|
| |
メー ルマガジン コラム バックナンバー |
| アイキット代表 生島 大嗣 がコラムを執筆しているメールマガジンのバックナンバーです。 |
| |
1. 「技術の経営 − 顧客志向だけでは勝てない」 |
| ◆ 技術戦略思考の実現 ◆ |
| 2003年 12月 17日 |
|
| ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 技術の経営−顧客志向だけでは勝てない− ● 1928部発行 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ ■ ◆ 技術戦略思考の実現 第6回 ◆ ■■ ■■ 「お客様は経営資源?」 ■■■ ■■■ アイキット <技術戦略マーケティング> 代表 生島 大嗣 ■■■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ここまで技術戦略、人・組織について述べてきました。 今回はマーケティングについて考えていきたいと思います。 前回少し整理しましたが、もう一度技術の経営について私なりの考え方をまとめます。 1.利益を出す仕組みを考える(3層構造の確立、戦略の部分) 1−1) どうやって技術を獲得し維持するのか? <深 層> 1−2) どのように技術を製品に活かすのか? <中継層> 1−3) どのように技術を利益に結びつけるか? <表 層> 2.社員の能力を活かす仕組みを考える(人、組織の部分) 1.の部分は具体的には、商品企画、技術戦略、マーケティング、CS、PM、人事 制度、評価制度、CRM等の各手法を通じて価値創造のプロセスを業務プロセスに組 み込んでいく仕組みと捉えています。 2.については、人・組織のマネジメントを通じて、意識改革、風土作りまで踏み込 んだ考え方が重要と考えています。具体的手法としては、MOI(Management of Innovation)、MOC(Management of Creativity)、リーダーシップ教育、メンタ リング、コーティング等が挙げられます 第1回から第3回まで、技術戦略についての議論は1.の部分です。 第4回、第5回は2.について考察してきました。 今回は、主に1.の部分であるマーケティングに関連した内容取り上げたいと思いま す。ただ一般にMBAなどで取り上げられている、マーケティングの定番のコトラー 的な内容についてはここでは触れません。 (興味のある方は補足を参照にしてください) ここでは、お客様をどう自社の経営資源として組み込んでいくかという観点でマーケ ティングについて考えていきたいと思います。 ▼ 昨今のマーケットの状況は? 最初に現在の 「市場」の状況についてお話しましょう。 この内容は既に多くの方が言及されお聞きになっていると思いますが、おさらいも兼 ねて考えてみましょう。 現在のもの余り社会で言われているキーワードは「欲しいものがない」です。 今年最も売れた製品は何でしょうか。 薄型テレビ、洗い分け用の洗濯機...etc. ほとんどがなければ困るという商品ではありません。 ある意味贅沢商品です。 高度成長時代はもっと簡単でした。 足りないものを作れば売れたのです。 そこで「市場」という言葉が使われました。先に市場ありきです。 そこに市場があるという考え方には、誰もが異議を唱えなかった訳です。 極論すれば、市場にものを供給するだけで売れたのです。 ですから、マーケットシェアが重要だったのでしょう。 企業は、自分の参入する市場を調査し、製品を企画して作り市場に流しました。 同業の他社が存在していますから、他社との比較が大事です。 営業力も重要になってきます。製品の性能、価格が似たようなものだと、勝負は営業 力で決まることが多いからです。 ところが、もの余り現象が言われる昨今の状況では、必需品市場にはものが行き渡っ ている状況です。ものが売れるには買い替え需要をあてにしないといけないのです。 もちろんHDDレコーダー+DVDレコーダーのような新商品も出てきています。 地上波デジタルへの移行もそろそろ近づいてきました。 ただ全体の状況は、もの余りだというのは変わらない事実です。 従って、もの余りの状況下でも、お客様の心を捉えて売れる商品を開発することが大 切と考えています。 では、一体どうすればよいのでしょうか? ▼ 価値を提供するには お客様にとって価値のあるものを提供しないと製品、サービスは売れません。 これは時代が変わっても同じです。 何をどうやって提供するかが鍵なのです。 お客様が欲しがっているものは何かを見抜かないといけませんが、問題はお客様自身 も何を欲しいかが分かっていないということです。 ですからアンケート等の手段でも上がってきません。 マーケットイン(ニーズ志向)の常套手段では分からないケースが増えているのです。 では、プロダクトアウト、つまりシーズ志向ではどうでしょうか? 当たり前のことですが、当然作り手の一方的な思い入れだけでは、外してしまうこと が多いのです。 