アイキット ソリューションズ

   
メー ルマガジン コラム バックナンバー

  アイキット代表  生島 大嗣 がコラムを執筆しているメールマガジンのバックナンバーです。


 
2. 「ビジネスにマーケティングを走らせよ う!」

      ◆ 技術屋の視点 ◆


2003年 10月 22日

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       『ビジネスにマーケティング☆を走らせよう!』
             (週刊☆ビジマ)
                             
    eビジネス,マーケティング,経営戦略を考えるためのヒント

   http://www.tokeidai.net/works/    2003/10/22発行 No.059
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☆『技術屋の視点 〜 ビジネスモデル・技術評価の裏側 〜』第9回

          個人の創造力を高める  <中編>
           〜まず日本の組織を知ろう〜

                    技術戦略コンサルタント 生島大嗣
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アイキットの生島です。

前回、「個人の創造力を高める  <前編> 遊び心と創造力」と題して個人に焦
点を当ててお話しました。その個人が組織に所属している場合には、を生かすも
殺すも組織次第です。

この組織とマネジメントについて、最終的に考えていきたいと思っていますが、
その前に、この準備として今回は日本の組織の持つ性質について考えていくこと
にしましょう。

(お断り:前回、前編と後編に分けてお届けすると書きましたが、話が長くなる
  ため前編、中篇、後編の3篇に分けてお届けします)


▼ 日本の従来型組織マネジメントの基本形を認識しよう

最近よく「グローバルスタンダード」という言葉を耳にします。「アメリカ型の
方法が世界標準で一番よい。これから外れたものは時代遅れで悪いやり方だ」と
いうようなイメージで語られる場合も多いのです。

何故そのように言われるのでしょうか?
そして、それは本当なのでしょうか?

例えば、国を動かすシステムを考えてみましょう。日本では、政策を官僚が作り
大臣が承認して動いています。上は承認するだけで、方針立案まで含めて実務は
全て官僚が行います。ある意味大臣が官僚に従うのです。

これに反して、イギリスは官僚が大臣に従うと言われています。大臣が代わって
も官僚はそのまま残ります。アメリカはどうでしょう。アメリカでは大統領が変
われば、スタッフは全て入れ替わるのです。


このような関係は、国のトップだけでなく企業等いろいろな場面で遭遇します。
よくこんな話を聞きませんか?

ある日、新任の部長に電話がかかってきます。
「ああその件ですか。そうですか、毎年うちでやってるんですか。分かりました
任せてください」
そう言った部長は、ある女性社員Iさんを呼びこう指示します。
「いつもうちでやっているこの件だが、頼むよ」

指示されたIさんも転勤してきて間がなく様子が分かりません。勿論部長に聞い
ても段取りは分からない。周りの人に聞くと、いつも担当していた人が急に退職
して誰もその業務を引き継いでいないことが判明しました。

それからのIさんは、関連部署を回り、電話をかけ、過去の資料の断片を集めて
業務の掘り起こしから始めました。なんとか間に合い部長に報告すると、部長は
電話で
「あの件だが、ちゃんとやっておいたよ」
と自慢気に連絡したのです。

このような話はみなさんも経験しておられると思います。日本では現場がマネジ
メントの機能をある程度、吸収しているのです。


上の話のキーワードは「引き継ぎ」です。

「週刊☆ビジマ」の編集長コヤマンは、「アメリカの会社では引き継ぎというも
のがなく驚いた」と言っていました。


▼ アメリカ型組織は「マネジメント」が命

よくアメリカのドラマや映画でこういうシーンを見たことがありませんか。

  ある日出勤してくると、自分のコンピュータのIDとパスワードが使えなくな
  っている。マネージャーのところへ出頭するようにというメモがあり、同様の
  扱いを受けた社員と一緒に廊下へ出ると警備員がマネージャーの部屋以外へ行
  くルートを塞いでいる。マネージャーからは首を言い渡され、私物を整理する
  時間的猶予だけ与えられ、私物を入れたダンボール箱を持って建物から放り出
  される。

今年、Xboxの日本での開発メンバーはこれと全く同じ扱いを受けたとの記事を見
ました。引き継ぎはまったくありません。これはどうして可能なのでしょうか。

実は、アメリカでは業務が単純化、モジュール化(部品化)、マニュアル化され
ており、引き継ぎなしでも回るようにシステム化されているのです。更に業務研
修等も充実しており、研修を受ければ誰でも業務をこなせるようになっているの
です。そのために、最近ではe-Learning等も広く取り入れられています。

