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メー ルマガジン コラム バックナンバー

  アイキット代表  生島 大嗣 がコラムを執筆しているメールマガジンのバックナンバーです。


 
1. 「技術経営メール」 

      ◆ 生島の技術戦略思考 ◆  第4回


2005年 11月 15日

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┃   技術経営メール   第32号   2005年11月15日   日経BP社     ┃
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■生島の技術戦略思考 第4回 自然に人が動く仕組みを作る■
私は何事においてもバランスが重要と思っている。例えば、物事を眺める場合、
現場の視点と俯瞰的客観的に眺める視点を併せ持つように心がけている。

考え方においてもバランスは重要だ。
技術経営を考える際には「戦略」と「マネジメント」の両面から捉えるようにする。
「戦略」と「マネジメント」の両方共大事なのである。

本連載では技術経営の二本柱を「3層構造の確立」と「人・組織の問題解決」とした。
3層とは、深層、中継層、表層である。
深層は、基礎研究開発力や知的財産権の獲得、人材の獲得と教育、社内風土など、
中継層は、製品開発戦略、組織や制度作りとその運用、
表層は、ビジネスモデルの確立、マーケティングやセールスの工夫、である。
3層構造は戦略を具体化する思考のフレームワークであり、
見方によっては事業戦略の仕組みそのものである。
もう一つの「人・組織の問題解決」はマネジメントに関連する。

企業はビジョンと目的をもっている。
目的がさらに具体化されて目標となり、目標を達成するために様々な仕組みが
構築され、運用されている。
こうした企業の仕組みは、環境の変化等で、目的と整合しなくなることがある。
表面的な仕組みばかりに目が行き、目的が変化したことを認識できない場合もある。

仕組みの中でも「3層構造」、特にビジネスモデルに関する仕組みは、
修正が比較的多くかけられるところだろう。ここがうまく回らないと、
ビジネス自体が停滞し、収入が減るから放ってはおけない。
しかし、「人・組織の問題解決」の部分に関してはどうだろう。
この部分の見直しは案外後手に回っているのではないか?
ここで全体のバランスが崩れてしまうことが多い。

今回は、人・組織の問題解決に密接に係わってくる、
マネジメントの仕組みについて考えてみたい。

この仕組みですぐに思いつくものは、評価制度など様々な企業の制度だろう。
次に、企業に存在するルールがある。慣例的なものも数多くあるだろう。
さらに仕組みという言葉にはそぐわないかもしれないが価値観や企業文化がある。
これらは企業の生産性だけでなく、創造性や企画力に結びつくので軽視できない。

具体例を考えてみよう。例えば営業の組織と評価制度である。
個人の営業成績が評価される制度を採用している組織が、戦略的な理由から
組織的な営業に取り組もうとした場合、何が起こるであろうか?
個人のパフォーマンスが最大になることを狙った評価制度の下では、
組織のパフォーマンスが最大になるように行動しても評価されない。
これでは、組織のパフォーマンスを上げる方向に、誰も動かない。

個人営業を重視してきた組織では、長年にわたり採用の段階でも協調性よりも
競争を好む者が多く採用されている。その後の教育や経験においてもそれが
強化されており、これらが総合的に作用して企業文化を形成している。
組織が急には変われない理由がここにある。

年功序列制度を考えてみよう。日本は長年、年功序列制度を採用してきた。
これは一種のみなし成果主義であり安定した人的リソースで共通の価値観を持つ
場合には機能した。企業は安定した人的リソースの確保を考え採用をしてきた。

これに対して「人材」と「知識」と「お金」が循環する米国の企業では、
年功序列の制度などなく常に人材の入れ替わりが起こっている。
日本にも進出しているある大手米国企業では、平均在籍年数が5年である。
安定していないが、その分停滞による弊害は少ない。

このような仕組みの違いから、組織や人の行動パターンは大きく影響を受ける。
長年に渡り形作られ性格付けされた組織において、上位の目的が変わったこと
により目標を変更したとする。
これに伴って仕組みを変更することが必要だが、なかなか難しい。
目に見えない暗黙の了解や企業文化に起因する仕組みについては、
往々にして変更作業が忘れられるからだ。

事例を考えてみよう。

ある技術系の企業B社は先代のワンマン社長が中央集権的な統治を続けたため
自分で考えない、命令待ちのイエスマン社員ばかりになってしまった。
新社長が改革を始めているが、長年に渡り機能してきた制度やルール、
その間に蓄積された暗黙のルールの類、価値観が改革の障害になっている。

B社の場合、一気に変化させるのは難しい。社長が「自律的に動くように」と
言っても社員は見事なほど動かない。
B社は、エンジニアの仕事を支援する各種ツールを用意し、プロジェクト運営の
ルールを作るなど、息の長い取り組みを進めている。
社員が自分で動いた方が得をする仕組みと制度を導入し、
少しずつ社内の価値観や文化を変えていこうとしている。

