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メー ルマガジン コラム バックナンバー

  アイキット代表  生島 大嗣 がコラムを執筆しているメールマガジンのバックナンバーです。


 
1. 「技術の経営 − 顧客志向だけでは勝てない」 

      ◆技術戦略思考の実現 ◆


2004年 2月 18日

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 技術の経営−顧客志向だけでは勝てない−          1980 部発行
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■       ◆ 技術戦略思考の実現   第8回 ◆
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■■         「戦略策定か戦略形成か?」
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■■■          アイキット <技術戦略マーケティング> 代表 生島 大嗣
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ここまで、私の考える「技術の経営」の2本柱の、「3層構造」と人の能力を活かす
ための「組織」についてお話してきました。
「深層」「中継層」「表層」の各コンポーネントをうまく連携させるための戦略が必
要であることを説明してきましたが、実際にはどのように連携させていけばよいので
しょうか
今回の議論は、実際の経営の局面において、このふたつがどのように関係し、企業の
戦略にどう影響するのかを考えていきます。



▼ 戦略が機能しない場合とは

まず、ある極端な例をご紹介しましょう。
H社は、あるメーカーのコストセンター(人事や設備管理部門)が切り離された会社
で、数百人規模です。

本体のメーカーの100%子会社で、社員は全員が本体からの出向組です。
ここまではよくある話ですが、昨今の流れでこの会社もかなりタイトな期限付きで本
体から完全独立を求められることになったのです。

ここで問題なのは、この会社が本体と切り離されることで今まで回っていた各コンポ
ーネントの役割がまったく変わってしまい、独立後に役に立たなくなってしまうとい
うことです。

H社の現状は以下の通りです。

  <3層構造>
    深層  :今までは人事関連の処理や設備管理
    中継層:戦略なし
    表層  :本体から自然に降りてくるルーティンワークがビジネスモデル

  < 組織 >
    問題意識が希薄で、与えられたことだけを行うことが大事


H社がこのようなポジションに追いやられる背景としては、本体のメーカーの再編が
関係しています。
本体のメーカーは、各事業に権限を大幅に委譲し、それぞれの事業部が独立した企業
として機能するようになってきています。更に本体のメーカーの本社は持株会社化へ
と変わろうとして、スリム化を図っているところなのです。

一体どうすれば、このような組織を独立して機能するようにできるのでしょうか。


結論から言うと、本体がコアコンピタンス以外の部分を切り離したそのひとつである
H社は、そのままで普通の企業として機能する要因が残念ながらひとつもないのです。
3層構造のひとつでも充分に機能するものがあれば、それを中心に戦略を練り、弱い
ところを補強することが可能な場合もあります。
しかし、使えるコンポーネンツが何もなくては戦略そのものが成り立ちません。

H社の場合使えるのは本体のブランドの信用力だけです。この点はベンチャービジネ
ス企業とまったく逆のパターンと言えます。

この場合でも、時間と資金力とアイデアがあれば、かなり困難とはいえ、人・組織の
意識改革を行なうと共に、各コンポーネントを一から新しく組み立てることが条件付
で可能になる場合もあるでしょう。

例えば、本体とのコネクションを有効に使い、完全に切り離されるまでの時間稼ぎや
ある程度の会社存続の保証を取り付け、その間に新しいコンポーネンツを用意し、
人・組織の改革を行うという方法が考えられます。

しかしこの解決策は、元々企業の戦略が成り立たない特殊な条件下での、かなりネガ
ティヴがものと言わざるを得ません。



▼ 戦略を組み立てるためのコンポーネントが残っているか

では戦略が機能する条件とはどのような場合でしょうか?

それは最低でも何らか機能するコンポーネントが手の内にあり、弱点を補強しながら
連携することが理論上可能な場合なのです。


前回のF社の例を振り返って見ましょう。

F社には開発設計という機能が残っていました。
深層に深く関係した部分です。
これに中継層と表層、言い換えると戦略とビジネスモデルを用意してこれらに如何に
結びつけるかがF社の場合のキーだったのです。
詳しくは前回のコラムを参照してください。
http://backno.mag2.com/reader/BackBody?id=200401211100000000111879000


ただいつも述べている通り、ここからが企業によって千差万別です。

新しくビジネスモデルで用意した製品・サービスが競合に比べてどの位置にあるのか。
その製品・サービス自体の置かれているセグメンテーションがどこにあるかでまった
く話は変わってくるのです。

製品開発の技術力は充分あるのか。
どんな製品カテゴリーなのか。
自社の製品は製品寿命のどのフェーズのものなのか。その導入期なのか、安定・成熟
期なのか、それとも衰退期なのか。
競合はないのか。あるとしたら競合との差はどこにあるのか。
競合に比べて、製品・サービスの優位はどうなのか。
現在のシェアーはどうなのか?
残された時間はどのくらいなのか?