企業が価値を提供するには、いくつかのパターンがあります。 1) 業務の卓越性 セブンイレブンは有名です。 コトラーでは、サウスウエスト航空の例がよく取り上げられています。 2) 製品の優越性 言うまでもありません。他にない製品は売れるのです。 他社が追随できないプライスを提供した場合も同じです。 3) 緊密な顧客関係 単に市場として捉えてはいけなません。 この中で、今回考える内容は、3) の緊密な顧客関係です。 ▼ もうひとつの経営資源 〜 緊密な顧客関係 一言で言うと、「お客様を経営資源として捉えて新たな戦略を構築すること」です。 お客様を経営資源として捉えるというのは、お客様は神様という今までの常識では反 発があるかも知れません。 しかし、これからはこの考え方が重要になってくると考えています。 お客様のことをよく知っている社員、更に自分でよいか悪いかを判断できる社員は大 切です。そしてそれが一番よく分かっているのはお客様自身なのです。 もちろん販売店もお客様、社員と位置付けなければなりません。 例えば、以前は販売店に対してはある程度秘密主義を取っていました。 これでは販売店と緊密な連携ができません。 例を挙げましょう。 日産のゴーン社長は、クロスファンクションチームという方法を取っています。 関係するところは販売店も巻き込んで緊密な関係を作り上げます。 ですから、物事が決まったときには関係する全てのチームが背景を分かっており素早 い対応が可能になるのです。 言葉は悪いですが、お客様をとことん使い倒すのです。お客様を社員として位置付け て、情報はどんどんお客様に聞いていく。 そして、お客様も経営に参加する。お客様のアイデアを経営に、もの作りに取り込ん でいくのです。 P) フォーカスを決める。 自社の得意分野は何か、どこで勝負するかを決める。 そして調査分析を行う。 D) まず、この方針に沿って行動する。 C) これでよいかを素早く徹底的に検証する。 A) 素早く修正をかける 「なんだ、以前のPDCAと同じじゃないか」と思われるかも知れません。 その通り、言葉で書けば基本は同じです。 ただ、フォーカスを決めるのも以前の市場シェア何%という考え方ではなく、徹底し て自社の強みを検証し、また誰も気付かないニーズを掘り起こす方向で考えないとい けないということなのです。 また、チェック方法もお客様を巻き込んだ形を作り上げる必要があります。 そしてお客様のまだ気が付かないニーズまでを探り出すシステムも必要なのです。 そして素早く修正です。 これができる体制を業務プロセスに組み込まないといけません。 その方法は、何度も言いますが千差万別で、企業によって違います。 一言では言えないのです。 ▼ 市場の声が届くシステム作り 先に述べたとおり、このプロセスを織り込んだ3層連携の業務プロセスを作り上げる ことが大事になってきます。 CSとも絡んだ内容ですが、CSも以前流行った挨拶運動や礼儀に終始していては、 経営に寄与しません。これで利益が増える業種なら話は別ですが。 現在のCSの考え方は、CSの概念をプロセスに組み込み利益に寄与する形を作ると いうものです。 私は、ひとつのシステムを導入するだけで経営全てがよくなるのではなく、全ての業 務プロセスが3層構造で連携して初めて効果を発揮すると考えています。 もちろん表層だけのプロセスはその限りではないでしょう。しかし、その単独に存在 し得るように見える表層のプロセスも、その存在は深層、中継層の連携、戦略に基づ いているのです。 ですから、マーケティングも、製品開発も、人・組織も、人事評価も全てが連携する ことが重要だと考えています。 そこでまず、トップが行うことは、「方向の明確化」と「自ら実行すること」です。 そして、そしてお客様の声が届き、参加するシステムを作り上げるのです。 製造業なら、商品の研究から、開発、設計、製造、販売、カスタマーサービスに至る までお客様の声が届くだけでなく、参加できるような仕組みを考えるのです。 「会社が元気になる=社員が元気になる」 ←→ 「お客様が喜ぶ」 このプラスの循環を業務プロセスとその連携に組み入れるのです。 例を挙げましょう。 有名な話ですが、キーエンスでは、お客様のところに技術者が出向いて、お客様の声 を吸い上げるような仕組みになっています。 また、CANONではトップの方針で事業領域を変更しました。PCから撤退し、 PC周辺機器へシフトしたのです。セル方式も導入しました。 それだけでなく、各部門、職場でチームリーダーの選出と誰もが発言しないといけな い「わいがやミーティング」を取り入れています。 終身雇用守ると公言していますが、「人を切るとよい人から先に辞める」という考え 方に基づいています。人の能力をどれだけ引き出すかのシステム作りを行っています。 更に販売店に関しては、営業を販売店に出向かせ「辻説法」という方式を取り入れて います。(参考文献参照) このようにひとつの方法だけでなく、いろいろな仕組みを組み合わせて利益が出る構 造にしているのです。 