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メー ルマガジン コラム バックナンバー |
| アイキット代表 生島 大嗣 がコラムを執筆しているメールマガジンのバックナンバーです。 |
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1. 「技術の経営 − 顧客志向だけでは勝てない」 |
| ◆ 技術戦略思考の実現 ◆ |
| 2004年 7月 21日 |
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| ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 技術の経営−顧客志向だけでは勝てない− 1919 部発行 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ ■ ◆ 技術戦略思考の実現 第13回 ◆ ■■ ■■ 「技術系企業のM&Aは技術の経営で読み解く」 ■■■ ■■■ アイキット <技術戦略マーケティング> 代表 生島 大嗣 ■■■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 今回は、いつもとは少し趣向を変えて、M&Aのお話です。 この「技術の経営」の「技術戦略思考の実現」で取り上げるのですから、当然技術系 企業のM&Aに関するものです。 M&Aには関心がないという方もおられるでしょうが、実は技術経営という側面で見 ると、そこには共通するものが多くあるのです。 私は、技術経営を次の2つの切り口で考えています。 技術戦略思考の実現 第5回 参照 http://www.i-kit.jp/biz/gikei/gikei05.html 1.利益を出す仕組みを考える(3層構造の確立、戦略の部分) 1−1) どうやって技術を獲得し維持するのか? <深 層> 基礎研究開発力獲得、知的財産権の獲得、人材の獲得と教育、社内風土 1−2) どのように技術を製品に活かすのか? <中継層> 製品開発戦略(プロダクトアウトかマーケットインか)、組織&制度作 りとその運用 1−3) どのように技術を利益に結びつけるか? <表 層> ビジネスモデルとビジネスプロセスの確立、マーケティング、セールス プロフェッショナル 2.社員の能力を活かす仕組みを考える(人、組織の部分) 今回も基本的にはこの切り口で考えていますが、M&Aのどの要素が上記に相当する のかをご自身で考えてみてください。今回の事例では、3層のビジネス構造がうまく 組み立てられるでしょうか? それでは、M&Aの事例を技術経営意的に読み解いてみましょう。 ▼ 買収対象はどのような会社なのか 〜 技術的視点 ある企業L社から、M&Aに関する相談を受けたことがあります。 L社は技術に関してはまったくの素人企業です。従って、対象企業M社の財務諸表や 社長へのインタビューだけでは、M社が何をしている会社か、そしてその分野はどう いうものかよく理解できないとのお話でした。 M社は汎用の計測器のメーカーです。 企業の規模は小さく、開発、設計は自社で、製造は外部に委託していますが、規模の 割には製品のラインナップは充実しています。 しかし、俗に言う枯れた製品で設計の古さが散見されます。 カタログも3年前のものが今も使われていました。これを見ると、L社の製品群は研 究所や技術開発部署で使用する多機能、高精度の計測器ではなく、比較的機能を絞っ た価格帯の安いものが主力製品だと分かりました。 さて、これだけの内容でどのようなことが分かるでしょうか。 まず言えることは、次のようなものです。 ・M社の製品は、主に工場でのラインで使用されるものである。 ・販売チャンネルは、ほぼ固定されている。 ・業界自体の動きは、新しい販売先等を積極的に開拓するという意味ではあまり活発 でない。 ・いわゆる枯れた製品群であり、新製品の投入もほとんどない。 もう少し深く読み解いていきましょう。 M社のような製品を扱うことは、製品のコスト削減が大きく販売の伸びに寄与しない と思われます。これから先にも状況が変わらないとすれば、この部分での変化は期待 できません。 M社の製品は、ラインにおいて単体で使用されることは少なく、それよりもラインの 製造や検査装置に組み込まれることがほとんどだと考えられます。 カタログにも、いくつかそのような写真が掲載されていました。 M社の製品は、高くても数十万円のオーダーです。 それに比べて、組み込まれる製造装置、検査装置は桁違いに高価なものです。 ですから、製造装置への値下げ圧力があったとしても、M社の製品は積極的にこれに 寄与できるものではありません。 