これらを踏まえた上で、競合に勝て1番手になれるのか。
それは無理でも2番手3番手につけることが可能なのか。
それとも収益が出ない位置に転落してしまうのか。

まず、業界の中で自社の置かれている位置、現状を徹底して調査する必要があります。
そして、徹底的に考え、戦略を練ることが最も重要になってきます。

こうして考えられた戦略に裏打ちされたビジネスモデルは、本当に機能するのか?
マーケティング等の手法を導入することも有効な場合が多いでしょう。



▼ 戦略だけでも動かない

ベンチャー企業によくあるのが、導入期の製品、またはオンリーワンの製品を元に、
一気に市場を形成してしまう方法ですが、ベンチャー企業は資金調達や経営自体に未
熟なところがあり、これらが成長の足を引っ張ることになりかねません。

F社の場合は、状況に不明なところが多くあるのですが、ベンチャー企業と違い財務
的にはまだ余裕があると仮定しましょう。

そうするとベンチャー企業との大きな違いはどこなのでしょうか。


その答えは社員のマインドにあります。

組織の目標が示され、それを全員が理解しているか。
各自が自分の役割を認識し、必要なことを実行しているか。
議論のための議論、会議のための会議ではなく、実行のための道具として議論、会議
が行われているか。
問題意識を共有しているか。
上のポストのものがリーダーシップを発揮しているか。
全員が自分から問題を見つけようとしているか。

一般にベンチャー企業では、創業からの日が浅く、組織が小さいために上記のような
状況に自然となっていることが多いのです。
遊んでいるものがいると会社が回っていかないのです。

このような組織になっていないと、戦略そのものを動かすために、即ち組織を動かす
だけに多くのエネルギーが消費されてしまいます。


これを解決するのに直接的に必要なのが、人を動かすリーダーシップとそれをフォロ
ーする仕掛けなのです。
その仕掛けとは、結果を出した人・組織が報われる評価制度であり、やりがいが得ら
れる仕事そのものであるかもしれません。
また適切な権限委譲も必要ですし、決定したことが実行可能なだけの予算も確保しな
ければなりません。

またある程度成熟した組織の場合、コーティング、メンタリング等のメソッドを利用
することも考えていかなければなりません。



▼ 戦略は策定するのか形成するのか

勢いのある組織では、よく上部の指示が変わることがあります。
この変更が必要であり、それが社員に充分理解されている場合には問題はあまりあり
ません。

しかし、トップがワンマンで単なる思い付きで指示がどんどん変わる場合は、指示さ
れる方もたまったものではありません。
指示された方も、「またいつものことか」と当然ながらモチベーションを維持できな
くなってしまいます。

走りながら考えられるか、そうでないか。
これも企業は千差万別というひとつの例でしょう。
これには、トップ、リーダー、個人、社風、今までの体験等いろいろな要因が絡んで
いるのです。


実際の現場では、戦略通りに状況が推移することはほとんど考えられません。
いくら状況を分析し、ビジョンに基づいた戦略を練っても意外な問題が浮かび上がっ
てきます。
それも、勢いがある組織になればなる程、勢いがあるが故に回りを取り巻く状況に変
化があるものなのです。

こういう状況では、走りながら考えることが必要です。
最初に策定した戦略にとらわれ過ぎず、必要に応じて常にビジョンに沿って戦略を変
更していく柔軟さが求められるのです。
走りながら考えられない組織は、ここで競争に敗れることになり、決して1番手には
なれないでしょう。

そうは言っても、まったく戦略がない状況で闇雲に走ることは危険です。
このリスクを最大限軽減するためにも戦略は必要なのです。
即ち状況の変化を予期した柔軟な戦略策定と、それを受け入れ機能させられる組織で
す。

そして、突発的な外部要因を受けて柔軟に対処する、即ち状況をコントロールできる
ように変化させるためには、常に情報収集と分析を怠らず、日常的に戦略を形成でき
るような柔らかさが重要になってくるのです。



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