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メー ルマガジン コラム バックナンバー

  アイキット代表  生島 大嗣 がコラムを執筆しているメールマガジンのバックナンバーです。


 
1. 「技術の経営 − 顧客志向だけでは勝てない」 

      ◆ 技術戦略思考の実現 ◆


2004年 1月 21日

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 技術の経営−顧客志向だけでは勝てない−          ● 1971部発行
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■       ◆ 技術戦略思考の実現   第7回 ◆
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■■         「よいものは放っておいても売れるのか?」
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■■■          アイキット <技術戦略マーケティング> 代表 生島 大嗣
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今回はある読者の方の質問を例にして、これまでのおさらいも兼ねたお話をしたいと
思います。


▼ 売り手の論理で考える危険性

今回取り上げる読者の方からの質問の主旨は次のようなものです。
(ここでは、この読者の方の会社をF社、読者の方をG氏とします)


  技術志向の会社だが、系列の中で生きてきた会社である。
  従って、系列からの受注が主体のため営業機能がなく、親会社から来た注文に従い
  効率よく安く作るかだけがテーマであった。

  系列が崩れるという事態になったが、売り方が分からない。
  しかし、「技術力が優れていれば、必ず売れる。いいものは必ず売れる」と全員が
  信じている。どうすればよいのか。



まず、「技術力があると売れる」というF社の基本的な勘違いが見えてきます。
この点はG氏も認識されており、危機感を抱かれています。
ところが、技術力というものの本質の捉え方、認識に問題があると思えます。
前回、伊藤氏も取り上げていますが、技術力というのは何を意味するのでしょうか?


確実に言えるのは、お客様は技術力にお金を払う訳ではないということです。
お客様は製品やサービスの提供する機能にお金を払うのであって、直接技術力にお金
を払ってくれるのではないのです。

確かに、技術力があるということはこの製品やサービスを提供する手段として有効で
す。しかし、G氏の言う技術力はF社だけが持っているものなのでしょうか?

もし、F社だけが持つ技術力によってしか提供できない製品やサービスをF社が提供
しており、更にその製品やサービスが市場に求められているのであれば、親会社はF
社との取引を打ち切ることはなかったでしょう。

ですからF社の製品、サービスは既に顧客に取って必要ではなくなっていいるか、ま
たは親会社がその製品、サービスの供給元を他社に求めたかだと考えられます。
この場合は、親会社が製品、サービスをもっとコストセーブできる他社からの調達に
切り替えたと考えるのが妥当だと思われます。

即ち、決してF社の技術力は絶対的な競争力の源泉ではなかったということなのです。
過去のF社の優位は、主に親会社との関係により生まれていた訳です。

勿論F社の技術力で、お客様が欲しがり、他社が真似できない機能を実現するか、生
産コストを他者が追随できないレベルまで引き下げられれば話は違ってきます。
もっとも前者の新機能を実現するには、潜在的な顧客のニーズを掘り起こす能力が必
要ですが、F社には今のところこの力が乏しいように見うけられます。

私はいつも「売り手側の論理でなくお客様の論理で考えよう」と提唱している根拠は
ここにあります。
お客様の嗜好、行動原理を理解しないで売り手の論理、企業内の論理だけでビジネス
を行うと失敗することが多くあるのです。



▼ 企業の競争力とは

第5回のコラム「覚悟はできていますか?」で、技術経営を2つの切り口で考えてい
ると述べました。前回に引き続いて再掲します。

  1.利益を出す仕組みを考える(3層構造の確立、戦略の部分)

   1−1) どうやって技術を獲得し維持するのか? <深 層>
            基礎研究開発力獲得、知的財産権の獲得、人材の獲得と教育、社内風土

   1−2) どのように技術を製品に活かすのか? <中継層>
            製品開発戦略(プロダクトアウトかマーケットインか)、組織&制度作
            りとその運用

   1−3) どのように技術を利益に結びつけるか? <表 層>
            ビジネスモデルとビジネスプロセスの確立、マーケティング、セールス
            プロフェッショナル

