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メー ルマガジン コラム バックナンバー

  アイキット代表  生島 大嗣 がコラムを執筆しているメールマガジンのバックナンバーです。


 
1. 「技術の経営 − 顧客志向だけでは勝てない」 

      ◆ 技術戦略思考の実現 ◆


2003年 8月 20日

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 技術の経営−顧客志向だけでは勝てない−          ●1283 部発行
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■       ◆ 技術戦略思考の実現   第2回 ◆
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■■         「あなたの会社は大丈夫? − 技術戦略が機能する環境作り」
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■■■          アイキット <技術戦略マーケティング> 代表 生島 大嗣
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前回、技術戦略の機能とその大切さについて説明しました。今回は技術戦略がうまく
機能する環境の重要性について述べたいと思います。

実際に企業を訪問して気付くのは、戦略なしに目先の問題を対症療法的に解決しよう
としているところが圧倒的に多いことです。現場の方に戦略の重要性をお話すると、
「それは分かるが、うちは特別な事情があってね」と言われるところが多いのです。
(中には、そんなものに興味がないと言われる方もおられますが)
私の実際の仕事も、環境作りから行うことが多くあるのです。

何故戦略が機能しないのでしょうか?
表層でのオペレーションのように、短期的に結果が得られないために現場では軽視し
がちになってしまうのかも知れません。
企業規模が大きくなると経営層の理解が重要になってきます。
具体的事例を基に考えていきたいと思います。


▼ 前回のコラムに対する読者の反応

前回の私のコラムに対して読者の方から数件の反応が返ってきました。今回はまずこ
の内容についてご紹介し、コメントしたいと思います。

1件目は、以下のようなものです。
「営業のリソースが足らないし技術の人員が多すぎるので、技術者を営業に配置転換
しました。しかし、営業に移った元技術者の視点、考え方はすぐに営業のそれになっ
てしまうだけでなく、営業の担当として一人前にはなれず、結局どっちつかずの人材
になってしまったのですが...」

これは、元々の配置転換の発想がまったく違うことが原因だと考えられます。
この会社では、
・移動は一方通行
・営業の戦力強化が目的であり、営業としての成果が問われる
という内容でした。この方法では技術者としてのアイデンティティは失われていきま
すし、本人に不満も残るでしょう。また、人材の選定も適切だったとは思えません。

営業としての成果だけを問うのではなく、市場ニーズに触れるという教育効果を重視
して、その考え方を技術に持ち帰るという発想で行えば違ったものになったのではな
いでしょうか。
勿論、それなりにコストはかかりますし、短期ではコストは回収できませんが、長期
的に見て有効でしょう。これにはトップの判断が重要になってきます。

一番重要なのは、前回述べたように、「深層」−「中継層」−「表層」の各層を連携
する戦略なのです。
この読者の会社では、この戦略がなく、表層でのオペレーションの問題だけを対症療
法的に解決しようとして技術から営業への人員の移動が行われました。この戦略の欠
如がうまくいかなかった一因だと考えます。


もう1件読者の反応をご紹介しましょう。
「技術から営業に移動するというのも肯けますが、それで全ての問題が解決するとは
思えないのですが。企業の活動において何らかのマニュアル的な手法の導入が必要で
はないのですか?」

確かに、私も前回述べた方法だけで全てうまくいくとは思っていません。いろいろな
方策を、その会社の実情にに合わせてバランスよく組み合わせ、状況に応じて修正し
ていくことが必要になってきます。その中の一手法としてご紹介しました。
複雑な要素が密接に絡んでいるのが企業という組織の活動なのです。

また、マニュアル的な手法、即ち業務の標準化についてですが、これもひとつのツー
ルとして業務の適切な部分に導入していくことも大切です。
しかし、ツールを入れるだけで全てうまくいくということはまずあり得ません。全て
の企業には、その企業の特色、考え方、風土等が存在します。これを必要以上に前面
に出すことも問題ですが、これらをまったく無視した標準化手法導入だけでもうまく
はいかないでしょう。

例えば、設計部門でうまくいった方法が、基礎研究をしている部門でもそのまま有効
とは言えないことが多いのです。組織としての業務の一部にうまく合った手法を導入
することで効率化できる部分は多いのことも確かです。従って、その見極め、コンセ
ンサス等も大切になります。

ご存知の方も多いでしょうが、全社的に導入する経営手法として「シックスシグマ」
も有名です。サムソンが導入していますし、日本でも大手のメーカーの一部にも導入
されています。興味がある方は参考文献を参照してください。

さて、今回の本題に入りましょう。


▼ B社のWebビジネス

あるメーカーから分社化され、昨今の例に漏れず黒字化して完全独立を迫られている
B社では、ある大学と連携することで人材評価のためのシステムのコア技術を得てい
ます。これを利用して人材評価システムを作り上げ、企業向けに人材評価のビジネス
を従来から行っていました。
更に、最近これをコンシューマー向けのビジネスとしてWeb上での展開を開始した
のです。ところが、この部分がビジネスとしてまったく収益を上げていないだけでな
く、システムにもバグがあることが判明したのです。