この反面、組織の長であるマネージャーは、大きな裁量権を持ち、同時に責任と
義務を負っています。マネージャーが部品化したモジュールを動かすのです。も
ちろん、報酬も多い。経営トップともなると莫大な報酬が得られます。

これは、マネージャーや経営トップが人的資源として流動化しており、市場があ
るからなのです。成績を残さないといつ首になるかも知れませんが、優秀だと自
分を他社に売り込めるのです。どんな組織にいたかではなく、どのプロジェクト
で何をしていたかで判断されるのです。

このような土壌の形成なしで、いきなり全てにアメリカ型マネジメントを単純に
持ってきてもうまく回りません。


しかし、ビジネスの表層を構成するモジュールでは様子が少し違ってきます。3
層構造の表層のオペレーション部分では、経営トップやマネージャーとは違って
人的資源の流動化は実はもっと簡単です。

日本でも、この領域では取り替えが可能な人材の流動化が始まっています。企業
では人材を育てるより「即戦力」になる人材を求め、速いスピードでオペレーショ
ン部分に投入しています。もっとも、いらなくなったら即、切られるのもこの部
分の人材なのです。


▼ 日本特有の現場主義とは

日本では、よい意味でも悪い意味でも「現場主義」ということがよく言われます。
これは業務の単純化、モジュール化(部品化)、マニュアル化が行われておらず
現場がこれを吸収しているのです。

日本では、マネージャーは本当の意味でのマネジメントをしていないのです。こ
の結果、アメリカに比べ報酬は低いけれど、マネージャーやトップの地位は比較
的に安定しており、マネージャーや経営トップの流動化も起こりませんでした。
少なくとも今までは、この方法でうまく回ってきました。

右肩上がりで、組織の目標が単純な間はこの方が効率がよかったのです。放って
おいても、現場が考えちゃんと業務をこなしてくれたのです。

ところが、この現場主義とも言える方法では、昨今うまく組織が回らなくなって
くる事態があちこちで生じてきました。従来の成功事例への固執も一因でしょう
し、変化が現場で吸収できる量を大きく上回ってきたことも原因でしょう。

この場合には、適切なマネジメントを導入し、優秀なマネージャーが事態を把握
して方向性を決めて行かなければなりません。一見アメリカ型です。しかし、形
だけアメリカ型を導入する企業が多いのです。それではどうすればよいのでしょ
うか。


▼ アメリカ方式の単純導入だけでよいのか 〜 3層構造の維持の大切さ

最近は、「アウトソース」や「派遣社員」が大流行りです。新しく事業を展開す
る場合や、新しい会社ではこれらをうまく取り入れることによって効率を上げる
ことが確かに可能です。現に最近では広く行われています。しかし落とし穴がい
くつかあるのです。

「深層」−「中継層」−「表層」の3層構造について何度もお話していますが、
アウトソースや派遣社員は表層のところで活用して初めて有効なのです。よく言
われることなのですが、企業のコアコンピタンスの部分はアウトソースや派遣社
員に任せるのではなくここは自前で持たなくてはいけません。しかし、これだけ
で充分でしょうか?

5年前に、Oracleのイベントで成功事例としてユニクロの例が報告されていまし
た。SCM(サプライチェーンマネジメント)と呼ばれる、供給側、即ちサプライ
(納入)業者とネットワークで結ばれた生産とを一体化するシステムについての
発表でした。

「現在の成功事例は分かりました。非常に効率的だということは理解できました
が、世の中が変化したときにユニクロが消費者に提供するサービスそのものを変
える必要があると思います。次ぎに何を用意していますか?」とユニクロの社員
に質問したのです。しかし、彼は私に対して何を訳の分からないことを言ってい
るのだという反応しか示さなかったのです。

私は、深層から中継層を経て次々と世の中に受け入れられるサービスを提供しな
いといけないという意味で言ったのですが理解されなかったようです。ですから
ユニクロは、次に野菜を売るしかないのです。これはとてもオリジナルの深層→
中継層→表層の連携から出てきたものとは考えられません。

このような深層から出てきたものでない、単に表層での効率のよいシステムは、
変化には弱いのです。これを認識して次の表層でのビジネスモデルを次から次へ
と用意しておかないと生き残っていけないのです。


