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メー ルマガジン コラム バックナンバー

  アイキット代表  生島 大嗣 がコラムを執筆しているメールマガジンのバックナンバーです。


 
2. 「ビジネスにマーケティングを走らせよ う!」

      ◆ 技術屋の視点 ◆


2003年 6月 27日

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       『ビジネスにマーケティング☆を走らせよう!』
             (週刊☆ビジマ)
                             
    eビジネス,マーケティング,経営戦略を考えるためのヒント

   http://www.tokeidai.net/works/    2003/06/27発行 No.022
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【 CONTENTS 】

☆『技術屋の視点 〜 ビジネスモデル・技術評価の裏側 〜』第4回

         「私が契約をお断りする3つの理由」

                   技術戦略コンサルタント 生島 大嗣
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こんにちは。
【週刊☆ビジマ】編集のコヤマンです。

今回は技術戦略コンサルタント、生島さんのコラムです。

一時期、「営業は、断ることが重要」という内容の本が流行しましたが、
そのつぎにくるのは、「どういう基準で断るのか?」という
指標なんだと思います。

「儲かるところ」という指標ももちろんアリなんだと思うのですが、
ものごとを長期的に考えると、もっと別の指標が必要だと思うんです。
目先の利益ばかりを追うと、長期的な展望を失ってしまって
もっと大きな利益、もっと大切なことを見失ってしまう気がするんです。

生島さん流の「断る3つ理由」。
読んでいて生島さんのビジネスに対する姿勢が、
すごく伝わってきました。

ではどうぞ!


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☆『技術屋の視点 〜 ビジネスモデル・技術評価の裏側 〜』第4回

         「私が契約をお断りする3つの理由」

                    技術戦略コンサルタント 生島大嗣
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アイキットの生島です。

前回は、ビジネスを行う組織にとって「深層→中継層→表層」の仕組が大切だと
いう話をしました。
http://www.tokeidai.net/sakimoto/mag/030611.html

今日は、実際のビジネスモデルの組み立てを考えていく場合に、この考え方がど
のように有効なのか、実例を元に考えていきましょう。


▼ ビジネスモデルの組み立てに必要なもの 〜 企業を評価する指標

今回取り上げるD社は、インターネット上である「技術」を用いてコンテンツの
配信ビジネス展開を考えています。残念ながら諸般の事情で、ここではこれ以上
詳細にビジネス内容は説明できませんが、技術そのものの内容については、ここ
での話には重要ではありませんので省略します。

この「技術」は、W3C(World Wide Web Consortium)の規格になっているのです
が、実際に動くアプリケーションを作る際には規格に現れないノウハウが必要に
なります。D社は独自でこのノウハウに当たる技術を開発しました。
(W3Cとは MIT や CERN が中心となって設立した、WWW 上の技術の標準化を推進
する団体です)

D社は、数年かかってこの技術を開発し、実際にアプリケーションを販売しまし
たが、ビジネスが順調かというと必ずしもそうではないのです。
D社の商品がターゲットとする一般コンシューマ層が購入するには価格が高すぎ
るのです。それでも欲しいという引き合いはあり、実際に売れてはいますが、D
社のビジネスとして成り立つには販売数が1桁以上足りません。
独自で商品販売を行うには限界があったのです。


D社が行うべきビジネスモデル上の修正はいくつかありました。
簡単に例を挙げれば、

・プロバイザやインターネット上でビジネスを行うサイトを経営している企業に
  ASPとして契約し、サービスを提供する。
・上記と同様の企業にOEMで提供する。
・ターゲットを絞ったアプリケーションソフトを販売している会社に、ソフト
  付加価値としてバンドル販売を行う。
・携帯電話のキャリアとアライアンスを組む。

等が考えられたのです。
このように、D社のビジネスモデルを修正していくことで、ビジネスそのものの
継続は可能に思えたのです。

しかし、最終的に私はD社との契約は結びませんでした。次に、この理由につい
てお話しましょう。

私が企業を判断する指標は3つあります。

  1) トップの人間性
  2) 社員を大切にしているか
  3)「深層→中継層→表層」の流れを無理なく修正できるか

私は、このどれかが欠けていれば、ビジネスは成り立ちにくいと考えています。
D社の場合、表層のビジネスモデルの修正は可能でした。しかし、それ以外の点
にも問題があったのです。
この問題について説明していきましょう。


▼ (1)トップの人間性について

ベンチャーキャピタルやベンチャー支援を行う金融業界の人達が一番重要視して
いるのがこの点です。
尤も、私が考えるにはトップの人間性は企業にとっての必要条件であり、必ずし
も十分条件ではないのです。これが私の視点です。

