アイキット ソリューションズ

   
メー ルマガジン コラム バックナンバー

  アイキット代表  生島 大嗣 がコラムを執筆しているメールマガジンのバックナンバーです。


 
2. 「ビジネスにマーケティングを走らせよ う!」

      ◆ 技術屋の視点 ◆


2004年 2月 6日

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       『ビジネスにマーケティング☆を走らせよう!』
             (週刊☆ビジマ)

    eビジネス,マーケティング,経営戦略を考えるためのヒント

   http://www.mankai.biz/        2004/02/06発行 No.097
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☆『技術屋の視点 〜 ビジネスモデル・技術評価の裏側 〜』

       第14回 「べきだ」論では人は動かない

                    技術戦略コンサルタント 生島大嗣
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アイキットの生島です。

今回は、人を知らず知らず動かしてしまう仕組みについて考えてみたいと思いま
す。この仕組みを知っていると、ビジネスだけでなくあらゆる側面で人を動かす
ことができるようになるのです。


よく、「会社のルールが守られない」とか「ビジネスの仕組みを作ったが成果が
出ない」ということを耳にします。
この二つは、一見異なる原因によるように見えますが、実は根っこは同じです。
どうしてこのようなことが起こるのでしょうか?

最も大きな原因に挙げられるのが、人の行動を理解していないということなので
す。人の本質を無視して、「〜するべきだ!」と、いくら言っても人は動いてく
れません。

このような間違いは、身近なことがらだけでなく、ビジネスモデルを作る際にも
よく目にします。この場合は、ビジネスそのものが失敗する一因となってしまい
かねません。

人がそう動いてしまう、動かざるを得ない仕組みを仕掛けることによってこれら
を回避することが可能になります。


ソビエトという国家の例を考えましょう。

共産主義というものは、理想そのものは悪くなかったのでしょうが、実際はうま
く人が動かず、最後は経済が破綻してしまいました。

どんな社会でも、個人は全体よりも個人の利益を最大にするように動きがちなも
のなのです。集団、組織の動きは、このことに大きく左右されます。

このことは、往々にして個人に、イデオロギーや主義、法律、規制等の人間の作
った制度を超えて行動させてしまうような力を持つものなのです。
詐欺や汚職、産業スパイのような犯罪も絶えることがありません。



▼ 人は短期的な利益を優先しがち

人間というものは、短期的に自分に一番利益がもたらされるように動きがちだと
いうことを理解しないといけません。
これを無視して仕組みを作ってしまうと、期待した効果が得られないのです。

この「利益」には2種類あります。

まず、「単純に利益が得られるかどうか?」
そして、「ある行動により得られる利益が短期的なものか長期的なものか?」

これによって人間の行動は変わってきます。


「短期的」な利益の分かり易い例として学生時代の勉強について考えてみましょ
う。

みなさんも経験がおありだと思いますが、勉強をした方が自分のためだと分かっ
ていながらなかなか勉強が手に付かず遊んでしまったということがありませんで
したか?

よほど勉強が好きという人以外は、ついつい先に遊んでしまい勉強は後回しにし
てしまいがちです。
長期的には勉強したほうがよいと分かっていながら、なかなか人間というものは
長い目で見てコツコツと努力するのは難しいものなのです。



▼ 人は個人的な利益を優先しがち

行動することによって利益が出ない場合はどうでしょう?
いくらそうする方が「組織にとってためになる」、「ポリシーに沿っている」と
分かっていても、なかなか人はそのように動けるものではありません。

京都てくてくの足立社長が、学生の行動基準の大きなものは「だるいか、だるく
ないか」というものであると述べています。

何を優先するかは個人的な価値観によって違いますが、足立社長の例に見られる
学生のみなさん場合は、長期的な利益(数百円)よりも「だるくない」方を選ん
でしまうということが優先されます。
この行動原理を読んで、彼はビジネスモデルをうまく作られています。


さて、企業や自分の所属する部署に目を向けてみましょう。
そこに対処すべき問題がある場合、普通人はどう行動するのでしょうか?

1) 問題意識を持って積極的に行動する
2) 問題意識は持っているが、行動すれば不利になるので気付かない振りをする
3) 問題意識を持てない(問題に気付かない)

1) の場合は何も心配することはありませんが、大抵の場合は 2) か3) のレスポ
ンスではないでしょうか。
特に 2) の場合は、言い出しっぺが損をする構造が企業にはよく見受けられるの
です。

一歩踏み込み、リスクを取って行動した社員が得をする、即ち
「周囲の協力が得られる」
「評価に反映される」
「報酬アップが期待される」
ということがあれば問題はありません。

しかし大抵の場合、「問題を指摘する&行動する」ことにより、
「周囲が無視する、避ける、疎ましく思う」
「評価されない」
「報酬に反映されない」
「失敗したときに、責任を追及される」
というようなことが起これば、人は行動しなくなります。
即ち、人は組織より個人の利益を優先させてしまう仕組みがそこにあるのです。



▼ レイアウトフリーオフィスが機能しない


ここで例を挙げましょう。

ある大企業が個人のデスクを廃してレイアウトフリーのオフィスを導入しました。
社員一人ひとりにカードを持たせ、そのカードをレイアウトフリーのオフィスの
机に配されているリーダーに差し込むことで、そのデスクは一時的にその人のデ
スクとして認識さるシステムです。