ひとつひとつは当たり前のことですが、これを積み重ね、常に素早く修正することが 重要であり、その際に今日のテーマである「お客様は経営資源である」という考え方 も組み入れることが必要なのです。 ▼ それでも大事な「人」 市場の声がまず届くところ、お客様と繋がっているところということで、「顧客サー ビス」を考えてみましょう。 一般にサービスを分類すると、「精神的サービス」「態度的サービス」「業務的サー ビス」「犠牲的サービス」等が考えられます。 企業は利益を上げるために、「業務的サービス」を提供します。 現状では、ここに全てのコストをかけていると言えるでしょう。 ではお客様はどう感じているでしょうか? 実は、お客様は全てを見ています。 お金を払って提供してもらう業務的サービスはできて当たり前です。 製品なら正常に動作して当たり前なのです。 お客様の見ているのはそれ以外です。 そこに他社との差別化が生まれます。 「業務的サービス」以外の、お金の取れないところを如何にマネジメントするかがキ ーになります。 マネジメントの対象は業務プロセスですが、それを行うのは人なのです。 サービスを行うのも人なのです。 人をどう採用するか、どう評価するか、どう教育するか。 やはり全てのプロセスが繋がっています。 そして、その根底には人がいるのです。 もちろん、新しい経営資源であるお客様も人なのです。 ▼ 補足 コトラーについて 少々長くなりますが、コトラーについてご存知ない方に補足をしておきましょう。 コトラーはビジネススクール等で形式知としての教科書的存在です。コトラーを知ら なくても「4P」や「SWOT分析」等の言葉は耳にしたことがある方も多いと思い ます。 コトラーは分類学的視点で考えれば秀逸です。ある意味マーケティングを勉強するの に必須と言えます。ただ、日本の現状に必ずしも完璧にはマッチしない点や、そのま まの形では実践には使えないところもあります。 例えば「客」をどう捉えるか。日本では「客」「お客」「お客さん」「お客さま」 「顧客」「おとくいさん」「上おとくいさん」「VIP」の違いがあり日本人なら使 い分けていますが、コトラーでは単純に「カスタマー」と「ロイヤル・カスタマー」 程度の分類に終わっています。SWOT分析でも、これに上がらなかった項目に付い ては分析されない等の現象には注意しないといけません。 コトラーは必ずしも経営にとって必須ではないことでしょうし、コトラーだけを読ん で、マーケティング戦略は立てられない事実も否定できません。 コトラーをご存知ない方は、この辺りはご一読頂いてご自分で判断してみてください。 そして、何故MBAで教科書的存在なのかを考えてみて頂ければと思います。 コトラーをまったく知らずに素晴らしい経営をされている方もおられますし、コトラ ーの通りに経営して失敗された方もおられます。もちろんその逆もあります。 マーケティングを追求していくと、普遍的なところに落ち着くのでしょう。 しかし、コトラーをご存知ない方には一読される価値は充分にあると思います。 自分の考え方や状況認識の整理に大いに役立ちます。 参考文献を2冊挙げておきます。 ▼ 参考文献 「キヤノン高収益復活の秘密」日本経済新聞社編 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532149533/opc-22 「ビジュアル マーケティングの基本」野口智雄著 日経文庫 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/453210663X/opc-22 「コトラーのマーケティングコンセプト」フィリップコトラー著 東洋経済新報社 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492554769/opc-22 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ (C) Copyright 生島大嗣 HP http://i-kit.jp 連絡先 gikei@i-kit.jp ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【ご意見・ご感想はお気軽に】 tm-mag@freeml.com までお寄せください。皆さんのご意見をできるだけ誌面に反 映させて参りたいと思います。 また、執筆者に質問、あるいは、議論をしたい方は、技術の経営の公式メーリング リスト 技術の経営メーリングリスト http://infoscape.jp/tms/ml.htm に参加の上、メーリングリスト上でお願い致します。 また、メールアドレスを公開している著者は、個人的に質問もOKです。ご遠慮な く、メールをください。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ |
| コラム一覧へ戻る |
|
(c) Japan i-kit All rights reserved. |