  2.社員の能力を活かす仕組みを考える(人、組織の部分)

    優秀な人間を集めることと、社員の能力を活かすことには違いがあります。
    いくら優秀な人間を集めても、能力を活かせないとただの烏合の衆になります。
    例えば、いくら優秀でもイエスマンばかりの集団からは何も生まれません。
    時代が変われば、働く姿勢、意識、行動様式も変える必要があります。
   「組織は」そして「個人は」どのようにあるべきかというところまで踏み込んで
    考えなくてはなりません。



企業の競争力は、利益を出す仕組みで述べた「深層」「中継層」「表層」の足し算で
得られるのではありません。
企業の競争力は、以下のように掛け算で考えないといけないと考えています。

(企業の競争力)=(深層)×(中継層)×(表層)


主に深層にある技術力だけではなく、社内風土も戦略もマーケティングも全て企業の
競争力に関係してきます。
技術力だけでは企業の競争力を維持できないのは明らかなのです。

従って技術力だけでなく、もっと包括的な企業の競争力に着目しなければならないの
です。



▼ もうひとつの問題

深層、中継層、表層の各能力を引き出すのが、2.の社員の能力を活かす仕組みであ
り、人、組織の部分です。

G氏は、F社のもうひとつの問題が営業機能欠如だと述べられていますが、
問題はもっと深いところにあると考えています。

もしF社が問題の本質に気付いていて、全員が一丸となって会社の危機に対処しよう
という前向きな姿勢が取れるのなら、G氏の言う必要な営業力を得るための方策を練
り、行動を起こせる筈なのです。
従って、問題は人、組織のあり方にそのものに関わってくる内容だと考えられます。


F社の場合、問題に気付かないか、気付かない振りをしている社員が大部分であり、
更に会社としても事態に対処する覚悟ができていないのではないかと思われます。

しかし、G氏の持っている問題意識をどの程度の人が持っているのか、それはどのレ
ベルの人なのか、また問題意識を持っていても行動できない、しないという人がどの
くらいいるのかも分からない状況です

中・長期的には、問題を直視し、リスクを引き受ける覚悟をし、会社が一丸となって
事態に対処する流れを作り出さないと本質的な解決には至りません。


勿論、短期的な対処方法も併せて考えないといけません。
ところが質問の内容からは、会社規模、業界、人員構成、組織、製品、財務内容等の
全てが分かりません。
残念ながら、このような状況で具体的な対処方法を考えることは難しいのです。


・製品は何でしょうか?

・親会社に関係する売上比率はどのくらいで、それがどれくらいまで減少したのでし
  ょうか?

・製品はカスタム品でしょうか?

・その製品には競合があり、親会社はそちらと取引を始めたのでしょうか?
  それとも、その製品の市場自体がシュリンクしており親会社は撤退したのでしょう
  か?

・その製品の市場が存在しているのなら、営業努力である程度の売上は回復できるの
  でしょうか?
  同業の他社はどのような売り方をしているのでしょうか?

・扱っている製品に関する技術力は業界ではどの程度でしょうか?

・パテントは?

・製品自体のマーケティングは行われているのでしょうか?

・財務的にはどうでしょうか? 現状でどの程度会社は維持できるのでしょうか?

・取引銀行の対応はどうでしょうか?

・業界での評価は?

・経営層の考え方は?


企業の置かれている背景は、千差万別です。
企業そのものも千差万別です。
そして、それぞれに具体的な対処策は異なります。

一般的には、以上のような問題に短期的な対応を取りながら、人、組織の部分につい
て長期的な対応を併せて考えて、実行していかなければなりません。
更に、これら全てがひとつの方針の元に連携することが重要となるのです。

そして認識しないといけないのは、いいものかどうかはあくまでもお客様が決めるも
のであるということであり、会社が事態に対処できるかどうかは状況を把握しリスク
を引き受ける覚悟をしているかどうかにかかっているということなのです。

覚悟ができていないと、新しく一歩を踏み出すという行動も起こせません。
F社の場合、技術力と営業の問題を超えたところに回答があるようです。

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