カードがあることろにその人が在籍しているという「予想」のもと、在籍、離籍
の管理から電話の転送までが行われる仕組みでした。

ところがこのシステムを運用して間もなく、電話をかけても本人はそこにいない
ということが頻発しました。
調べてみると、最初の内こそ全員がポリシー通りに行動していましたが、次第に
それが守られなくなっていたのです。

出勤してきた社員は、次第に自分専用の机を決めてしまうようになり、また離籍
の際もカードは挿したまま日常的に席を離れるようになったのです。
つまり、以前の状態に戻ってしまったのです。


この例は、人はそうするべきだと定めたポリシーよりも、もっと個人的な利益を
優先しがちであるという典型的な例です。
この場合の個人的利益は、単純に「便利」ということでしょうが、ネガティヴな
面として、「より邪魔くさくない」選択をしたと言えるでしょう。


では、最初のポリシー通りにレイアウトフリーオフィスを使わせる、使ってもら
うにはどうすればよいのでしょうか?

まず考えられるのが、ポリシーに従わないとペナルティーを課すことです。
これは誰でも思いつくことでしょうが、あまりよい方法とは思えません。
ではどうすればよいのでしょうか。

一番よいのは、強制させられていると思わせないで、ポリシーに従うように誘導
してあげることなのです。

例えば、許可された人のみが決められた部屋に入退室を許すような入退室管理シ
ステムが導入している場合は、そのシステムと連動させる方法があります。
先のレイアウトフリーの例の在籍を示すカードを入退室システムのカードと共用
するようなシステムにすれば、席を離れるときはカードを残したままにできなく
なるでしょう。



▼ マッチングイベント

よく「技術マッチング」や「販路マッチング」のイベントが行われています。
私は、この手の単純なマッチングのみのイベントは効果がないと常々言ってきた
のですが、いまだにあちこちの公的機関で行われています。

先日もあるお役所の外郭団体の方からあるイベントのコーディネータを依頼され
ました。ご担当の方の事業の説明をお聞きしたのですが、その際にこう申し上げ
ました。
「マッチング会を始められてから数年間経ちますが、事業提携等の成果はなかっ
  たのではありませんか?」
図星でした。ご担当の方は、「それが大きな問題なのです」と答えられたのです。


原因は簡単です。
この手のマッチング会は、徹底したフォローがなされない限り単なる名詞交換会
に終わってしまいます。名刺ばかり集めても役には立ちません。必要なのは行動
ですが、人間というものはなかなか自分から行動を起こせないものです。
この場合、この行動を促すためのフォロー体制が必要になってきます。

よくフォローの仕事もお役所関連の方に依頼されるのですが、その際の報酬は大
抵の場合雀の涙程度です。こんな仕事ばかりを請けていたのでは、残念ながらこ
ちらが生活できなくなってしまいます。

当たり前のことですが、やはり正当な報酬が用意されないと優秀な人材は集まり
ません。これも市場原理です。

もっとも最近は成果が出ないということに気が付き、これを改善しようという動
きが役所からも出てきています。
効果を期待するには、それに見合うだけの市場原理に則った徹底したフォロー体
制が必要なことに、やっと気が付かれてきたようです。



▼ 市場原理を導入しよう

市場では力関係もありますが、やはり行動しただけの報酬は約束されます。
もし妥当な報酬が支払われなければ、得られるサービスの質は当然低下します。

この簡単な原理が自由経済の市場原理であり、そしてこの市場原理は、人間の本
質的なところを拠り所としているのです。
その本質的なところとは、「人は個人の利益を優先しがちだ」という原理そのも
のなのです。

これを無視した組織運営は、効率の低下を招いてしまいます。
人の本質を無視した組織の仕組みは、これからの社会ではやがて破綻するのでは
ないでしょうか。


大企業内やお役所の内輪の論理で物事を進めるのではなく、組織の内部運営にも
適度な市場原理を導入することをお勧めします。
この原理を逆手に取ってうまく人が動いてくれるシステムを作り上げるのです。

人間の本質に沿うことは、組織では人の評価であり、報酬であり、やりがいを人
にもたらすような制度、仕組みそのものなのです。

ビジネスにおいても、人の行動原理、本質を無視したビジネスモデルになってい
ないかを見極めることが大切になります。

みなさんの会社、組織、ビジネスでは、そうならないような仕組み作りと運営を
お願いします。



■ 筆者プロフィール
技術戦略、経営の総合コンサルティング
アイキット 代表  生島 大嗣(いくしま かずし 本名 生島 一司)
http://www.i-kit.jp/

<略歴>
大手家電メーカーの研究開発部門にて、ビデオ、液晶等映像機器、地上波ディジ
タルテレビ等の研究開発、コンピュータシステムに関する企画、開発等に取り組
む。独立後、ベンチャー企業や既存企業の技術、新規ビジネスモデルの評価及び
構築に関するアドバイス、講演等に携わる一方、国内外の企業間ビジネスアライ
アンスコーディネータとして活動している。

大阪市立大学 工学部 非常勤講師(ベンチャー技術論 「技術と経営」担当)
大阪商工会議所 ITビジネスフォーラム コーディネータ

ご意見、ご感想、コンサルティングの用命等は以下のメールアドレスでもお待ち
しています。
mailto:bijima041@i-kit.jp

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       『ビジネスにマーケティング☆を走らせよう!』
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   ・発行部数
     まぐまぐ: 744部(ID:0000106852)
     melma! :  83部 (ID:m00086769)
     独自配信:  15部
     発行部数: 842部(2004年2月6日現在)

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   編 集:小山 龍介   mailto:koyaman@koyaman.com
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