システムのバグは、20件の同時アクセスで動作しなくなったというものですが、ど
うやら以前からこのバグは存在していたらしく、数件のアクセスでも動作しなくなる
という経緯があったらしいのです。ところが、B社には正確な履歴は全く残っていま
せんでした。

B社がこのシステムを発注した大手コンサル企業のC社に、バグについて問い合わせ
ても、1ヶ月経ってもまったく返事がなかったのです。
この問題が表面化した段階で、バグの修正と一部の機能の簡略化という修正を行うこ
とになり、私のところにも相談がありました。

このWeb上で行っているB社のビジネスですが、ビジネスとして機能していない状
況で、利用できるコア技術を基に、思い付きだけの机上のビジネスモデルを作り上げ
ていたのは明らかでした。
また、多くの会員を集めて表面上はうまくいっているように見えるのですが、会員は
社員が総出で知人、縁故者にダイレクトメールや電話で入会を依頼したものだったの
です。どうやらB社は大企業病にもかかっているらしく、上層部や親会社に対しての
アピールを第一に考えて動いているようでした。

これは、「深層」−「中継層」−「表層」の構造の中で、中継層が戦略として考えら
れていないだけでなく、思いつきだけで表層のビジネスを作り上げて、それがうまく
機能しない典型的な状況と言えるでしょう。


▼ B社の対応

B社が用意したバグ修正と機能の一部簡略化のための予算は、大手コンサル企業に依
頼できる規模の予算額でした。
B社に対する私からの提案は、これを実力と実績のある大手ではないSIerに依頼する
ことでバグ修正と機能の一部簡略化に必要な金額を予算の数分の1に圧縮し、余った
予算で徹底したマーケティングを行いビジネスモデルを根本から練り直し収益の上が
るものに作り変えることでした。

ところがB社からの回答は、今回は急いでいるのでビジネスモデルには手を加えず、
バグ修正と機能の簡略化だけを行うというものでした。発注先はC社で、現在のシス
テムのバグに対する責任も問わないようでした。バグの修正では回答をまったく寄越
さなかったC社でしたが、新たに予算がついた時点で飛びついたようです。

B社の担当者の行動は、やはり大企業特有のものと言えるのではないでしょうか。
発生した問題とその解決を戦略的に捉えるのではなく、与えられた予算で対症療法的
に対応するという行動に出たのです。B社の担当者にしてみれば、上から言われた以
上の行動を取って失敗した場合の責任は取れないという論理が働いたのでしょう。
しかしビジネスという視点で捉えた場合、この行動はB社に利益をもたらすものとは
まったく言えないのです。


▼ 市場原理、本音で行動できる環境の大切さ

市場で当り前のことが、ある程度の規模を持った企業に取っては当り前ではないとい
うことをよく見かけます。これは企業にとって余裕があった時期には、まだ許された
のかも知れませんが、現在の状況は少し前とはまったく変わっています。
このような無駄は今では許されません。B社でも黒字化が緊急の大きな目標として取
り上げられているのですが、B社の担当者の取った行動は違っていました。

人間の問題意識に対する反応は次のようなものでしょう。

1) 問題意識を持って積極的に行動する
2) 問題意識は持っているが、行動すれば不利になるので気付かない振りをする
3) 問題意識を持てない(問題に気付かない)

3)は別の対応になるのでしょうが、2)の人を1)に引き上げるにはどうすればよいので
しょうか。
人間は、問題意識を持って積極的に行動すればそれが報われる環境にないとなかなか
行動できません。成果主義と言われても、目標として挙げていない内容に対して成果
を出しても認めてもらえない状況では動かないものです。
ましてや、問題意識を持って行動しても、そのために不利な状況に陥る人を目の当た
りにする状況下では 2)の人間を1)に引き上げることはなかなか難しいのです。

企業内で本音で行動できる環境、制度、風土を作り上げることが、B社のような問題
を解決するために必要です。
これがあって初めて、問題に対して単なる対症療法的に対応するのではなく、その企
業に取って一番有効な戦略を立てられるのです。

深層を表層に繋ぐ、即ち技術をマーケットに繋ぐ技術戦略が重要なのですが、これが
機能する環境なしには戦略論は無意味になってしまいます。
今日から始めても遅くはありません。まず自分から会社を変えていく一歩を踏み出し
てみませんか。


▼ 参考文献

ピーター・S・パンディ他「シックスシグマ・ウエイ―全社的経営革新の全ノウハウ」
日本経済新聞社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532148790/opc-22

シビルチョウドリ「シックスシグマ」翔泳社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4798100714/opc-22


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