 取らなかった/取れなかった 理由は、 単に資金力の差だけでしょうか。 先週お会いした、日本の大学を出た36歳のアメリカ人ベンチャー社長は、「マーケ ティングが全てである。技術は新しいマーケティングを行うための手段として捉えて いる」と流暢な日本語で言い切っていました。いかにもアメリカ人らしい発言であり、 私はこの見方が絶対的に正しいとは言いませんが、ある意味真実が含まれていると思 っています。 技術が技術戦略をドライブし、更にそれらがマーケティング戦略をドライブする。そ して、最終的にマーケティングが企業の生死を大きく左右するという事実が存在する と考えています。技術だけでもマーケティングだけでも不足なのです。 技術はそれをバックボーンにする企業の必要条件ですが、決してそれだけで充分な条 件ではないことは確かです。しかしながら、私がお会いした技術系の企業の経営者の 中には、技術がよければ必ず売れると言い切る方が非常に多くおられたのです。 今回のコラムが、自分が、もしくは自社がシーズ志向の罠に陥っていないか、もう一 度見直してみるきっかけになれば幸いです。 ■ 今回の私のコラムをお読みになり、どう感じられましたか? 是非読者のみなさんのご意見をお聞かせください。 ■ お知らせ 筆者は、10月から中小企業ベンチャー総合支援センター近畿のアドバイザに就任しま す。予め申し込んで頂ければ、無料で対面相談をお受けできますので活用下さい。 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