▼ アメリカ方式の単純導入だけでよいのか 〜 派遣とアウトソースの前に

アメリカ型マネジメントの表面の事象だけに目を奪われてはいけません。日本の
組織は、現場がノウハウやマニュアルを潜在的に持つということを忘れてはいけ
ないのです。最近では、これを形式知、暗黙知という言葉で表すことも流行って
います。

よく言われるように、何がコアコンピタンスなのかを認識してこの部分は自社で
持ち続けるということは勿論ですが、更に大事なのは、単純化、モジュール化、
マニュアル化というプロセスを経ずにアウトソースや派遣社員の導入を行うとプ
ロセスの影に隠れた大切なものを失う危険があります。

更に、単純化、モジュール化、マニュアル化には、相当の時間とコストが必要で
あるという認識も重要ですし、また単純化、モジュール化、マニュアル化だけで
は処理できないところがあるという認識も大事なのです。


セブンイレブンでは、マニュアルに従った基本的な挨拶以外に、「おはようござ
います」「おやすみなさい」「行ってらっしゃいませ」「お疲れ様でした」とい
うような来店頻度や時間帯に合わせて、マニュアルにない親しみやすい挨拶に変
化させるように指導しているという記事が載っていました。

これは顧客サービスに対する社員教育の問題ですね。しかしこれは、昔から商売
人が基本として行ってきたことであり、本来は今更取り上げないといけない内容
ではない筈です。こういう内容が取り上げられなければいけないということ自体
に対して、私は強烈な違和感を覚えました。

本質を忘れた単純化、モジュール化、マニュアル化の弊害のひとつでしょう。


メーカーであるJ社のある事業部では、自社の生産ラインの運営と管理を行うヒ
ューマンリソースを全て外部に委託しました。組織ごと派遣社員を入れたのです。
これが成功し、コスト削減で大きな効果を生みました。
ところがこれが成功したために、このメーカーでは他の部署にも外部委託を広げ
たのです。お客様係も外部委託にしましたが、その品質が悪いのです。
最近、このメーカーのデジカメのお客様係の対応に対する不満がインターネット
上のある掲示板によく載っています。その内容は、以下のようなものです。

  「いつもの如く、窓際族のおじさんが電話応対に出てマニュアル通りの
   受け答えしかしない。もう諦めているが、それでもなんとかならないものか」
  「関西弁丸出しで、ちゃんと教育されているのだろうか」

この例は、単純化、モジュール化、マニュアル化はできているのでしょうが、接
客という本質を忘れてしまい、それをどういう訳かいつまでも修正できないとい
う愚かな例なのです。


▼ 今日のまとめ

日本の特殊事情として、現場がノウハウやマニュアルを目に見えない形で持って
います。これを理解せずに、単純にアウトソースや派遣を入れると大きなしっぺ
返しをくらいます。

単純化、モジュール化、マニュアル化のプロセスが大事です。このプロセスを忘
れると、大事な「宝物」を失い、危険な「爆弾」に気が付かないことになってし
まいます。

また、ビジネスの基本は時代が変わっても変わりません。アウトソースや派遣も
ビジネスの基本を押さえて行わないと意味をなさないのです。


▼ 次回の内容

今回は、個人と組織の関わりをお話する準備として、まず日本の組織の持つ性質
について考えてみました。次回は、いよいよ個人・組織とそのマネジメントにつ
いて考えていきます。

組織がどのように個人をマネジメントして能力を伸ばすのか、そして最終的に組
織としての創造力をどう高めるのか。また、個人と組織のイノベーションはどう
やって生まれるのかについて述べていきます。

では、次回をお楽しみに。

■プロフィール
エレクトロニクス、情報技術の総合技術戦略コンサルタント
アイキット 代表  生島 大嗣
http://www.i-kit.jp/

<略歴>
大手家電メーカーの研究開発部門にて、ビデオ、液晶等映像機器、地上波ディジ
タルテレビ等の研究開発、コンピュータシステムに関する企画、開発等に取り組
む。独立後、ベンチャー企業や既存企業の技術、新規ビジネスモデルの評価及び
構築に関するアドバイス、講演等に携わる。
大阪市立大学 工学部 非常勤講師(ベンチャー技術論 「技術と経営」担当)
大阪商工会議所 ITビジネスフォーラム コーディネータ

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       『ビジネスにマーケティング☆を走らせよう!』
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     まぐまぐ: 645部(ID:0000106852)
     melma! :  71部 (ID:m00086769)
     発行部数: 716部(2003年10月22日現在)

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