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メー ルマガジン コラム バックナンバー

  アイキット代表  生島 大嗣 がコラムを執筆しているメールマガジンのバックナンバーです。


 
1. 「技術の経営 − 顧客志向だけでは勝てない」 

      ◆ 技術戦略思考の実現 ◆


2004年 4月 21日

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 技術の経営−顧客志向だけでは勝てない−          ● 1955部発行
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■       ◆ 技術戦略思考の実現   第10回 ◆
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■■         「技術の経営は総合的連携力」前編
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■■■          アイキット <技術戦略マーケティング> 代表 生島 大嗣
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今回は少し趣向を変えて、今何故「技術の経営」が注目され、これがどうして大切な
のか、そしてどのように実際の経営に活かしていけばよいのかを考えてみたいと思い
ます。

まず、米国型MBAや今話題のMOTとの比較の中で、私の考える「技術の経営」と
はどのようなものなのかということをお話したいと思います。

今回の話は少々長くなるので、前編と後編の2回に分けてお届けします。



▼ 米国型 MBAとは?

最近MOT(Management of Technology)という言葉をしばしば耳にするようになり
ました。MOT=「技術の経営」なのでしょうか?
このMOTと私の言う「技術の経営」とはどう違うのでしょうか?


MOTを考える前に、比較のためまずMBAを取り上げてみたいと思います。
みなさんご存知のように、MBA(経営学修士)という修士号があり、米国を初め欧
米諸国ではビジネスを行うためにはある意味必須の学位のように言われています。

現在では、日本の大学でも多くの大学でMBAのコースが用意されています。
では、MBAは日本でも米国と同じように評価され扱われているのでしょうか?
日本の企業から派遣されたり、私費で渡米してMBAを取得したりする方は多くおら
れますが、その内のかなりの方がMBA取得後に退職されて外資系の企業に移られて
いるのです。
どうしてこのようなことが起こるのでしょうか?


大きな原因として、MBAを取り巻く文化の差があることが考えられます。

・大企業でのエグゼクティヴをリタイアした人が教えるケースも多く、ケースには書
  かれない実際の話を織り交ぜながらの授業もある。また、現職のエグゼクティヴも
  毎週のように講演に来る。
・ビジネススクールの卒業生で成功をすると、後進の教育のために、母校に募金を行
  う。
・例えば、スタンフォードで起業論を教え、自身も起業家である教授が優秀な学生に、
  自分の個人ファンドから資金を提供するということが行われている。
・米国にはすでに100年以上の歴史がある。

つまり、
「米国のMBAは、知識が循環する、お金が循環する、実体の伴った「文化」が存在
  する。即ち、MBAはアメリカの文化の中で息づいてきたものである」
ということが言えるのではないでしょうか。


現在、日本では米国ほどMBAが取り沙汰されていませんが、これは文化の差が大き
いのではないかと考えられます。この文化の差は、日本型企業と米国型企業の行動原
理、仕事の進め方、人材の確保、登用、教育方法の違いに大きく現れています。
これらについて考えてみましょう。



▼ MBA取得者が活躍する米国企業のマネジメント

米国的なマネジメントの考え方は、最近日本でも身近になりつつあります。
しかし、まだまだ日本独自の文化を持つ企業も多く存在します。
これらの違いはどこにあるのでしょうか?

まず考えられるのは、マネジメントに関する考え方です。
企業の業務を組織として進めるには、如何にマネジメントするかが大事になります。
ところが、日本ではマネジメント自体が機能していない点が多く見られます。ここは
日本型企業が参考にすればよい点ではないでしょうか。

日本ではノウハウの多くは、現場の担当者が非マニュアル化の知識として持っていま
す。マネージャがいちいち指示しなくても、なんとなく現場が動いて処理してしまい
ます。

しかし、企業を取り巻く状況が急速に変化するようなときトップダウン型経営だけで
は全てうまく機能しない場合も散見できます。明確な方針が示されずに、組織が動か
ない場合が出てきているのでます。

これに比べ米国企業では、業務の単純化、モジュール化、マニュアル化が行われてい
ます。これらのプロセスを経て初めて米国流のマネジメントは機能すると言えるでし
ょう。ここにMBA取得者が活躍する場があります。

