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メー ルマガジン コラム バックナンバー |
| アイキット代表 生島 大嗣 がコラムを執筆しているメールマガジンのバックナンバーです。 |
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1. 「技術の経営 − 顧客志向だけでは勝てない」 |
| ◆ 技術戦略思考の実現 ◆ |
| 2003年 9月 17日 |
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| ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 技術の経営−顧客志向だけでは勝てない− ● 1304部発行 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ ■ ◆ 技術戦略思考の実現 第3回 ◆ ■■ ■■ 「戦略が機能しないとビジネス創造は失敗する」 ■■■ ■■■ アイキット <技術戦略マーケティング> 代表 生島 大嗣 ■■■■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 前々回は3層の階層モデルを用いて技術戦略の機能とその大切さについて、前回は技 術戦略がうまく機能する企業環境の重要性について説明しました。 今回は、ひとつの企業ではなく企業や個人間でプロジェクトを組み、新しいビジネス を創造していく場合について、事例を元に留意点について説明したいと思います。 ▼ ある新規ビジネス案件 ある人が半導体アクチュエータの特許を持っているが、これを元にビジネスを起こせ ないかという相談をC社の社長から受けました。 C社はビジネスの種を見つけ、ベンチャー企業が自らの力で株式公開を果たすための 事業計画の策定、資本政策の立案、経営企画、パートナーの紹介など、企業の自立を 支援する業務を生業としています。 以前からC社の抱える技術分野の案件に関してよく相談をお受けしています。 (資本政策:資金調達、株数、株主構成、役員従業員へのインセンティブ付与などを 勘案し、公開審査基準を満たすために立案する、公開前の増資や株式移 動といった自社の資本に関する計画) 半導体アクチュエータの内容を聞いてみると、D氏という方が脱サラ後に研究を重ね て個人で特許を取得したもののようでした。 C社では、今回の技術案件に関してはどう扱っていけばよいか詳細な方針が決まって いなかったのですが、D氏と何度かやり取りした感触から新会社を設立したいとの意 向をお持ちでした。 C社と私の役割分担は、簡単には以下のようになります。 C社:資本政策等の立案 投資を集める活動、補助金の獲得 新会社の設立 生島:D氏の持つ技術内容と特許の確認 新会社のビジネスモデル立案 ▼ 次々と出てくる問題点 C社の社長は出資者候補に接触を取り始め、また補助金等の取得のために精力的に活 動を開始されました。 この段階では、C社の社長は半導体アクチュエータのメーカーを設立するというお考 えでした。 しかし、肝心の問題の半導体アクチュエータについて調査をしていくと以下の問題点 が徐々に明確になっていきました。 <問題点 その1> ・D氏の半導体アクチュエータは、ナノテクにも応用ができるがその分野ではまだ 基礎研究段階である。将来的にはアプリケーションも出てくるであろうが、その ときには大半の特許の期限が切れている。 ・従来の巻線型モータの代替も可能であるが、既に巻線型モータは産業として成立 している。新たな設備投資が大量に必要である。また、サンプルは動作している が、長期間の使用や量産課程で出てくるであろう多くの問題点が不明である。 ・量産のための設備は旧世代の半導体生産ラインで十分であるが、そのラインの確 保のために予想以上の資金が必要になる。 従って、新会社は企業規模から判断してメーカーではなく特許ホルダー&管理会社で ないとビジネス的にはリスクが大きすぎると結論せざるを得ませんでした。 ところが、C社の社長はメーカー設立に向けて既に複数の出資者に対して行動を起こ されていました。 このことから、できるだけ早い時点で新会社の方向性の修正を行って頂く必要があり ました。これには、技術について専門家でないC社の社長に対して、事情を説明して 納得して頂く必要がありました。 しかし、既に精力的に動かれて複数の企業や人を巻き込んでいるC社の社長に説得を 行う難しさがありました。 更に、D氏は情報を小出しにしか出さなかったために、時間の経過と共に以下のよう な問題が次々に浮き彫りになってきました。 <問題点 その2> ・D氏の技術は、少数の学者からの支持はあるものの学会の主流から外れている。 ・特許の大半は出願してから10年経過している。 ナノテク分野を考えると、アプリケーションが出てくる時点では特許は切れてし まっている可能性が極めて大きい。 ・海外特許も含めて特許の発明者はD氏だが、権利者は複数存在している。 権利について係争中のものもある。 ・過去に複数の後見人が存在し関係が拗れている。権利を買い戻すために資金が必 要である。また、現在の後見人との利害関係も不明である。 ▼ 技術戦略の検証 これらの問題点を、「深層−中継層−表層」の3階層モデルに当てはめると次のよう になります。 ┌ ビジネスモデルの構築 表 層 ──┤ 新会社の設立 │ 広報活動 └ etc. ┌ 資金調達 │ 補助金調査、申請 中継層 ──┤ 人的リソースの確保 │ 技術戦略の策定 │ D氏の技術をアピールするための論文作成と学会への発表 │ 学者の協力 └ etc. ┌ D氏の技術内容の確認(学者によるオーソライズ) 深 層 ──┤ 特許の内容確認、権利関係の確認と権利の確保 │ D氏の技術分野の動向調査 └ etc. C社の社長は、ビジネスモデルをメーカーのモデルと仮定して動かれていました。ま た、資金調達、補助金の調査・申請に関しても既に行動を開始していました。 これらは、表層、中継層の部分です。 この部分はビジネスモデルを工夫することで、一見クリアできそうに見えました。 しかし、大きな問題点が集中していたのはは主に私の担当する深層、中継層の部分だ ったのです。 問題点 その2に列挙した、特許の基本的な問題とナノテクに応用する際のビジネス モデルに繋がらないということが問題だったのです。 これらの問題点を抱えたまま中継層、表層の部分を構築しても、全階層でスムーズな 連携はまったく期待できません。 上流の問題を下流で解決しなければならないというビジネスでは避けなければならな いことが発生してしまうのです。 ▼ 実は深層が一番大事 前回お話した、戦略なしに目先の問題を対症療法的に解決しようとするのとはまた違 った問題が起こっています。 今回の事例で起こっているのは、戦略の欠如ではなく総合的な戦略そのものの間違い だったのです。 中継層、表層で既に動かれているC社の社長に深層から発生する問題とリスクを、正 式な調査前に理解して頂くのに一番苦労しました。 結果的には、なんとかC社の社長に事情を理解して頂き、まずメーカーとしての会社 設立を残念して頂きました。 次に、費用のかかる特許調査や大学等を巻き込む前の初期段階で、技術的な問題に関 する状況を説明させて頂き、最終的な判断を仰ぎました。 社長の下された結果は撤退でした。 この事例では、このように初期の段階で決断して頂くことができました。 特に複数の企業や人を巻き込むプロジェクトでは、1企業内のプロジェクトと違って 利害や信用問題が表に現れます。 利害関係や信頼関係に多大な影響を与えるため、ひとつの企業内の責任問題だけでは 済まなくなるのです。 このため素早く情報収集を行い、状況を把握し、早い時期に決断を下すことが重要性 を帯びてくるのです。 以上のように、技術とこれをビジネスに結びつける戦略が成立するかどうかの見極め が、新規ビジネスを展開する上では特に大きなファクターとなり得ます。 従って、適切で有効な戦略策定を初期の段階から練り上げることが、より重要になっ てくるのです。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ (C) Copyright 生島大嗣 HP http://i-kit.jp 連絡先 gikei@i-kit.jp ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【ご意見・ご感想はお気軽に】 tm-mag@freeml.com までお寄せください。皆さんのご意見をできるだけ誌面に反 映させて参りたいと思います。 また、執筆者に質問、あるいは、議論をしたい方は、技術の経営の公式メーリング リスト 技術の経営メーリングリスト http://infoscape.jp/tms/ml.htm に参加の上、メーリングリスト上でお願い致します。 また、メールアドレスを公開している著者は、個人的に質問もOKです。ご遠慮な く、メールをください。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ |
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