このことは良い方向に働くと、納入先との関係だけで販売先は確保されるというプラ ス要因になるのですが、景気の変動に対して積極的に行動して対処できる構造ではな いことが分かります。 また、古い設計でも通用していることから、コンペチターの動きも活発ではなく、業 界自体の動きも遅いと推察されるのです。 M社のラインナップは会社規模に比べると多いのですが、積極的に新製品を開発して いる家電業界等とは違い、過去の設計遺産を使い回している側面が大きく、現在の組 織で充分対応可能なのだと考えられます。 従って、M社の技術部署の主なミッションは、納入先の要求に沿って、例えば製品の インターフェイスを変更するようなものが多い思われます。 場合によっては検査装置の開発に関与することもあるでしょう。 ただし、技術力自体は決して低くはないと考えられます。 しかし、M社は自社で企画した新製品を積極的に研究開発するようなメーカーではな いのです。 更に、もう一段深読みしてみましょう。 一見同じような製品群を展開している計測器メーカーは多いのですが、大きくふたつ に分けられます。 ひとつは Tektoronix や Agilent のような、多機能、高精度の計測器を主力とする メーカー群であり、もうひとつはM社のような機能を制限した比較的安価な計測器を 主な製品とするメーカー群です。 これらのメーカー群は似ているようですが、商品系列や性格が違うことであまり競合 していません。顧客のセグメンテーションがまったく違うのです。 多機能、高精度の計測器を主力とするメーカー群では、自社企画のによる新製品の開 発に力を入れているでしょうし、独自の販売チャンネルも営業力も必要です。 しかしながら、枯れた商品である比較的安価な計測器を主な製品とするメーカー群で は、新製品の開発はそれほど活発ではないと思われます。 また、製品を直接使う消費者にダイレクトに営業を行うのではなく、製造ラインで用 いる製造装置や検査装置メーカーとのパイプが重要になってきます。 正にこれが会社の生命線と言ってもよいでしょう。 ▼ 買収対象はどのような会社なのか 〜 経営的視点 実は、M社の社長さんは、 「我社のライバル企業はAgilentである」 「我社は計測器メーカーではなくエレクトロニクス企業である」 と仰っておられました。 もちろん技術系出身の社長さんのことですから、より優秀な企業をライバルとして考 えることも重要でしょうし、自社を計測器メーカーだけとして捉えるよりも、技術力 があり何でもできるとポジティブに考えることは悪いことではないでしょう。 しかし、セグメンテーション上違う分類に入る Agilentをライバルとして考えるのは 危険ですし、販売チャンネルや経験を考えると自社を何でもできるエレクトロニクス 企業だと本気で考えるのにも問題があります。 財務諸表を見せていただく前に、M社の製品カタログを見て数年間の売り上げと利益 の推移は予想できました。 この予想をL社の方に財務諸表を見せて頂く前にお話しすると、「その通りですが、 何故分かったのですか?」と驚かれていました。 「技術の経営」の読者の方ならもうお分かりでしょうが、特殊な事情がない限り、M 社のそれは景気変動の影響を受けやすい製造設備メーカーのそれと連動した動きであ ると容易に想像できるのです。 また、これも私の予想通りだったのですが、数多くある納入先の内上位5社でM社の 売り上げの2/3を占めていました。 この顧客との太いパイプは、取引先の変更や製品開発があまり活発でない業界におい ては、大きな経営的資源になり得ます。もちろんこの5社を失う可能性は、そのまま 大きなリスクとなることも忘れてはなりません。 しかしながら、何でもできるエレクトロニクス企業ではなく、セグメンテーションが 絞られており、しっかりとした納入先企業との太いパイプが築かれていることが、社 長の思いとは逆にM社の強みになっています。 ここまでM社を育ててきた社長の経営的力量は想像できます。 業界自体の動きがあまり活発でないことは、売り上げの変動要因は主に景気変動とい う外的要因であることに結びつきます。 このことは、自社の経営努力だけで経営を改善できないというマイナス側面と、この 業界への新しい参入が少なく安定しているというプラス側面の両方がが考えられます。 ただ、M社の製品が多機能、高精度の製品でないことは、日本以外のアジア諸国から の参入が将来予想されます。 しかし、製造設備産業と密接に結びついた製品群を扱う業界であることから、日本以 外のアジア諸国でも製造設備産業が発達しないことにはM社の製品のライバルは今暫 くはアジア諸国からはそう多く現れないでしょう。 それまでの時間的余裕がある間にどう行動するかによって、M社の将来は違ってくる でしょう。しかし、それは次の経営課題です。 ただ、M社の買収を検討する上での将来的な課題として把握しておく必要はあると考 えます。 ▼ 買収対象はどのような会社なのか 〜 人・組織の視点 企業買収では、買収対象企業のキーマンや組織の動向が重要になります。 M社では、M&A後には現在の社長は引退し、主に技術を担当している副社長はその ままM社に残ります。 社長の販売先へのコネクションが、どのような形で副社長に引き継がれるのかが、営 業的に課題となります。 先週の日経の記事で、企業の経営上のリスク情報開示に関する記事がありましたが、 その中の事例で、日本電産という会社の持つリスクについて述べられていました。 日本電産は伸びている企業なのですが、CEOである永守氏が不在となった場合の経 営に及ぼす悪影響がリスクとして取り上げられていたのです。 比較的規模が小さく、創業者である社長の力量が成長を支えていたM社でも、社長の 不在がリスク要因になり得ると考えられます。 これをどのような形で回避できるかが、M社のM&Aでは大きな要素と言えるでしょ う。 また、組織運営上や技術力でキーマンとなる人物が企業には必ず存在します。 これらのキーマンの買収後の動向も重要なのです。 幸いM社ではM&Aはオープンに社員にも通達されており、新しい経営者が決まれば 社員一丸となって事に当たろうという雰囲気作りができていました。 これはM&Aを成功させる上での重要なポイントのひとつであると考えられます。 M社のその後に関してはここでは触れませんが、上記の分析はM&Aの導入部のお話 です。実際にはM社の取引先の経営状態や取引先との関係も深く調べる必要がありま すし、同じ製品群を製造している企業の動向調査も必要になります。 M社の場合は、結果的にはうまく事が運びました。 L社とは別のクライアントの案件ですが、似たようなM&Aにも関わったことがあり ます。この場合の買収先の企業N社も、M社と同じく計測器を開発設計製造していて いるという点は同じでした。 ところが、N社はM社と比べて以下の点が異なっていました。 ・会社規模は小さく、10人以下である。 ・特殊な分野での計測器を手がけているが、コンペチターも多い。 ・製造装置に組み込まれる計測器ではない。 ・大手の販売先チャンネルは持っておらず、自社および商社を通してユーザに販売し ている。 ・キーマンは社長のみで、この社長は売却後はN社との関わりを基本的には絶つ。 ・中国に開発拠点を移している。この部分が不安定要素である。 結果的には、私のクライアントはこの案件に関わらない決定をしました。 さて、これまでのお話で技術企業のM&Aも、3層の連携が可能で、且つ人・組織に 解決が難しい問題がないかという技術経営的な考え方は、まったく同じであるとお分 かり頂けたのではないでしょうか。 更にM&Aに関しては、N社の例にあるように、厳しい判定がなされた場合にはその 方向での問題解決の道は閉ざされてしまいます。市場原理による、より厳しい選択が 行われる現場でもあるのです。 ■ 今回の私のコラムをお読みになり、どう感じられましたか? 是非読者のみなさんのご意見をお聞かせください。 ■ 8月の「技術の経営」の生島担当分「技術戦略思考の実現」はお休みを頂きます。 次回は、9月の第3水曜日の配信になりますのでご了承下さい。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ (C) Copyright 生島大嗣 HP http://www.i-kit.jp/ 連絡先 gikei@i-kit.jp ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【ご意見・ご感想はお気軽に】 tm-mag@freeml.com までお寄せください。皆さんのご意見をできるだけ誌面に反 映させて参りたいと思います。 また、執筆者に質問、あるいは、議論をしたい方は、技術の経営の公式メーリング リスト 技術の経営メーリングリスト http://infoscape.jp/tms/ml.htm に参加の上、メーリングリスト上でお願い致します。 また、メールアドレスを公開している著者は、個人的に質問もOKです。ご遠慮な く、メールをください。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行/編集元:エム・アンド・ティ・コンサルティング 好川哲人 http://www.infoscape.jp/tms/ mailto:tm-mag@freeml.com 登録・解除は以下のURLで行うことができます。 http://www.infoscape.jp/tms/magazine.htm 当サイトへのリンクは自由です.また、本マガジンの転送も自由です.引用・ 転用について御希望の方は、エム・アンド・ティ・コンサルティングまでお問 い合せ下さい. 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