米国の企業ではマネージャが大きな権限を持ちます。これは手足となるルーティンワ
ークを行う者の上に立つマネージャが、組織の頭脳として機能しているからなのです。

従って、日本企業でもマネジメントを重視した経営を行うためには、まず現場の人間
が保有する「マニュアル化していないノウハウ」=「暗黙知」をまず洗い出すことが
重要になるのはお分かりいただけると思います。


興味深い現象があります。
アメリカ企業では引き継ぎという作業は存在しません。ルーティン化されるべき業務
は単純化マニュアル化されているのです。
これに対して日本型企業では、米国企業では存在しない引き継ぎというプロセスが必
要になってくる訳なのです。


また日本の大企業では、ゼネラリストを育てるということが行われてきました。これ
に対して、米国型企業ではスペシャリストであることが期待されます。
これはエグゼクティヴであってもそうなのです。そして、CEOがこれらの人材を束
ねているのです。

一言で言えば、米国型企業は頭脳を持つマネージャの元に手足として働くワーカーが
存在するトップダウン型企業の側面が強いと言えるでしょう。



▼ 人材の流動性

最近、コストの削減のためにアウトソースや契約社員が雇用形態として根付いてきま
した。これはマネージャクラスではなく、あくまでもルーティンワークの現場で多く
起こっています。正社員候補はこの中から優秀なものを登用するということも多く見
られます。

米国型企業では、マネージャクラスでも人材は流動的です。個人のステップアップの
ためにも転職は行われます。
実力社会なので、常にスペシャリストとしての技能を高めておく必要があり、社会人
が大学へ通うことも珍しくありません。ゼネラリストは必要とされないのです。
このように、企業間でも教育面においても、人材は循環しています。

人材の採用は、必要な場所に既に必要なスキルを持った者を見極めて採用し配置する
ということが行われます。内部でのOJTや教育により育てると言う考え方ではあり
ません。
米国企業では、e-Learning等の教育システムが充実していますが、これらは社員に教
育サービスを提供することで必要な人材の流出を防ぐという側面が強い場合が多いの
です。よいスキルを持った人材を如何に確保し、それを社内に留まらせるかの方策が
必要になるのです。

ところがマネージャクラスともなると、その人のスキルを基にあるプロジェクトを完
成した場合は、その人はもうそれ以上その企業では必要ではなくなるという場合も出
てきます。このために、転職のための支援のシステムが存在するのです。

それは転職に有利な制度やオプションの報酬であったり、プロジェクトの成果を評価
する転職先の企業が存在するという文化であったり、そのプロジェクトを行うことに
よるその人自身のスキルアップであったりするのです。

つまり、面白いことに社内に留まらせるためのサービスであるスキルアップの仕組み
が、将来転職のためにも役立つという仕組みにもなっているのです。


日本では、最近は大企業からベンチャー企業への転職は見受けられますが多くはあり
ません。一旦ベンチャー企業へ転職すれば、再び大企業へは戻りにくいのです。

ところが米国では、たとえ大企業に勤めていてもいつレイオフされるか分からないと
いうリスクを常に抱えています。しかし、ベンチャー企業に転職してもそこで一定の
成果を上げたり、重要なポストについていたりして実力が示されれば、再び大企業へ
転職することも珍しくありません。

大企業に在籍していても、ベンチャーに移ってもリスクは変わらないのです。
これが、米国ではベンチャー企業が盛んである理由のひとつでもあるのでしょう。

このために米国では深層の最先端技術をベンチャー企業が持つことは珍しくありませ
んが、日本ではこれらの技術は大企業の中に埋もれているのです。



▼ 人材教育としてのMBAとMOT

さて話を元に戻しましょう。
MBAの特徴は、循環する文化を背景に持つ人材教育ということがお分かり頂けたと
思います。

MOTも、MBAと同じく知識が循環する、お金が循環する、人材が循環する米国型
経営が行われている社会で通用する人材教育の側面が元々強いものだと言えるでしょ
う。

MOTとは、
「Hi-Tech marketing + 特許戦略などを含む Technology Management のための人材
教育」
と定義できるでしょう。しかし、米国型MOTの根底には文化的、社会的背景がある
のです。


分かりやすい例として「起業」を考えて見ましょう。
米国、特にシリコンバレーなどでは、「エンジニアになってMBAをとり、将来、ハ
イテクで起業」が一般的によく見られるパターンです。