もう1例紹介しよう。

大企業のC社は、大きな新事業を本気で手掛けて欲しいと考え、社内ベンチャー
制度を改革した。それまでは会社に在籍したままベンチャー企業を起こすことが
可能だったが、改革後は退社しないと起業できないルールになった。
その結果、数年をかけて、やっと1件の応募があったという状況に陥った。
C社に入社してきた社員は会社を辞めることなど想定していない。
このことをC社は忘れていたのである。

「こうすべきだ」だけで人は動かない。
企業は、多様な人々で構成される組織であり、長年にわたる様々な仕組みと
プロセスを持つ。そうしたことの蓄積により、企業文化が形作られる。
それだけに、組織を効率よく運営しようとすると、べきだ論は通用しない。
人が自然と動いてしまう仕組みを導入し、企業を取り巻く環境に応じて
徐々に仕組みを修正していくのが有効な答であろう。

生島 大嗣 (いくしま かずし)
アイキット代表
http://www.i-kit.jp/

大手電機メーカーで映像機器などの研究開発、情報システムに関する企画や
開発に取り組み、様々な経験を積んだ後、独立。
既存企業、ベンチャーのビジネスモデルと技術の評価、技術戦略と経営に関する
コンサルティング、講演などに携わる。

執筆しているコラムのバックナンバー
 http://www.i-kit.jp/business/merumaga.html

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■前回記事再掲・長い物には巻かれよ■
日経ビズテック第9号の特集「停滞産業復興計画」を読まれた読者から次のような
ご意見をいただいた。

「構造改革賛成」といいながら、既得権益を守るために郵政民営化に反対する政治家、
政策も対案も作れない政党ばかりの日本国。
過去の栄光だけを誇る役員が居座り、時代の波に乗り遅れ、ビジネスチャンスを
ものにできず、衰退していく大企業。
話が大きくなりますが、時代がどれだけ変わっても、日本人の根底にあるのは、
「出る杭は打たれる」「長い物には巻かれよ」といった意識です。
こうした、自分の個人権益の阻害要因となるものを排除する意識を取り払って、
新しい風を吹かせないと、「変革」は難しいでしょう。
悪しき日本の風習を変えないと、国民が国外脱出を考える悲しい国になってしまう
と思っています。

一時期、筆者は「日本では」あるいは「米国では」と言い方をなるべくしないよう
心がけていた。日本企業といっても千差万別であり、優秀な企業もあれば、
ダメな企業もある。これらをまとめて論じても意味がないと考えたからだ。
しかし、技術経営というテーマをずっと考えていると、日本あるいは日本人と
西欧あるいは西欧人の違いをどうしても意識するようになってくる。

「長い物に巻かれよ」は間違いなく、日本の特徴の一つと言える。
読者が指摘するように、この風習は変革の阻害要因となる。
では、とにかく長い物に巻かれないようにすればよいのか。
話はそれほど単純ではない。自分を殺して長い物に巻かれる生き方が美しい時もある。

難しい問題に突き当たったので、尻切れトンボだが、今回はここで終わりとする。

技術経営メール責任者
谷島 宣之(やじま のぶゆき)
mailto:gkm@nikkeibp.co.jp

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■■日経ビズテック第9号発売中■■
技術経営戦略誌「日経ビズテック」第9号は一般書店、Web書店で発売しております。
特集は「停滞産業復興計画」と「広島発祥企業の研究」です。
 http://bpstore.nikkeibp.co.jp/item/main/148222224030.html

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■■技術経営関連サイトのご案内■■
日経ビズテックは以下のサイトで「技術と経営」にかかわるコラムを発信しています。

『経営の情識』(経営とITを考えるコラム、日経ビジネス読者限定)
★11月11日更新 「システム障害を巡る記事の書き方、教えます」
 http://nb.nikkeibp.co.jp/

『経営の情識』(日経ビジネス読者向けコラムを別途公開)
★近日更新 「いよいよ幕開け、日本版SOX法を巡るドタバタ劇」
 http://nikkeibp.jp/style/biz/management/yajima/

『さよなら技術馬鹿』(技術者向けサイトTech-On!におけるコラム)
★11月11日更新 「偶然の一致か、部下への批判か、世阿弥イラストの謎」
 http://techon.nikkeibp.co.jp/column/yajima/

『情識』(情報技術の常識を考えるサイト、本メール責任者谷島が運営)
★11月11日更新 「お詫びと近況報告」
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『記者の眼』(ITプロフェッショナル向けコラム)
★10月12日更新 「PMの仕事はプロジェクトの前に終わる」
 http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/OPINION/20051012/222660/
 
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