日本のベンチャー支援の問題点は、技術ベンチャーを支援する人達が技術ベンチ
ャーの技術を理解できない点にあります。
ところが、もっと問題なのは、理解できないことではなく、理解しようとしない
ことなのです。

あるNHKの番組でコメンテイターとして出演していた公職についている有識者
の発言に「私が判断する基準は社長だ。社長を見れば全てが分かる」と発言して
いました。
もし全てが分かるのなら、ITバブルは起こらなかったでしょう。ITバブルの
反省がないのは残念なことですし、これからの日本の将来に関しても憂うべき点
なのかも知れません。尤も製造業関係者からは、コア技術の大切さについて発言
があり安心できたのですが。

話を戻しましょう。
D社の社長は、お金を引っ張ってくる才能はあるのですが、人を大事にしないと
いう問題点があったのです。
更に、私との話をしたときの開口一番が、
「私どもはベンチャーなので報酬はお払いできませんが...」
だったのです。

私はお金は全てではなく、ビジネスの場合はこれを動かす道具だと考えています。
必死で努力されているベンチャーには、つい報酬は今は結構ですと言ってしまう
ことがあります。しかし、最初から値切ってくる人とはお付き合いしたくはあり
ません。
お金は道具ですが、この道具を真剣に考えておられない方は、人とのお付き合い
も真剣に考えていない場合が多いのです。利用できるものは利用してやろうとい
う考えが見えてしまいます。


▼ (2) 社員を大切にしているか

これは社員に対する報酬や職場環境だけを言っているのではありません。
社員に対する接し方、考え方、情報公開、いろいろな側面で大切にしているかと
いうことなのです。報酬は充分に払えなくても、社員にやりがいを与えている会
社もあります。勿論その逆もありですね。
しかし、報酬もやりがいもないのは問題外です。
社員を大切にしているところは、社員も会社を大切にしています。会社のモチベ
ーションも高いのです。

D社はどうだったのでしょうか。
実は、D社のコア技術を数年かかって開発したチームを、開発が終了し中国の提
携企業でのルーティン作業を行う用意が終わった時点でリストラしてしまったの
です。
この行為は、D社のモチベーションに大きな影響を与えることになっています。


▼ (3)「深層→中継層→表層」の流れを無理なく修正できるか

上で述べたように、D社はコア技術を開発したチームをリストラしてしまいまし
た。従って、いくら表層のビジネスモデルを修正しようとしても限界があります。

更なる技術のブラッシュアップによりルーティン作業の効率を上げようとしても
D社には残念ながらその道は閉ざされてしまっているのです。

また、新たに携帯電話にD社の技術を応用しようとした時点でも、再度新たな技
術開発力を得る必要がありますが、その養成には1年近くかかるでしょう。スピ
ードが要求される場面に対応ができないのです。

技術の問題だけではありません。
人、組織の問題も残されています。
D社のように、目に見えるコストメリットばかりに囚われると、社員のモチベ
ーションを落とす結果に繋がるのです。


以上述べたように、D社には、

  1) トップの人間性
  2) 社員を大切にしているか
  3)「深層→中継層→表層」の流れを無理なく修正できるか

の全てにおいて、修正が難しいと思われる問題があったのです。
ビジネスは、ビジネスモデルだけでも、コア技術だけでも、ましてやトップの人
間性だけでも成り立たないのです。

余談ですが、私にはD社はある洋服を扱う大規模小売業者と同じに見えてしまい
ます。その業者は一時期業績を大きく伸ばし成功したのですが、現在はジリ貧で
す。その理由は、目に見えるコストメリットばかりに捕らわれ、効率優先のガチ
ガチのシステムを作り上げたために、ビジネスの修正が効かなくなったと私は考
えています。また、成功したがために勝者の論理で考えることに慣れてしまい、
次のビジネス展開を考えていなかったのです。

5年前に、あるイベントでその小売業者の成功事例発表があり、その際この点を
指摘する質問をしたのですが、質問の意味すら理解されなかったようです。

では、次回をお楽しみに。


■プロフィール
生島 大嗣(いくしま かずし)

アイキット 代表 
エレクトロニクス、情報技術の総合技術戦略アドバイザ

<略歴>
大手家電メーカーの研究開発部門にて、ビデオ、液晶等映像機器、地上波ディジ
タルテレビ等の研究開発、コンピュータシステムに関する企画、開発等に取り組
む。独立後、ベンチャー企業や既存企業の技術、新規ビジネスモデルの評価及び
構築に関するアドバイス、講演等に携わる。大阪市立大学 非常勤講師。

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       『ビジネスにマーケティング☆を走らせよう!』
             (週刊☆ビジマ)

   ・発行部数
     まぐまぐ: 601部(ID:0000106852)
     melma! :  78部 (ID:m00086769)
     発行部数: 679部(2003年6月27日現在)

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