即ち、

「エンジニア→MBA取得→起業」

のパターンです。これに対しMOTは、

「MOT→起業」

とするカリキュラムだと言えるでしょう。
MOTは、エンジニアリングのMBAとして捉えられるのです。
ただし米国では、MOTはMBAほど広く認知された言葉ではないことも付け加えて
おかなければならないでしょう。


ここで実際にMOTの例として、内容が公開されている米国の大学を見てみましょう。

http://mitsloan.mit.edu/execed/mot/
http://www.edu.cbs.dk/cm/liniebeskrivelser2002_2003/MOTlinjebeskrivelse0203.pdf
http://kwanghui.com/mmt6008.html
http://mot.berkeley.edu/courses/details/introtomotSP04syl.pdf

これらを見ると、
Technology Strategy や Businesses Resource、Market Development、Technology
Perspective、Entrepreneur-ship、Innovation 等の言葉が出てきます。
MOTは技術系の会社を経営するために必要な様々な知識を体系化した教育体系と言
えるでしょう。


日本では、MOTはどう捉えられているのでしょうか?
経済産業省「産業技術人材育成支援事業」の一環として作成されたサイト
「技術経営e-プラットフォーム」
http://www4.smartcampus.ne.jp/
には、「持続的なイノベーション創出をリードする技術経営スキルをもった新しいタ
イプの人材育成が求められています」と記されています。

更に、「技術の特性に対する深い洞察力はもとより、発明の初期段階においてグロー
バルな市場性を適確に評価し、研究開発投資に対する意思決定を戦略的かつ機動的に
行うことが求められます。そこに技術経営の必要性があります」とも述べられていま
す。


しかし、MOTは単なる知識体系だけではなく、"循環型社会で通用する"人材教育プ
ログラムであるということも重要なのです。
ところが、日本にはまだまだこの背景を伴う環境は整ってはいません。
最初は上記のような大学教育を通じて、これから環境は時間をかけて少しずつ整って
いくのでしょう。

私は、米国型とまったく同じ環境が必ずしも日本に必ず備わらないといけないとは考
えてはいる訳ではありません。また、近い将来に米国とまったく同じ環境が実現する
とも思ってはいません。
ただ今後日本でも、より欧米式のマネジメントが徐々に浸透してくる方向に進むでし
ょう。

このような現在の状況下では、循環型社会の欠如から来るマイナス面を補うものを考
えなくてはなりません。
これが、企業向けの日本の実戦型MOTである「技術の経営」だと考えています。
そして、これを実現するには、アントレプレナーシップ等までを包含する人・組織の
問題まで踏み込んで考え、実践していくことが必要になってきます。

しかし、日本で企業向けに行われているMOTセミナーの中には、MBAに技術をち
ょっとまぶしたようなものが多く見受けられるという印象は拭えません。



▼ 日本型実戦MOT「技術の経営」の必要性

先に述べたように、日本で通用しているMBAの「アカデミックな教授が学生に机上
の空論を教える」というステレオタイプからは、「文化」に対する理解がすっかり抜
け落ちていると言えるでしょう。

同じく、日本のMOTも日本のMBAと同様の問題が存在すると考えられます。
知識が循環する、お金が循環する、そして人材が循環する文化に支えられている米国
型のMOTをその文化のない日本にそのまま持ってきても、全てがうまく機能しない
でしょう。

従って、日本に合った日本型MOTが必要と考えています。
アカデミックとは違った、民間の企業のための実戦型MOTが求められるのです。


MOTとは様々な知識を体系化したものです。
だからこそ実際の企業の中で「技術の経営」を考える際は、いろいろな要素を総合的
にうまく連携させることが重要です。

そして、循環型社会の文化が充分にない日本においては、人・組織の問題をどう取り
扱うかまでを考慮した「技術の経営」が必要だと考えています。

これが私の提唱する「技術の経営」が表層・中継層・深層を繋いで機能するための
「3層理論」と「人・組織」の問題の2本柱より構成されている理由なのです。


このように、「技術の経営」は幅広い知識体系とこれらを連携して繋ぐ戦略と人、組
織に支えられて機能します。
後編では、実戦的な「技術の経営」の例を示しながら、それぞれの企業の特質に合わ
せてオペレーションまで踏み込み、実践的にどう展開していくかという問題について
考えていきたいと思います。



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